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NEVクレジット売買で儲けたテスラ:テスラ初の4四半期連続黒字の裏側

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いったい1クレジット当たりいくらで他社に販売したのか。中国汽車工業協会(中汽工)調べによるテスラの中国生産台数は1月2605台、2月3903台、3月1万160台であり、第1四半期の合計は1万6668台。すべて1台あたりの獲得クレジットが6だから、生産でのクレジット総数は10万0008になる。

一方、テスラ全体の中国での販売台数販売台数は、CPCA(中国乗用車市場信息聯席会)調べで第1四半期が2万230台。これをもとに「全車6クレジット」で計算するとクレジット総数は12万1380となる。テスラは上海工場での生産が始まる前、2019年の第2四半期からクレジット販売利益を計上しているから、今年の第1・第2四半期についても販売クレジットで計算すべきだろう。

つまり、12万1380クレジットの売却益が第1四半期で3億3800万ドル(約361億6600万円)なら、1クレジット当たりは29万7957円だ。実際のクレジット運用が本当に販売台数ベースで行なわれているかについての正確な(建前ではない実際の)情報を私は入手できていないが、中国政府が原案どおり販売総数でクレジット計算していると仮定すると、今年第1四半期のNEVクレジット相場は1クレジット当たり30万円程度の水準だったということになる。

今年1〜3月といえば、すでに中国・武漢市でのCOVID-19の影響による都市封鎖(1月23日実施)の影響を受けている。中国での自動車生産は2月に入ってあちこちでストップした。この影響でNEVクレジットが高騰した可能性はある。「いま買っておかないとあとで足りなくなるかもしれない」と判断した企業は少なくないだろう。

中国のNEV規制について少々説明しておく。詳細は私の別のコラムに詳しいので、そちらを参照いただきたい。NEV規制は、2018年はクレジットなしで実施され、2019年からクレジット制度(罰則規定)が導入された。

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中国のクレジット制度がユニークな点は、国に罰金を払うという罰則がないことだ。政府はその自動車メーカーの前年の生産実績に応じてCAFC(コーポレート・アベレージ・フューエル・コンサンプション=企業別平均燃費)規制でのマイナスクレジットを与える。同時にNEV販売目標を与える。CAFCとNEVで使われるクレジットは相互乗り入れでき、最終的にクレジット「0」にすればいい。「0」ならすべて平穏無事に終わる。

NEVをたくさん作ったメーカーは、当然、CAFC実績値も良くなる。だからNEVをたくさん作ることが望ましい。逆にNEVを作らないとCAFCのマイナスクレジットを埋めて「0」にすることができない。CAFCのクレジットは「マイナス」だから、これをNEVの「プラス」クレジットで穴埋めしなければならない。「プラス」クレジットはCAFCクレジットだけなのだ。そして最終的に「0」にならないメーカーは他社からクレジットを譲ってもらうしかない。

さらに、CAFC規制での未達成、つまり中国政府が定めた燃費目標値に届かないと、燃費の悪いモデルの生産認可取り消しや新規の生産モデル申請を受け付けないなどの罰則がある。具体的にどの程度の罰則なのかは明らかにされていない。その一方で、NEV規制はとにかくクレジットを「0」にすればいい。ここが中国のCAFC/NEVクレジット制度のユニークな点であり、企業同士でクレジットを融通し合うのだ。

クレジット売買交渉は企業同士のものであり国は関与しない。クレジットが余っているメーカーからお金で買い取ってもいいし、ほかの(たとえば技術供与)要件と絡めて格安で譲っても構わない。クレジット売買の価格は「売り手」と「買い手」の交渉で自由に決められる。

こうしたクレジット制度のなかで、すでにテスラが中国で巨額のクレジット売買利益を上げている点は興味深い。テスラの上海工場は生産が軌道に乗っており、NEV以外は作らない会社だから、第3四半期(7〜9月)も第4四半期(10〜12月)もクレジットはそっくり余る。もっとも、テスラ からクレジットを買った会社がどこなのかは非公開であり、買った側の会社が「テスラから買いました」と公表することは絶対にないだろう。

テスラにとってModel YはModel3と並んで重要なモデルとなる。

VW(フォルクスワーゲン)は合弁相手である安徽省江淮汽車集団の企業から優先的にクレジットを買い取る契約を結んでいる。トヨタも合弁相手である広州汽乗集団の企業からクレジットを買い取る契約を結んでいる。こうした企業間の優先売買契約は、発表された以外にも非公表のものがある。自社でNEV量産体制が整うまでは、他社からクレジットを買い取って「0」にするという方法が緊急避難的に採用されているという証拠だ。

テスラ全体の業績も見てみよう。テスラの世界販売台数は出荷ベースの速報値で第1四半期(1〜3月)が8万8400台、前年同期比40%増、第2四半期(4〜6月)が9万890台、同5%減。上半期合計は17万9290台だった。これを単純に2倍すると35万8580台になるが、2019年暦年の実績は36万7500台だから、前年実績を超えるためには販売をややペースアップしなければならない。ちなみにテスラの日本での販売台数は非公開だ。輸入車の販売実績は日本自動車輸入組合がまとめているが、テスラは同組合に対し数字を公表しないよう要請していると聞いている。なぜだろうか?

また、先週のコラムに記したテスラの時価総額は値下がりした。米国東海岸標準時の7月13日にNASDAQ(全米証券業協会が開設したベンチャー企業向け株式市場)でのテスラの株価は一時1794.99ドルまで上がった。これに発行済み株式総数を掛けた金額がテスラの時価総額だが、この時点で何とテスラは時価総額3329億ドル(約35兆6800億円)となり、日本で株式上場する自動車メーカー9社の時価総額合計である34兆4705円を上回っていた。

ところが、この原稿を書いている7月25日の始値(土曜日なので時間外取引)は1416.01ドル。時価総額は2628億ドルである。ブルームバーグによると、最近1カ月の株価終値ピークは7月20日の1643.00ドル。日ごとに株価を追ってみると、瞬間最大風速で1794.99ドルを付けた7月13日も、終値は1497.06ドルだった。1日の中で激しく揉み合ったことがわかる。

約1カ月前の6月26日は終値985.98ドルであり、ここからテスラの株価は急上昇した。しかし、テスラが第2四半期決算をウェブ発表した日から、今度は値下がりが始まった。ちなみに昨年8月はだいたい220ドル台、2017年3月から2019年2月までの1年間は310〜350ドル台で推移していた。

テスラ株が急騰したのは、昨年(2019年)11月に上海工場が完成する直前からだ。最初は小幅な値動きだったが、12月に入ると値上がりが顕著になった。しかし2月21日に900ドルを超えた途端に下降が始まり、3月18には361ドルと半値以下まで下落する。ところが、中国で3月のNEV販売台数が公表されテスラ「モデル3」が推計で1万台を超えて月間モデル別NEV販売台数で初めてトップに立ったことがわかると株価は急上昇を始めた。

株価に関するニュースは、7月13日のテスラのように瞬間風速で報じられることが多い。たしかにテスラ1社で日本の自動車メーカー9社の合計を上回ったとなれば大ニュースだ。同様に、つぎにテスラ株が報じられるのは急落か急上昇か、その瞬間風速をとらえてのことになるだろう。株式市場もニュースが欲しいのだ。

現在の中国でテスラが売れている背景は、上海工場での「モデル3」生産が軌道に乗り配車がスムーズになったことで販売台数が増えたこともそうだが、テスラは「輸入モデルと上海工場製国産モデルとの価格ギャップを是正する」ため、上海上場での量産が始まる前に大幅な値下げを行なっていたことを挙げなければならない。「モデル3」は約42万元(約630万円)から34万元(約510万円)まで、一気に8万元(約120万円)も値下げされた(自動車メーカーに入る政府補助金調整後)のだ。この効果は大きい。

テスラは多くの国で販売店を持たないスタイルへと転換している。ショールームで現車確認してもらい、販売はネット経由だ。アフターサービスは、たとえばアメリカの場合は提携の整備工場が担当する。このスタイルのため、COVID-19蔓延で都市封鎖や外出制限が行なわれてもテスラはクルマを販売することができた。COVID-19流行は、テスラにとっては追い風となった。

アメリカのAutomotive Newsによると、イーロン・マスクCEOは「我われのビジネスは、現在の前例のない時代に強い抗堪性を示した」「我われは、今年上半期の前進により下半期の成功も確保した。既存の生産ラインは需要を満たすための改善を続けており、すでに増産を達成した。今年後半には3大陸に3つの工場を同時に建設する予定だ」とリモート・インタビューで語ったという。

また、第2四半期の利益については「工場閉鎖による従業員報酬の一時的な削減や自動運転システムに関連する支出の繰り延べにも支えられた」という。予定されていた支出が出て行かなかった、ということだ。前述のように第2四半期の販売台数は前年同期比5%減だったが、このうち「モデル3」「モデルY」の合計は80,277台。Automotive Newsは「この両モデルは従来のモデルS、モデルXよりも製造原価率を抑えることに成功した」と報じている。

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