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大規模リコール発展の可能性大。シートベルトでもデータ改ざん疑惑 タカタという会社はどうなっていたのか?

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現在のシートベルトは、とにかくシートに乗員を固定し、荷重を受けたときでも伸びは許容しない。まずプリテンショナーが作動し、衝突直後には瞬時にベルトの「緩み」を巻き取り、乗員をシートに拘束する。そのあと、「クルマはぶつかって前に進めないのに乗員だけは慣性力によって前に進む」という状態になったとき、乗員の身体に危害を与えそうなほどの荷重がかかる手前でフォースリミッターが作動し、乗員の上体が前のめりになるのに合わせてウェビングを少しだけ送り出す。

このときのポイントは、乗員の身体にウェビングを密着させたままの状態で適量の「前のめり」を許容することだ。上体を拘束できても頭部が大きく前傾すると顔面をステアリングホイールに強打するが、これはSRSエアバッグが防いでくれる。SRS=サプリメンタル・レストレイント・システムとは、シートベルトの機能を補助する乗員拘束装置という意味だ。

JISの規定では、フォースリミッターなどを作動させてもシートに座らせたダミー(衝突実験に用いる人間型の計測器)の腰部は「80〜200mmの移動量に収める」と決められている。腰部の200mmは、衝突速度が時速64kmだとしても現在のシートベルト機構なら余裕でクリアできる。

このほか、ウェビングの試験には振動ドラムに2500回巻きつける「耐摩耗試験」や、温度マイナス30±5℃の低温に1.5時間放置したあとウェビングをふたつ折りにしてオモリを乗せ、さらに30分放置したあとに破断試験を行なう「耐寒性試験」、さらには「耐熱性試験」と「耐水性試験」もある。

また、紫外線の強い炎天下に放置される可能性のある自動車に使われるため「耐候試験」「耐光試験」がある。乗員の汗(塩分が多く含まれてい)によって染料が溶け出す「染色堅ろう度試験」もある。

これがプリテンショナーの中身。一定以上のベルト繰り出しがあるとロックが外れて板ばねの力でベルトを巻き取り方向に引っ張って乗員の身体に密着させる。

バックル部分については、通常の使用状態と同じ方法で5000回の着脱を行なった後にバックルの損傷度を見る試験や1.8kNの荷重をかける試験、ウェビングの最大耐荷重に相当する22.3kNの荷重を加える試験などのほか、バックルの樹脂部分の強度や耐候性なども試験で確認される。

これ以外にも、車両ECUからの指令を受けて作動するプリテンショナーや機械式プリテンショナー、SRSエアバッグと連動するフォースリミッターなどについても入念な試験が行なわれる。こうした数多くの試験と厳しい製造基準によって、シートベルトシステムの信頼性は担保されるのだ。

一体タカタは、どの試験のデータを改ざんしていたのか。新聞は「法令で定める強度を満たしていなかった」と報じているが、強度とはウェビングの強度なのか、バックルやアンカーの強度なのか。その点はまだ何も報じられていない。しかし、どの部分の強度だとしても、改ざんは許されるものではない。たとえ0.01Nでも、基準未達成は不合格だ。「ちょっとくらいいいじゃないか」は通用しない。

この件は、改ざんの実態が明らかになった段階でふたたび取り上げる。

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