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畑村耕一博士の「2020年の年頭に当たって」完結編 カーボンニュートラル走行を目指す将来のパワートレーンは? エンジン博士畑村耕一「マージナル(限界)電源に着目せよ」:自動車用パワートレーンの将来

  • 2020/01/14
  • Motor Fan illustrated編集部
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②自動車からのCO2排出量を削減する自動車産業支援政策のあり方

 第2章(2)に紹介したように2030年から適用される新燃費基準が制定された。EVの電費をガソリンに置き換えてCAFEの対象にするという画期的なものだが、発電所の熱効率を71.4%(マージナル電源でなく、全電源平均)としたEVの燃費換算値効率を電源平均としてを使っているほかバッテリーの製造段階を評価しないという、EVに有利な計算方法を採用してEVを積極的に普及させる政策だ。2030年には充電電力で走るEVとPHEVの販売シェアを2018年の1%から20-30%に高めることを目標にしている。一方、HEVについては2018年の33.2%と同等の30-40%という低い目標になっている。

図4

 現状の電源計画を見てみよう。図4に示すように、2030年の電力総量とその発電構成が目標として掲げられている。CO2排出量の多い石炭火力が26%を占めているが、電力業界は全電源平均のCO2排出係数(1kWh発電で排出するCO2排出量)を0.37kg/kWhにすることを目標にしている。自動車業界は、第2章(2)で紹介した、EVの電力消費をガソリン消費に換算して評価するCAFÉ(販売する車の加重平均)に適合することが目標だ。電力業界はEVの電力需要が増えることは大歓迎であり、販売量が増えるだけでなく、CO2排出量が少ない新規発電所を増やして目標のCO2排出係数を低減できる。自動車業界は、前述のようにEVに有利な基準で EVに有利なJC08の電費値と発電所の熱効率を71.4%(マージナル電源でなく、全電源平均)としたEVの燃費換算でCAFEが算出されるので、EVを普及すればCAFEに有利になる。問題は、総電力需要は自動車以外も含む全部門の省エネ削減で達成するとされていることで、EVによる電力需要の増加については、電力業界、自動車業界とも直接の責任がないことである。
 このままの現状が続くと、CO2排出量の計算が現実と異なるとことが原因で、大量の補助金を使ってEVを普及させてHEVが普及する機会を奪っていまい、結果的にEV補助金がCO2排出量を増加してしまうというのが、筆者の懸念である。

 第2章でも述べたように欧州では政治と自動車メーカが一体となって自国に有利な産業政策(CO2規制ほか)を進めている。一方、日本では、全製造業のGDPの約2割、就業人口の約1割を占める自動車産業であるが、これまで政府と自動車メーカが一緒に海外企業と対抗するような産業政策はあまり聞いたことがない。HEVでなくEVが普及すると、ガラパゴスと言われながらこれまで育ててきた日本メーカのHEVの独壇場になる機会を捨ててしまうことになりかねない。EVは複雑なすり合わせ技術が必要ないので、部品をかき集めると中国でも簡単に作れると言われている。

図5
図6

 日本の自動車メーカーでEVとCO2排出量との関係を石炭火力に言及して主張しているのは、図5のようにミスターエンジンことマツダの人見氏に限られている。他のマツダの関係者の報告を見てもなぜか電源平均を使っている。マージナル電源は客観的に特定するのが難しいこともあるのだろうが、全社を挙げて主張して欲しいものだ。マツダに続いてトヨタもLCA評価を始めて、図6のようにバッテリー製造時のCO2排出量を見積もっているが、使用過程の発電所からのCO2排出量は全電源平均の排出係数を使っているのでEVのCO2排出量を過小評価している。マツダだけでなく、EVよりHEVを普及したほうが有利になるトヨタ、ホンダにおいてもマージナル電源を取り上げて、欧州のEV攻勢に国を挙げて立ち向かべきだと思う。経済産業省も自動車産業の競争力を高めるために、電源平均からマージナル電源の考え方を採用して、EVからHEVに舵を切ってもらいたいところだ。

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