排気量888ccのCP3エンジンがさらに進化! ヤマハMT-09はロングツーリングもスポーツ走行も楽しめる逸材だ。

2013年にデビューし翌年発売されたMT-09は、ヤマハ3気筒エンジンの搭載では約40年振りの復活劇と共に、斬新でエネルギッシュな外観デザインや税込みで85万円を切る価格設定にも大きなインパクトを放ち、当時のバイクシーンに一石を投じた。それから約10年が経過、2024年4月にマイナーチェンジされた最新モデルではさらに豊かな商品力を魅せている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ヤマハ発動機株式会社

ディテール解説

車体前後がギュッと凝縮されたように見える。小径LEDの2灯式ヘッドランプデザインが個性的。
φ41mmのフロントフォークは倒立式。従来モデルより若干立てられ、キャスター角は25°00′から24°40′になっている。フローティングダブルディスクブレーキには、ADVCS製モノブロックの対向4ピストン式油圧キャリパーがラジアルマウントされている。
軽量CFアルミダイキャスト製フレームとエンジンブロックはブラックアウトされている。販売店調整にて、ステップは2つの位置から自分好みに設定することができる。
シフトレバー(ペダル)も改善され、クィックシフターも標準装備されている。
後輪の直前でフィニッシュするアンダーマフラー。地面に向けられる排気口は左右にセパレートされて2つある。
ボトムにリンクを持つ前傾搭載のモノショックは、7段階のプリロード調節と、伸び側の減衰調節機構がある。減衰調節は、フレーム脇に見える小判形のゴムキャップを外して、中のスクリューを右(時計回り)に回してハードにし、そこから戻して調節する。標準は1回転戻し、最小(ソフト)は2回転半戻しだ。
鮮やかなカラーが印象的なキャストホイール。シングルディスクブレーキにはNISSIN製シングルピストンのピンスライド式油圧キャリパーが採用されている。装着タイヤはブリヂストン製バトラックス・ハイパースポーツS23R。
軽くアップしたブラックのパイプバーハンドルを装備。販売店調整にて、2つの位置から自分の好みに合わせることができる。
ハンドル左側には沢山のスイッチが並ぶ。下はホーン、右の赤いのはハザード、上にウインカースイッチがある。中ほどにはジョイスティックと右脇にホーム(戻る)ボタン。上方にはクルーズコントロール系、人差し指で扱う向こう側にはディマー&パッシング。
ハンドル右側のスイッチはシンプルに2つだけ。上の赤いのが、エンジンキルスイッチ兼始動用スターター。手前の黒いボタンはYRC(ヤマハ・ライド・コントロール)モードスイッチ。左手のジョイスティックと併せて操作する。
フルカラーのTFT液晶表示ディスプレイ。4つの表示デザインが選択できる。回転計のレッドゾーンは10,500rpmから。またスマートフォンとの連携で各種操作やナビゲーション機能にも対応。
別パターンの表示デザイン。回転計はデジタル速度計の両脇を左右に膨らみながら上に伸びる方式。
電子制御系をコントロールするメニュー画面。トラクションコントロールを始め、様々な制御の切り替えができる。
左側には圧側の減衰アジャスターとプリロード(15mm)調節機構が装備されている。減衰は全部で11段階。ハード側(時計回り)に回してから戻すクリック数で調節する。標準は6段戻し。
右側は伸び(テンション)側の減衰アジャスターとプリロード(15mm)調節機構を装備。取り扱いは左の圧(コンプレッション)側と同様。標準は同じく6段戻し。
後方がワイドにデザインされた前シート。クッションは前後セパレートタイプになった。純正オプションでコンフォートシート(26,400円税込)もある。
キーロックを解除しリアシートを外した後、前のシートクッションも簡単に取り外すことができる。
スッキリとフィニッシュしたテールエンド。晴れ専用車との割り切りなのか、フェンダー機能が心もとない。灯火類はナンバープレート照明以外は全てLED式。

主要諸元

認定型式/原動機打刻型式:8BL-RN87J/N722E
全長/全幅/全高(mm):2,090/820/1,145
シート高(mm):825
軸間距離(mm):1,430
最低地上高(mm):140
車両重量(kg):193
燃料消費率(km/L):31.6(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値(km/L):21.1 1名乗車時
最小回転半径(m):3.0

原動機種類:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ
気筒数配列:直(並)列3気筒
総排気量(㎤):888
内径×行程(mm):78.0×62.0
圧縮比:11.5:1
最高出力(kW):88(120PS)/10,000rpm
最大トルク(Nm):93(9.5kgf・m)/7,000r/rpm
始動方式:セルフ式
潤滑方式:ウェットサンプ
エンジンオイル容量(L):3.50(交換時2.80、フィルター交換時3.20)
燃料タンク容量(L):14(無鉛プレミアムガソリン指定)
燃料供給方式:フューエルインジェクション
点火方式:TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式:12V-8.6Ah(10HR)/YTZ10S

1次減速比/2次減速比:1.680(79/47)/2.812(45/16)
クラッチ形式:湿式多板
変速装置/変速方式:常時噛合式6速/リターン式
変速比:
   1速...2.571 (36/14)
   2速...1.947 (37/19)
   3速...1.619 (34/21)
   4速...1.380 (29/21)
   5速...1.190 (25/21)
   6速...1.037 (28/27)

フレーム形式:ダイヤモンド
キャスター(度):24°40′
トレール(mm):108
ステアリング切れ角(左/右・度):32/32
タイヤサイズ(前/後):120/70ZR-17M/C (58W)(チューブレス)/180/55ZR-17M/C (73W)(チューブレス)
制動装置形式(前/後):油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
乗車定員:2名
走りはパワフルで快活。ツアラーとしての使い勝手も心地よい。

試乗後の一言。

今も、個人的に欲しいロードスポーツ・バイクの最右翼です。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…