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ヒョースン・GV125Sボバー……539,000円(ホワイトは+5,500円)
驚くほどスムーズに回るVツインに技術力の高さを見る
カッコいいじゃん! というのが第一印象だ。ダートラ発祥と言われるボバースタイルをベースに、ほとんどのパーツをブラックで統一してファクトリーカスタム風に仕立てるなど、全く隙がない。300ccモデルとシャシーを共有しているため車体は大柄で、ゆえにピンク色のナンバープレートを見なければこれが原付二種だとは誰も気付かないだろう。
現在、125ccクラスのエンジンは単気筒がほとんどで、2気筒は絶滅危惧種となっている。これを執筆している2021年10月時点において、日本で新車購入できるのはスペインの二輪ブランド、レオンアートの水冷並列2気筒モデルぐらいだ。このGVS125Sボバーが搭載するのは水冷60度V型2気筒で、しかも動弁系にはSOHCの3バルブを採用する。ちなみに2017年のモデルチェンジ以前は空油冷DOHC4バルブ75度V型2気筒だったことから、ヒョースンのスモールVツインの歴史は非常に長いと言えるだろう。
エンジンを始動する。アイドリング時の排気音は同クラスの単気筒勢とは異なり、小太鼓のような粒立った連続音だ。そして、2,000rpm付近でもゆっくりクラッチをつなげば発進はできるが、やはり単気筒勢よりも低回転域でのトルクは薄く、同等のスタートダッシュを望むなら4,000rpm以上でミートしたいところだ。
最も驚くのは振動の少なさだ。パルス感を伴った排気音とは裏腹に、体に伝わる振動は非常に小さく、しかもレッドゾーンの始まる10,000rpm(!)まできっちり回るのだ。筆者はかつて、ホンダのバラデロ125という水冷90度Vツインの原付二種に試乗したことがあるのだが、恐ろしくスムーズな吹け上がりはまさに瓜二つ。荒々しさすら漂わせるスタイリングだが、エンジンは上品とか上質などと表現できるほど対照的だ。
トップ5速、60km/hでの回転数は約5,000rpmで、スロットルレスポンスは全域で単気筒勢よりも穏やか。車重が165kgと重いこともあるだろうが、クルーザーらしく走らせるのであれば、これぐらいの優しい反応の方がむしろ疲れにくいはずだ。
バンク角主体で旋回、こんなスタイルなのに良く曲がる
ハンドリングは、エンジンと同等以上に好印象だ。基本的にはバンク角主体で向きを変えるタイプで、入力しやすい幅広のハンドルバーやミッドコントロールのステップで車体を傾けてさえしまえば、交差点やコーナーを気持ち良く旋回してくれる。深いバンク角に至るまで手応えが一定であり、ステップが接地するほど寝かせても接地感は失われない。こうしたハンドリングの好印象をティムソン製の標準装着タイヤが支えているのは間違いないだろう。
このタイヤのエアボリュームの多さと動きのいい前後サス、そしてしなやかなフレームが相まって、乗り心地も非常にいい。大きなギャップを通過しても衝撃をうまくいなしてくれ、クルーザーにありがちなリヤからの突き上げ感はかなり抑えられている。
ブレーキは前後にディスクを採用し、さらにフットペダルの操作でフロントも連動するコンバインドシステムを採用。Uターンなどリヤブレーキで速度を調整したい場面でやや利きすぎると感じるシーンがあったが、気になったのはその程度。車重に対して十分以上の制動力を発揮してくれ、安心感は高かった。
539,000円という車両価格は原付二種としては高額であり、またホンダのレブル(250)が599,500円~と聞くと悩む人は多いはず。だが、このGV125Sボバーはスタイリングだけでなく走りでも唯一無二の世界観を構築しており、また他人とかぶりにくいことも含めてお薦めできる1台だ。