火曜カーデザイン特集:SUVクロスオーバーのクーペって何だ? 4年経ったトヨタC-HRが未だに注目される理由は
- 2020/11/17
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CAR STYLING編集部 松永 大演

発表が2016年末というから、登場から4年となるトヨタC-HRだが、デザイン的に見ればその形は驚異的だった。もちろん見る人によって賛否があるわけだが、その意見は良い、悪いがくっきりと別れる。しかし、クロスオーバーの中で、初めてクーペらしい造形を提案できた、そんなモデルがC-HRだったと思う。
クーペスタイルとは何だ?

クロスオーバーという言葉はもはや一般的となったが、その意味するところはSUVの足回りを持ちながらSUVとは異なる価値のボディを持つことを意味している。
「SUVらしいパッケージ」ということ自体少し曖昧ではあるが、ワゴンボディであったりクーペボディを持つのが、クロスオーバーの定番的スタイルだ。とすれば、その中でクーペボディとはなんだ? という話にもなってくる。
一般的に言えることは、ノーズを下げてリヤゲートを前傾させる形「スポーティで荷室空間をあまり最大限には意識しない」そんな形が、クーペ的な形として扱われてきたように思う。

例えば、BMWでいえばX5に対するX6。これが、クーペSUVの見本のようにも思われる。しかし、セダン派生のSUVのパッケージ上のメリットである縦方向の空間の豊かさをそのまま表現しているスタイルには、どことなくクーペらしさを素直に受け入れがたい感覚を持っていた人も少なくないのではないだろうか? もちろん快適性という機能を持った上でのクーペスタイルは、多くのメリットを生んだ形ではあるので、その価値ももちろん高いとも思う。

とはいえ、クーペに必要なのは我慢なのだと思う。頭上空間を切り詰め、トランクエリアを切り詰めたりしながら、スタイル重視の姿勢を貫く。それが薄いボディを持つクーペの醍醐味なのだと思う。
そうなると、それをそのままではやりづらいのがSUVスタイルだ。ドアが縦方向に長くなるし、前後のフェンダー部分も薄く見せにくい。ボディ全体が分厚く見えやすいのだ。
しかしC-HRはそのイメージを多く払拭してきた。その最大の要因が、ブラックアウトのガーニッシュの積極採用だ。フェンダーフレアやサイドシル周りに採用することで、ボディではない部分として感じさせることに成功した。そのためにボディを薄く感じられるのだと思う。
巷のリフトアップが見せるクロスオーバーの可能性

これが一般的クーペSUVにできないのは、クーペとしてのもう一つの価値にあった。初代X6を起点として生まれてきたSUVクーペは、ボディ造形の美しさで勝負してきたのだ。(最近のX6はちょっとラギッドだが…)
セダンスタイルよりも、より滑らかな面構成や伸びやかなプロポーション。こうした基本的造形でクーペを主張してきた。その中で、異質のガーニッシュなどでボディと違う素材を合わせることは、なかなか難しい表現になってくる。
そうして見るとC-HRは、面造形を「美しさ」といった視点では語りにくいとも言える。むしろ、超小型の宇宙船だったり、潜水艦だったりSF上の乗り物的な存在感がある。ある意味、ボディ造形そのものが機能的部品の集合体にも見える。その異世界感と必要最小限に見えるキャビンが、アクティブな異次元のクーペを生み出したようだ。
このC-HRのアイデアはカリフォルニアのトヨタのデザイン拠点であるCALTY(キャルティ)で生まれたというが、ハリウッド映画のコンセプトデザイン的な風合いも感じられる。しかし、これは唯一無二のアイデアでもあり、それは2代目に継承するのは非常に難しいものにもなっていると思う。
それならば、ここから学び取れるクーペのエッセンスを持つクロスオーバーとはどんな形? と考えると、何よりもボディの薄いことではないだろうか。できれば、足を投げ出して運転するセダンスタイルの実現。簡単な話、フェアレディZやソアラのボディを四駆に載せてしまうような造形だ。
奇しくもそれは、現在巷で流行しているリフトアップ的なスタイルにも通じるように思う。リフトアップはまさに新しい価値を持つクロスオーバーを望む市場の声が生み出したものなのではないだろうか? とするのならば、まだまだSUVを取り巻くデザインの可能性はさらに大きなものとなってくるのでは、と思ったりする。

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