ヤマハYZF-R25にとって100km/hは中速域。だから高速道路も余裕です!|ロードインプレッション

ヤマハYZF-R25 ABS……654,500円
250㏄ロードスポーツカテゴリーが盛況です。2008年に登場したカワサキNinja250Rの人気が引き金となり、他メーカーも続々と新型車を投入。現在の国内市場ではラインナップを豊富にそろえるカテゴリーとなっています。そうした中で2014年、ヤマハが登場させたモデルのひとつがYZF-R25です。現行モデルは2019年に発売を開始した2代目で、スタイル、走りともにバージョンアップしています。一般道やワインディングでそのポテンシャルを改めて検証してみました。

ヤマハYZF-R25 ABS……654,500円

一般道で性能が生かせる高バランスな出来栄え

 フルカウルを装備した250㏄スポーツモデルの歴史をちょっと振り返ってみます。80年代から90年代のヤマハ4サイクル250㏄スポーツモデルは、FZ250フェーザーやFZR250など高回転高出力を誇った水冷直列4気筒エンジン搭載が主力でした。当時はレース志向の高まりもあって市販モデルのレプリカ化が顕著だったのですが、そうした時流の中で創出されたのが高回転高出力型の直列4気筒だったわけです。
 それはヤマハに限ったことじゃなく、他メーカーも250㏄直列4気筒エンジンをこのクラスの主力に据え高性能化を進めていました。国内4メーカーによる激しい開発競争は、結果的にユーザーを置き去りにしてしまいました。一方で、進化させる中でさまざまな技術が生み出され、それら革新的技術は現在のバイクにも生かされることとなりました。そんなレーサーレプリカブームは90年代半ばには沈静化し、気づけば絶大な人気を博していた250㏄クラスにスポーツモデルのラインナップは消え去っていました。
 厳しさを増す排ガス規制もあってさらなる高性能化を進めていくのは難しく、250㏄スポーツモデルの需要も減少したことから、ユーザーが選択できる車種がなくなり市場はますます小さくなってしまいました。そんな負の状況にあった軽二輪クラスに2008年、カワサキが新開発のNinja250Rを登場させました。しかも50万円を切る価格での販売に市場はすぐに反応しました。性能的には4気筒モデルに遠く及ばないものの、フルカウル装備のスポーティなスタイルが再び注目を集め、バイク離れが叫ばれていた若い人たちからも人気を集めることとなりました。
 そうなると他メーカーも指をくわえて眺めているなんていうのんきな状態ではなくなり、250㏄スポーツモデルの開発に着手しました。そうした中で2014年、ヤマハが送り出したのがYZF-R1のイメージを踏襲したYZF-R25でした。そこには日本だけじゃなくアジアをはじめとした世界市場を見据えた営業戦略もありました。そして狙い通り、YZF-R25は人気モデルの仲間入りを果たし、市場の活性化の一翼を担いました。
 ライバルモデルも含めて搭載するエンジンは並列2気筒が中心で、最高出力よりも常用域でパワフルな特性としていました。多くのユーザーにより身近なスポーツモデルと位置付けていたのです。そうした中でもやはり、メーカー間の競争は生まれ、モデルチェンジするごとに高性能化していきました。YZF-R25も2019年、モトGPマシンYZF-M1を彷彿させるレーシーなスタイリングへとデザインにも一段と磨きをかけ、さらに足回りの強化なども図ってモデルチェンジしました。2代目となる現行のYZF-R25に改めて試乗してみましたが、日常でスポーツライディングが楽しめたことに、年甲斐もなく気持ちが高揚してしまいました。
 まずスタイルがかっこいい。見るからに速そうなフォルムにはいくつになってもときめきます。トップエンドモデルのYZF-R1ももちろんかっこいいのですが、強大なパワーを扱える気がしません。その点R25は170㎏と軽量だし、ボディもコンパクト。しかもストリートで扱えるエンジンパフォーマンスということで親近感があります。休日にツーリングがてら走りに行くなんていう使い方にためらいがありません。
 車重の軽さに加えて、シート高も780㎜と低いので足つきに不安はないし、ステップと干渉しないのもありがたい。標準的な体格ならば取り回しも気楽にできます。セパレートハンドルは従来型より22㎜低い位置にセットされたために上体の前傾度は強まりました。しかしまったく窮屈に感じないし、ポジションにつらいところもありません。これなら市街地だけじゃなくツーリングにも十分に対応してくれるはずです。ただし、シートの座り心地については長距離走行向きとはいえませんが。
 キルスイッチ一体型のセルスイッチで始動させると、パラレルツインらしいパルス感のある軽やかな音がショートマフラーから放たれます。アクセルをちょっとばかりあおってみると、エンジンはリニアに反応してくれます。それはタコメーターのバーグラフの動きを見ても理解できます。そしてアクセルグリップを通じてパワー感もちゃんと伝わってきます。
 走りだすと、パワーフィーリングにはリニアリティがあって、自分が操作しているといった手応えが明確に感じられます。アクセルを開けたらその分ちゃんと加速する、そんな当たり前のエンジン特性がきちんと造り込まれているのです。トルクを強く感じるエンジンではありませんが、発進加速で他車に後れをとることなどもちろんありませんし、高速道路の本線合流もスムーズにできます。「250だとあまりスピードが出ないから高速がつらい」という意見をよく耳にしますが、このR25にとって100㎞/hのスピードは、中速域です。したがって余裕で高速クルージングができるのです。一般道から高速道路、ワインディングと身近な走行シーンで、エンジンポテンシャルに不足はないし、操縦したな~という満足感がだれにでも得られるという魅力的な特性を実現しています。
 ライバルであるホンダCBR250RRがさらにパワーアップしてサーキットポテンシャルを高めたり、ZX-25Rという直列4気筒モデルをカワサキが新たに登場させるなど、80年代のような性能競争が見られる中、YZF-R25はあくまでもストリートに軸足を置いて進化させていると感じました。現行モデルでは新たに倒立フロントフォークを採用するなどで運動性能が高まったのは事実です。そういう意味では高性能化を推し進めたわけですが、スポーツ性を高めただけじゃなくストリート走行においてもより高い走行安定性を実現していました。具体的にいうと、一段と軽快なハンドリングとなったため、交差点での右左折や峠道のタイトコーナーで狙い通りのライン取りができるようになりました。さらにブレーキング時のノーズダイブで踏ん張りが効くようになったので車体の姿勢変化が少なく、結果的に安定性を損なうことなく減速できるようにもなりました。
 こうした正常進化によって高性能化を進めたYZF-R25は、ツーリングにおいてもさらに扱いやすいバイクとなっています。足回りの強化によってさまざまな状況の路面への対応力が高まり、それだけ安定した走りができる範囲が広がりました。そして高速走行性も高まったのでより遠くまで足を延ばしたツーリングができるようになりました。荷物の積載性には難がありますが、スーパースポーツ的なバイクでありながらツーリングに連れ出そうという気にさせてくれる、そんなオールラウンダーなバイクがYZF-R25なのです。
フロントタイヤは110/70-17サイズのバイアス。ABS装備のシングルディスクブレーキが採用
リアタイヤもバイアスの140/70-17サイズを履く。ちなみにR3 ではラジアルタイヤを装着している。ブレーキはやはりABS装備のシングルディスク
倒立フロントフォークの採用でバネ下重量の軽減が図られ、運動性はさらにアップした。またブレーキング時の安定性も高まり、スポーツ性が向上
ストリートユースからサーキット走行まで幅広く対応するモノクロスリアサスペンション。ロングリアアームは左右非対称のテーパー形状としていて、スポーティな走りをしっかり支える

モデルチェンジでスタイリングを一新したR25だが、それを象徴しているのがYZR-M1同様のM字型ダクトを採用したああgあぐアグレッシブアグレッシブなマスク
灯火類にはLEDを採用し、視認性、被視認性を高めた
カウル内に収められたコンパクトなデジタルメーター。スピード、タコメーターはもちろん、シフトタイミングインジケーターなども備え、レーシーさも表現している
左側に集中して配置したスイッチ類はみなコンパクトにまとめられている
セルスイッチはキルスイッチと共用用
フロントとリアの間に段差を持たせたセパレートシートを採用。フロント側はワイドな形状としているので、厚みはないが意外とお尻が痛くなりにくい
リアシート下のわずかなスペースにETC車載器の収納が可能だ

主要諸元

YZF-R25 ABS

認定型式/原動機打刻型式 2BK-RG43J/G402E
全長/全幅/全高 :2,090mm/730mm/1,140mm 
シート高 :780mm
軸間距離 :1,380mm 
最低地上高: 160mm 
車両重量 :170kg
燃料消費率 国土交通省届出値
 定地燃費値:37.7km/L(60km/h) 2名乗車時
 WMTCモード値 :27.2km/L(クラス3, サブクラス3-2) 1名乗車時
原動機種類 :水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ 
気筒数配列 :直列, 2気筒 
総排気量: 249cm3
内径×行程: 60.0mm×44.1mm
圧縮比: 11.6:1
最高出力 :26kW(35PS)/12,000r/min
最大トルク: 23N・m(2.3kgf・m)/10,000r/min
始動方式 :セルフ式 セルフ式
潤滑方式 :ウェットサンプ
エンジンオイル容量: 2.40L
燃料タンク容量: 14L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式: フューエルインジェクション
点火方式 :TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式:12V, 7.0Ah(10HR)/GTZ8V
1次減速比/2次減速比 :3.043/3.071
クラッチ形式 :湿式, 多板 
変速装置/変速方式: 常時噛合式6速/リターン式
変速比: 1速:2.666 2速:1.882 3速:1.454 4速:1.200 5速:1.037 6速:0.920
フレーム形式 :ダイヤモンド
キャスター/トレール:25°00′/95mm 
タイヤサイズ(前/後): 110/70-17M/C(54S)(チューブレス)/140/70-17M/C(66S)(チューブレス)
制動装置形式(前/後): 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後): テレスコピック/スイングアーム
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ:LED/LED
乗車定員 :2名

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…