小排気量と侮るなかれ、ハイパフォーマンスを発揮する150cc!|ハスクバーナTE 150i

ハスクバーナTE 150i…… 1,155,000円
近年人気の高いハスクバーナのエンデューロモデル。2022年モデルは更なるアップデートと新デザイン、様々なレベルのエンデューロライダーへパフォーマンスを提供。その中から最小排気量のTE 150iを選び、そのパフォーマンスを体感してきた。

REPORT●村岡力
PHOTO●山田俊輔

ハスクバーナTE 150i…… 1,155,000円

ハスクバーナ・TE150i
ハスクバーナ・TE150i
ハスクバーナ・TE150i
ハスクバーナ・TE150i

 ホワイトがベースカラーのハスクバーナ。2022年モデルは精悍なグレーとエレクトリックイエローのアクセントを配したグラフィックデザインとなった。遠目にもはっきりハスクバーナと分かる。
 エンジンは2サイクル水冷単気筒の150ccで、クランクケースリードバルブにデロルト製の電子燃料噴射。昨今2サイクルエンジンの燃料噴射は増えて来てますが、それだけ信頼性など向上していると言えますね。
 さらにエンジンオイルですが、外車のレーサーとなれば混合が当たり前と思われますが、このエンジンは分離給油となっています。混合はシンプルでトラブル箇所が無く、間違いなく潤滑されるので良いのですが、混合燃料を作らなくてはならないという手間はあります。
 しかも、通常高回転での潤滑が重視されるのでそれに合わせた混合比で作ります。となると低回転ではオイルが多いということで、燃焼という観点からは良いとは言えません。その点分離給油ならばどんな回転、負荷でも適したオイル量となります。
 機構的に増えるのでトラブルかもしれないとか、重量増加もありますが採用されているということは、それだけ信頼性などが問題無くなっているわけです。
 オーナーにとってはオイルタンクに入れるだけなので楽ですし、聞くところによると焼き付きなどのトラブルは皆無だそうで、有難い装備となりますね。
 さらに、始動はセルとキック併用。もうレーサーでもセルが当たり前の装備となりつつあり、やはり便利でいざという時にライダーの体力を使わないで済むというのは、レースにおいて強い武器。
 万一バッテリーにトラブルが起きても、キックも併用なのでこれは安心となります。
 フロントサスペンションはWP製のφ48の倒立フォーク。勿論フルアジャスタブルである。リヤもWP製のユニットに、ボトムリンクのリンク式となっている。ほぼ同じ構成のKTM150EXT TPIはリンクレスなので、ここが最も大きな違いとなっている。
 車重は半乾燥で99.6kgでKTMのは96.8kgと2.8kg重いのだが、そこら辺が走りにどう影響するのか興味深いところだ。
 ちなみに150ですが、フルサイズのエンデューロレーサーなのでフロントは21インチ、リヤは18インチでミシュランのエンデューロタイヤを履く。

ハスクバーナ・TE150i

 跨ってみると、150ccのマシンとはいえフルサイズなので、シート高はかなり高い。172cm85kgの私でも両足共半分は浮いてしまう。数値は不明ながら90cm以上ありそうだ。車体はスリムで軽いので、不安は少ないけども……。
 キックもあるが始動はセルで。一発始動でアイドリングは安定。さすがはインジェクションだ。軽いクラッチを握りスタートするが、回転上げて半クラッチでという2サイクル小排気量の操作は必要無し。え?と思われるかもしれないが、これが低回転でのトルクが十分出ているのでびっくり。そのままゆるゆると8の字ターンが可能なくらい。いや本当ですよ。感心したし本当に150ccなのか?と。 
 そして低速でもサスペンションが良く動いているのも確認し、そのままコースへ行くと。ひゃっは~気持ちいい~!と思わず声が出そうな加速。シフトアップして行っても超気持ちよくエンジンは吹け上がって行くのだ。
 2サイクルが高回転で吹けているあの気持ちよさが何速でも続く。私の腕では4速までしか使えませんでしたけど。パワーバンドではとにかくパワフルの一言。アクセルには忠実に反応するし、ギクシャク感は皆無でスムーズに回っている。
 ある回転から急激にレスポンスして振り回される、フロントが浮いてしまうこともなくこれは非常に扱いやすい特性を持っていた。

ハスクバーナ・TE150i
全開走行でこれほど気持ち良いマシンは最高だ。

 150ccとはいえパワーは十分過ぎる。数値は発表されていないが、少なくとも35馬力以上は出ているらしい。例えばコーナーでギアの選択をミスり、思ったように加速出来なくても軽く半クラッチを当ててやればすぐに回転は回復。そのクラッチも半クラッチが分かりやすくて操作性抜群であった。
 装備で100kgちょっとの車重は、ミニモトクロッサーほどは軽く無いものの、フルサイズのエンデューロレーサーとしてはとても軽量。多少振られたとしても簡単に押さえられ、パワーをかけてマシンに任せておいてもそれ以上暴れることは無かった。
 これはサスペンションの良さも勿論ある。何もセッティングしてないそのままでの試乗でしたが、ギャップの通過やジャンプの着地でも底付き感は無く、フルボトムでも突き上げ感は無かった。いやいやいいじゃないの、この重いのが下手な着地しても車体は乱れない。これマシン任せで楽に走れるってこと。
 リヤはリンクありだから、ショックの吸収性は高いんだろう。そしてトラクションもとっても良いと感じた。ハイパワーの2サイクルエンジンだけど、その特性とも合っているということ。
 ブレーキも非常にコントローラブルで減速に不安は無い。そりゃ大きい排気量のマシンは、長い登りなどでは速いだろうけど、150でも十分な速さはあるしとにかく全開に出来る楽しさは、もう最高に楽しい。
 レースに出なくても、オフロードをファンライドするにはぴったりのマシン。セル始動だし、分離給油だし、そりゃメンテナンスは必要だけどかなり楽出来る。
 正直久しぶりの本格的なマシンとモトクロスコースであったものの、これだけ楽しく乗れたってことはマシンが素晴らしいってことだと思う。
 ナンバー取得も可能だけど、あくまでも公道を使ったレースにであって、普通のツーリングなどにはメーカーとしては推奨していないという。シート高が高いので、ほとんど経験の無いビギナーや女性ライダーにはお薦めとはならないかな。もうね、全開で走る楽しさ、2サイクルの気持ちよさなど感激したTE150iであった。

足着き性(ライダー身長172cm/体重85kg)

ハスクバーナ・TE150i
フルサイズマシンということもあり、シート高は高い。走っている限りはいいが、押したりややこしい路面では難儀するかもしれない。
ハスクバーナ・TE150i
ポジションは至って普通のオフマシン。スリムな車体と軽い車重なので運動性は抜群だ。
ハスクバーナ・TE150i
見ての通り足はべったりとはいかない。これでもモトクロッサーよりは1Gで沈んでいるので、軽い体重のライダーだともっと付かないと思う。

ディテール解説

ハスクバーナ・TE150i
2サイクル水冷単気筒のエンジン。燃料噴射と分離給油で手間いらず。非常にハイパワーだが扱いやすい特性となっている。
ハスクバーナ・TE150i
ハスクバーナはリンク付きのリヤサスペンションとなっており、同シリーズのKTM(リンクレス)との大きな違いとなっている。少し車重は重くなるが、私としてはボトムでの踏ん張りは少なく感じ、突き上げも少ないとかんじた。
ハスクバーナ・TE150i
リヤショックユニットはWP製。フルアジャスタブルでどんなライダーにも対応する。
ハスクバーナ・TE150i
エンデューロマシンにはメーターが標準装備。表示内容はシンプルだが、必要十分だ。
ハスクバーナ・TE150i
フレームがオイルタンクとなっている分離給油のオイル注入口。混合燃料を作る必要が無いのは、オーナーにとって楽で最高だ。
ハスクバーナ・TE150i
WP製のフロントフォーク。ストロークの数値は不明だが、どんな路面でも衝撃吸収性と安定性は抜群。初期から動きは非常に良い。
ハスクバーナ・TE150i
コンパクトなエンジンは軽量に仕上げられている。チャンバーの形状から中速重視と思われるが、高速の伸びは抜群であり非常に気持ち良いエンジンだ。
ハスクバーナ・TE150i
ヘッドライト、キルスイッチ、ホーンのスイッチは標準装備。勿論ヘッドライトとテールライトも。ウインカーを装着すればナンバー取得可能となるが、ツーリングなど一般的な使用には推奨されていない。

諸元

トランスミッション:6速
スターター:キックおよびセルスターター
ストローク:54.5mm
ボア:58mm
クラッチ:DS wet multi-disc clutch, Braktechydraulics
排気量:143.99cm³
EMS:Continental
デザイン:単気筒、2ストロークエンジン 
重量(燃料なし):99.6kg
燃料タンク容量:(約)8.5 l
フロントブレーキ:ディスク径260mm
リアブレーキ:ディスク径220mm
フロントブレーキ:ディスクブレーキ
リアブレーキ:ディスクブレーキ
チェーン:X-Ring 5/8 x 1/4"
フレームデザイン:セントラルダブルクレードルタイプ25CrMo4 スチール
フロントサスペンション:WP XPLOR-USD, Ø 48mm
最低地上高:360mm
リアサスペンション:WP XACT リンケージを伴うモノショック
シート高:950mm
キャスター角:63.5°
サスペンションストローク (フロント):300mm
サスペンションストローク (リア):300mm

ライダー紹介

村岡 力

1956年生。

 70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。2輪メインですが4輪もし時々航空関係も。モータースポーツは長年トライアル1本で元国際B級。現在は172cm85kgの重量級。業界ではジッタのアダ名で通ってます。

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