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トヨタ・ヤリスクロスのデザインを見る:クラスレスの魅力を分析する 軽快さと実用性の両立にトライする新型トヨタ・ヤリスクロス:クラスレスの魅力を分析する

  • 2020/05/01
  • CAR STYLING編集部 松永 大演
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長く見え、厚みを感じさせないノーズがスポーツカー的。長いボンネットを表現するために、フロントピラーのブラックアウト化も大きく貢献する。

ヴィッツ改め、インターナショナル・ネームに統一されたヤリスだが、ここで第3のバリエーション“ヤリスクロス”が登場。この似ていないようで、似ている兄弟ヤリスクロスのクラスレスの魅力をデザインの特徴から見ていこう。

かつては選べる楽しさで多くの車型、今は売れない車型は整理

ヤリスファミリーとして、どことなく他のヤリスと似ているとも感じるクロス。その理由は?

 ヤリス3兄弟について、似ていないようで、似ている。そんな風に感じた方も少なくないのではないかと思うが、そもそも同じ名前ならば似てなければいけないの? という疑問もあるはず。セダンとワゴンや、5ドアハッチバックと3ドアハッチバックなど、同じ名前だから同じデザインで当然と思ってしまいがちだ。
 しかし、それは逆で多くの部品を共用できるから、同じデザインのままなのだ。その方が、作り手にとってメリットが大きい。メーカーにとっても新たなプロダクトをゼロから起こすよりは、ベースとなるモデルを選んでそのモディファイで作った方がお金はかからない。

70年代の3代目(右)、4代目(左)カローラのボディ形態。同じデザインでありながら、数多くのバリエーションを用意した。これは単にカローラだけではなく、ブルーバード、コロナ、クラウンやセドリックなどのビッグネームで実現されていた。 ーモーターファン別冊「歴代カローラのすべて」(2016刊)より
 ……という事情はありつつも、かつては同じデザインだからいいのだということも一般的ではあった。たとえば70年代くらいのカローラならば、そのバリエーションは4ドアセダン、2ドアセダン、2ドアクーペ、3ドアハッチバック、5ドアハッチバック、ステーションワゴン、バンといったように多彩。エンジンも5〜6バリエーションくらいあり、さらにいえば販売店違いでスプリンターという名前で同じだけのバリエーションも揃えていたりした。
 多くの人たちにとって車が憧れであり、なおかつ必須だった当時は、それぞれの定番の車名に圧倒的な人気があった。また、車種バリエーションを豊富に用意することで、多彩なニーズを掘り起こしさらなる人気を呼んでいた時代だったのだ。

現代はカタチ、機能がシビアに問われる時代に

ヤリスの3車系は、それぞれが狙いに特化して開発された。重要なのは、各デザインがその特徴をメッセージとして発信することだ。
 ところが現代は、ハッチバックであればボディタイプに対するニーズは、扱いやすさ、便利さ……と現実的で、後席にアクセスしにくい3ドアは徐々になくなり、5ドアに集約されてきた。この傾向は当初は日本市場での傾向だったが、今や世界的な流れともなっている。
 また、4ドアなのに2ドア風に見せているデザインが多いのも、こうした“便利だけど、かっこいい”を1台で実現したいという事情によるものだ。

 そこでヤリスのバリエーションである、5ドアハッチバック、GRの3ドア、そして今回のSUVのクロスと比較してみると、エクステリアに関してはあまり共用部品がないことがわかる。それは一体なぜなのか? “こんな時代にわざわざ作り分けていて、えらい!” と思うのは早計なのだが、1周回ってそれは正しいと言えるかもしれない。
 現代の流れとして、他にない価値のあるものに対しては、それが少しぐらい高価であっても欲しいという層が一定数存在している。社会的構造として、そうした流れが出来上がっているということが無視できない。
 例えば高級家電のバルミューダは、家電業界にその流れを作った。そこにあったのは他と一線を画する高質なデザインと、狙いを絞った性能の高さだ。また、情熱的な開発秘話の公開も製品の価値を大いに高めた。それこそ、他よりも数倍も高いトースターが十分販売できる市場を見せつけ、追随するメーカーも現れるなどこれまでの常識を覆した。かつてトースターは特売では5000円もしなくて買えたものが、2万円以上出してでも美味しいトーストを食べたい、と思わせたのだ。
 魅力的な機能に特化し、その違いが明確にメッセージとして伝われば、多少高額なものであっても人気の製品となる可能性がある時代となっている。
 逆説的に車の世界で考えるならば、利益が得られないと言われている3ドアハッチバックは、3ドアならではの魅力や価値が明確に製品に反映されていなかったのだろう。

ヤリスは大胆にも3車種がそれぞれ専用デザインで登場

3ドアのGRヤリス。ヘッドライトユニット以外、ほどんどオリジナルデザインと言えるほどで、ルーフの後継具合は空力性能追求のためだ。

 そうして見たときに、今回のヤリスのラインナップは非常に興味深い。
 ベースとなる5ドアハッチバックに対して、GRヤリス はフルタイム4WDによるラリースペックに耐えうるハイパフォーマンス・モデル。このハイパフォーマンスのメッセージが、パッケージとデザインに込められる。不必要なリヤドアを廃し2ドア化するが、そのデザインは5ドアとは大きく異なる。単に高性能バージョンを作りたいのならば、5ドアにこのユニットを搭載すればいいはず。しかし、そこにはちょっと違う事情があったのだろう。

ヤリス5ドア。Bセグメントユーザーの大多数のニーズに応えるべく、扱いやすさを追求。車好きでない人たちにもわかりやすいワクワク感もしっかり表現している。
 ヤリス5ドアが世界的なBセグメントの新たなアクティブ以上のアグレッシブ層の新規開拓をも狙うものではないかと思われるが、ハイパフォーマンス嗜好のユーザー層にはそのカタチは響きにくい。
 GRヤリスが100%車好きであるのに対して、Bセグメントのユーザーは必ずしも、車好きでない人たちにも届けたいためだ。ライフスタイルの中に、車を取り込んでいる層が大多数で、ツールとしてだけの価値に期待する人たちもいる。
 そこで求められたデザインは不特定多数の車への感度があまり高くない人たちにも、快活、活動的で手軽であること、そして何より車好きでない人たちにとっても所有することでワクワクすることを印象付けることだ。とりわけ多くの選択肢の中からでも “これがいい” と思わせる、クラスレスの高い価値感を追求している。

ある意味GRヤリスのマーケティングは、非常にわかりやすい。ある意味、理詰めで開発されたGRヤリスの登場は、インプレッサWRXやランサー・エボリューションなどのユーザーも大いに気になってしまうはずだ。
 そこでのアピールと、GRヤリスの想定ユーザーは違う位置にいる。
 GRヤリスの狙うところは、車の究極の走行性能を好むところから、旧来からの“車かくあるべき”の持論を持つ人々だ。例えばスバル・インプレッサWRXやランサー・エボリューションを好む人たちと同一線上にあり、むしろ保守的であっても説得力あるデザインが必要となる。同じアグレッシブというキーワードになったとしても、その意味合いは大きく異なる。
 スタビリティ向上のためにトレッドを拡大、十分なホイールストロークを許すためには、実質的な大きなフェンダーが必要。冷却のためには、大きなインテーク、そして空力を配慮した後傾するルーフなどなど、理論が造形を引っ張り、デザインがそれに応える。理詰めであり、進化しながらもこれまでの歴史上のハイパフォーマンス・モデルや、エボリューション・モデルの軌上にしっかりと乗る車作り。それこそが重要だったはずだ。
 ここに豊田社長の「愛車」発言も整合する。“愛”の付く道具は車だけ、究極の走りを具現化した車をとことん好きになってもらえることも、いわゆる愛車の一つに加えられるのだと思う。

ヤリスクロスは欧州のニーズを徹底研究

わずかな前傾姿勢、むしろほぼ水平基調のプロポーションを持つヤリスクロス。動感を与えているのは、リヤピラーの2トーン化や、ホイールアーチ、ボディ下部の前傾化などのエッセンスによるところも大きい。

そして、新たに登場したのがヤリスクロス。
 デザインはヨーロッパのデザイン拠点EDD(EDスクウェア)と日本の拠点が総力を尽くしたという。EDDスタジオのゼネラルマネージャーであるランス・スコット氏によれば、デザイン開発に当たってヨーロッパのBセグメントSUVの顧客のニーズを調査。
 その結果、スタイルのよさとともに高いレベルの実用性が必要だということがわかったという。また、ユーザー層の徹底的な取材によって“Robust”(逞しさ)と“Minimalistic”(最小限)というキーワードが生まれた。ここから、ヤリスクロスには、SUVの逞しさと強さに併せて、コンパクトさと俊敏さを表現することが必要と感じたという。

スポーツカーらしさを強調するノーズまわり。全体の緩急ある造形によって、高級感も醸し出す。
 簡単にいえば、「便利で素早く、かっこいい」ということ。
 かっこよさも様々だが、ヤリスクロスは水平基調のバランスを持っている。5ドアやGRのようなクラウチング・スタイル(前傾姿勢)ではないということだ。よって小さなBセグメントながら、グッと落ち着きのある安定感と高級なイメージも醸し出している。またハッチバックより前後のオーバーハング(車輪の先、バンパーの長さ)を伸ばすことで、スポーツカーの顔つきが実現できた。横置きエンジンでありながらも長いボンネットを演出し、切れ長なフロントノーズをかたち作る。あたかも、スポーツカーが車高を上げたような姿だ。

薄く見るフロントまわりがスポーツカーらしさ。そして、左右の縦長のがっちりしたインテークが、車高の高いこの車に安定感を与えている。
 注目はフロント周りの造形の仕方で、トヨタマークが最前端に見せ、その下部分をえぐるように見せている点。これによって、スープラやフェアレディZのようにラジエタークリルのない顔を作り出している。
 どんなスポーツカーも大体はバンパー下に冷却用のエアインテークがある。グリルレスとすることで、すっと伸びたボンネットと尖ったノーズを作り出し、スポーツカー的なアイコンを手に入れている。
 さらにうまいのが左右にある縦長のインテークで、これが真下に伸びることで、どっしりとした安定感を与えた。この縦インテークがなければ、フロント周りの安定感は得られないだろう。

マイナーチェンジ後のC-HR。薄く見えるフロントビューとともに、安定感ある下半身を表現。
C-HR GRスポーツ。GRブランドのトレンドでもある大きなインテークで、さらに安定感ある形を表現。

 参考までにC-HRでは、フロントビューで大切なのは薄く速そうに見えるスタイル。顔のボリウムについては、基本は薄いヘッドライト周りがフロントフェイスで、その下に強い下半身を表現。それが全体としては凝縮された“顔力”を導き出している。下に広がるイメージが、高い安定感を表現した。またC-HRはマイナーチェンジを受け、さらに安定感あるフロント周りの造形を実現した。また追加されたGRスポーツでも同様の工夫がこらされる。こちらはインテークを印象的にし、よりパワフルなイメージも出している。
 この辺りのフロント周りのボリウム感の考え方は、ヤリスクロスとは大きく異なるものだ。

スポーツカーなのに便利、それがクロスオーバーの魅力

薄さを表現するサイドビュー。後方でキックアップされるラインは、4ドアの重さを感じさせず、2ドアのスタイリッシュさをイメージさせる。

 サイドに回ると、特徴的なのは下部分のクラッディングと呼ばれるガーニッシュの存在だ。C-HRにも似た形状のものがつけられているが、ともにボディに厚みを感じさせない効果をもつ。後方に厚くしているのはルノーでも見られる手法だが、途中をさらに細めて見せるコークボトルラインを狙ったもので、サイドビュー全体に動きを感じさせる。前傾するホイールアーチやリヤピラーの前傾したブラックアウトのカラーリングも含めて、水平基調の安定感の中で、適度な動感も表現。安定した造形ながら、退屈さを感じさせない。
 またドアハンドル上の折れ線=キャラクターラインはリヤドア部分で跳ね上がる形となっているが、このラインも動きを与える要素となっている。しかし、ここにはさらに重要な狙いがある。それは、全体のフォルムを眺めたときにリヤドアの存在感を薄らげることで、ある意味クーペ的なプロポーションをイメージさせる。
 ならば、C-HRのようにリヤドアに見えないようにしてもいいはず、と思われるかもしれないが、それは前述のランス・スコット氏のコメントに関連する重要な部分。

絞り込みの少ないリヤビュー。リヤゲートを大きく取ることによって、利便性もかなり高いものと思われる。
 SUVへのニーズの中で示された実用性の高さとして、後席が十分に使えるものであることも伝えなければならない。そのためには、ヤリスクロスは明確に5ドアハッチバックであることを他方では主張している必要があったと思われる。小さなBセグメントだけに、“使えるクルマ”であることが一目でわかるのは大きな魅力だ。この背反する要求に応えたものと思われる。
 また実用性の高さについては、リヤビューにも注目して欲しい。意外にスクエアでハコに見えるのだが、これはリヤセクションを絞りすぎずにゲートの開口部を大きく取りたかった証拠でもある。ちゃんと使える荷室を確保しながら、スタイリッシュさを実現した。

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