モータリストはどんな経緯で、GOWOWを日本に導入したのか? 同社の代表を務める野口英康さんに、その事情を聞いてみた。

2020年に創業したモータリスト合同会社では、2輪に限らず、多種多様なブランドを取り扱っている。そんな同社のラインアップに2024年から加わったのが、中国のMODE社が開発した、電動バイクのGOWOWだ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
協力●モータリスト合同会社 https://motorists.jp/

各社(車)/各様の乗り味に何度も感心

ゴーワオの電動バイクには2つの仕様が存在。オーリの特徴はブロックパターンタイヤと大容量バッテリーで、価格は121万円。

いわゆる輸入企業が取り扱いブランドを増やすのは、珍しいことではない。だから、これまでに2輪を中心とする数多くのブランドを扱ってきたモーターリスト合同会社が、2024年からゴーワオを導入するという話を聞いたときも、僕はあまり驚かなかったのだが……。

オーリに少し遅れて登場したアルファは、バッテリー容量とパワーをやや控えめとすることで、オーリより30万円以上安い88万円という価格を実現。

改めて考えると、これまでに同社が日本に導入したファンティックやランブレッタ、SYMなどを体験した僕は、各社(車)/各様の乗り味に何度も感心しているのだ。そして少し前に試乗記を掲載したゴーワオのアルファとオーリもこれまでと同様に、いや、個人的にはこれまで以上に、面白い世界を堪能させてくれたのである。

ツインスパータイプのフレームやスイングアーム、ステアリングステム、ハンドルバー、ステップなど、ゴーワオの電動バイクは随所にアルミ素材を使用。その理由はもちろん、軽量&高剛性を実現するため。

そんな気持ちを輸入元に伝えたくなった僕は、モータリストの代表を務める野口英康さんと、ゴーワオの電動バイクに関するいろいろな話をしてみた。以下の文章ではその会話の要点を、一問一答的な形で紹介したい。

モーターはバッテリー下部/スイングアームピボット前部に設置。

ゴーワオならではの美点

ビューエルやKTMジャパンに在籍した後に、モータリスト合同会社を創設した野口英康さんは、大のバイク好きにして大のオフロード好き。自社の取り扱いブランドと共に、全国各地のイベントに積極的に参加している。

まずはそもそもの話から。モータリストではどんな経緯で、ゴーワオを導入することになったのだろうか。

「きっかけは先方からの打診ですが、導入を決めた一番の理由は、既存のバイクとは異なる新しい世界が味わえるからです。なお当社が海外メーカーと新規でお付き合いを始めるときは、必ず先方に出向いて社長やスタッフとじっくり話をし、現地でできるだけ多くの車両を試乗して納得してからで、それはゴーワオも同様です」

既存のバイクとは異なる新しい世界とは、具体的にどんなことを指すのだろう。

「ゴーワオの場合は公道を走れる電動トレール車という時点で、すでに既存のバイクとは異なるのですが、私が最初に惹かれたのは斬新なルックスでした。近年のバイクで、ここまで強烈なインパクトを感じることはなかなかないでしょう。もちろん、乗り味のインパクトも強烈でした。これまでの電動バイクは、基本的にレシプロエンジンをモーターに置き換えた……と感じることがほとんどでしたが、ゴーワオは電動でしか実現できない世界、電動ならではの世界を構築していたんです」

パワーモードは、は、A:パブリックロード/B:フォレストロード/C:デザート/D:マディロードの4種類。

そう語る野口さんではあるけれど、実際にゴーワオを体験して感銘を受けた身としては、オーリは既存のトレール/オフロード車然とした構成、アルファは既存のオンロード車の文法に則ったルックスでもよかったのではないだろうか?……という気がしないでもない。

「もちろん、そういうモデルもあっていいと思います。でもゴーワオは創業間もないメーカーですから、世界中の2輪市場に与えるインパクトを考えると、2台に共通する斬新なルックスや構成を採用したことは大正解だと思いますよ。なおゴーワオの第1弾となったオーリに関して、当初の私はオフロード性能にあまり大きな期待はしていなかったのですが、驚異的な車体の軽さとスリムさ、緻密に制御されたモーターのおかげで、場面によってはレシプロエンジン車を凌駕する走破性が味わえることに驚きました。また、オフロード走行が大好きな私の視点では、クラッチ操作とギアチェンジが不要になるのでライディング中の心身に余裕が生まれること、ステップ周辺がスッキリしているので足が自由に動かせること、パワーユニット周辺をフルカバーしているおかげで、浸水の心配が不要なことと悪路走行後の掃除が簡単なことも、ゴーワオならではの美点です」

レスポンスはSheep/Hound/Cheetahの3種。なおパワーモードとレスポンスの設定は、左スイッチボックスかスマホで操作を行う。

兄弟車のオーリとアルファに接した僕がそこはとない疑問を感じたのは、取り付けボルトを含めたブレーキやサスペンション関連部品のサイズ。イメージ的にはマウンテンバイク用に近い……ような気がするけれど、強度や容量という点で問題はないのだろうか。

「ブレーキやサスペンション関連パーツのサイズが小さい理由は、車重が軽いからです。何と言っても、オーリの73kg、アルファの70kgという重量は、現代の50ccスクーター以下ですからね。もっとも、私自身も足まわりには多少の不安は感じたので、日本に導入してから国際ライセンスを所有する知人に試乗を依頼したところ、現状の構成でまったく問題ないとのことでした」

足まわり関連部品のサイズはコンパクト。前後ショックはフルアジャスタブル式。

全国各地のイベントで試乗会を開催

今現在のゴーワオのラインアップには、基本設計を共有するオーリとアルファの2台しか存在しないものの、今後はどんな電動バイクを考えているのだろう。

「現時点では何とも言えません。ただし日本のお客様からは、航続距離を伸ばした仕様やシートを低くした仕様、もっとオフロード指向を強めた仕様などの要望が出ていて、そういう話は本社のスタッフにも伝えているので、今後はいろいろな展開が期待できると思います」

ゴーワオの電動バイクは、既存のレシプロエンジン搭載車とは別次元と言いたくなる、スリムさと軽さを実現している。

ゴーワオを含めた自社の取り扱いブランドの魅力を、日本中のライダーに広めるべく、モータリストは全国各地のさまざまなイベントに積極的に参加し、試乗会を開催している。そういう場面でゴーワオを初体験したライダーからは、どんな反響を得ているのだろうか。

「エントリーユーザーからベテランまで、ほとんどすべての人が、“こんな世界があったのか‼”という感じでビックリされますね(笑)。一般的に電動バイクと言うと、環境問題を考えて……という見方をされがちですが、レシプロエンジンとは異なる乗り味を実現したゴーワオに乗ると、その印象がガラリと変わるんです。もっとも、その場で購入を即決する人は稀ですが、ゴーワオの電動バイクには多くの人を引き付ける魅力があるので、当社としては今後もいろいろな場面で、唯一無二の魅力を広めていきたいと思っています」


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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…