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SMT [MASTA] 変革期を迎えたトランスミッションの開発を支える、SMTの最新シミュレーション PR

  • 2020/07/16
  • Motor Fan illustrated編集部
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MASTAにより作成したEVドライブトレーンのモデルを用い、システム変形解析が行なわれる様子。駆動時に起きるギヤやシャフトの挙動を強調表示(変位量を拡大)することで、音振の原因を視覚的に捉えることができる。モデリングから音振解析までのスピード感は圧倒的だ。コンソール部には理解しやすいグラフィックアイコンが並ぶ。WindowsベースのGU(I グラフィックユーザーインターフェース)により、直感的な操作が可能となっている。親しみやすさと扱いやすさはMASTAの持つ特徴のひとつだ。

電動化の加速にともない、ドライブトレーンが大きく変わろうとしている。これまでの内燃エンジンに電気モーターが加わり、ギヤに求められる条件が変化するなか、静粛性への要求はシビアさを増す傾向にある。そこでカギとなるのが音振を抑える設計技術だ。

TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI) FIGURE:SMT

モデル作成から振動解析、歯形修整までシームレスかつスピーディにこなす

 ギヤボックス、とくに音振動性能の解析に特化した開発ツールにおいて世界的シェアを誇るのが英国のSMT社だ。ここに紹介するMASTAは同社において核といえる存在で、モデリングから解析最適化まで幅広い範囲をカバーするシステムツールだ。

 まず最初に驚かされたのが、解析の基となるモデル作成の素早さだ。同社エンジニアの呉氏が目の前で実演してくださったのだが、平面、つまり2DのCAD図面のアウトラインを選択していくだけで、みるみるうちに3Dのモデルが出来上がっていく。最初はシャフト、そしてギヤと、ほんの数分の間に1組のシャフトとギヤが完成してしまったのだ。

 2DのCAD図面を3D化するという、このモデリング機能はMASTAにおいてもっとも特徴的な部分のひとつ。ギヤという回転体のモデリングに特化させることで操作が簡略化されており、ライブラリに用意されるギヤの形状データなどが適切に配置されていく仕組みで、ドライブトレーンのエンジニアリングも請負う同社のノウハウと、それに基づく合理化がカギになっているという。ライブラリにはほかにもベアリングなどといったものが用意されている。与圧や嵌め合い寸法の要素も盛り込まれ、寸法的な矛盾があればエラー表示による指摘もあるとのことで、まさに至れり尽せりだ。

 経験に基づく合理化の恩恵がもっとも顕著に現れているのが音振(NVH)における解析の機能だ。こうした解析は同社のツールに限らずとも可能ではあるのだが、その最大の差別化は解析速度と拡張性である。例えば一般的な解析ツールを用い、下に示すような音響パワーの分布を示すコンター図を作成するための解析を行なうと、ひとつのトルク条件につき1日かかってしまう。トルク条件をどれだけのステップで刻むのかということにもよるが、最低でも1週間から10日以上、場合によっては1ヵ月以上の時間を要するという。MASTAではひとつのトルク条件あたりわずか1分ほど、十数分もあれば解析が完了してしまう。これは処理負荷の極めて軽い独自アルゴリズムが用いられているため。PCベースのシステムとしては驚異的ともいえるスピードだ。

 まさにケタ違いともいえる解析速度だが、これだけ高速となると、設計段階で検討できるケースは大幅に増えることとなり、より最適な設計が可能となる。これまでのドライブトレーン開発では、解析時間の制約から、成り行きでたまたま辿り着いた条件の範囲内での最適化にとどまる例も少なくなかったとのことだが、MASTAならば検討の範囲を大幅に拡大することで、より高いレベルの静粛性が期待できる。

 そしていま、パワートレーンの電動化にともなって、ドライブトレーンの静粛性に対する要求はよりシビアなものになってきている。EV/HEVではエンジンの始動なしに走行することも少なくないため、ドライブトレーンのギヤが発するノイズの存在が無視できなくなっているのだ。加えていうなら、内燃エンジンと電気モーターではトルク特性が大きく異なるうえ、場合によってはクラッチやトルクコンバーターなどが存在しないことから(急激に立ち上がるモーターのトルクがダイレクトに駆動系を揺さぶる)、これまでになかった種類のノイズの発生などの要素も絡み、複雑化している。

 MASTAは自社製以外のさまざまなシステムとの連携も容易というフレキシビリティも持ち合わせており、モーターの磁場解析のためのシステムなどと組み合わせることで、こうした電気モーター特有の入力を基とする検証も可能だ。加工まで含めると、すべてが定量化されているとはいえないギヤ要素には経験値も必要とされる部分も少なくない。MASTAにはギヤを専門とするSMTのノウハウがライブラリというカタチで集積されており、“スクリプティング” という機能を使えば、自動車メーカーの(経験値に基づく)データベースとの連携も機密を保持したまま連携することも可能になるという。ちなみに、MASTAを用いることで開発期間は6~8割もの削減が期待できるとのことだ。

運転条件と振動の関係を可視化して音響パワー(単位μW)を最適設計する

EVパワートレーンで発生する加速度の分布を解析したもの。左側はトルクカーブにコンター図で示す加速度の分布(青色部分が低く、赤色部分が高い)を重ねたもので、右側は最大トルク発生時の10000rpm付近で加速度がピークとなることが一目瞭然だ。MASTAでは独自のアルゴリズムを用いた高速化により、これらの解析がわずか1時間ほどで可能となっている。

ギヤブランクの厚さや形状で振動をコントロール

上図は振動の帯域とギヤの変形量(コンプライアンス)の関係を、ギヤブランク(ウェブ)の5種類の厚さ別(下右側に図示)に示したもの。下に緑色で示す2種類のギヤは、ギヤブランク部に設ける孔の大きさと配置の最適化事例。ギヤブランクの孔は、ギヤ歯面で発生した振動をシャフトに伝達するだけでなくコンプライアンスにも影響するため、さまざまな要素を複合的に解析することが求められる。
SMT セールスアドバイザー 安田 誠氏
SMT シニアエンジニア 呉 達祺氏

INTRODUCTION:電動車はどのくらい売れるのか?

BASICS1 :電動車の仕組み Q&A
BASICS2 :電動車のスペックの見方
CATALOG:最新電動車図鑑
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COLUMN:①BEVの価格競争力は上昇したが……     
②48Vシステムの仕組みと狙いを理解する
EPILOGUE:プラグインアウトという考え方

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