こんなにパワーがあるなんて。フレームが新設計、エンジンも新設計のモトグッツィ ステルビオ。その走りに大感動! 

モトグッツィ・ステルビオ……2,420,000円

モトグッツィのステルビオは先端の電子装備を満載しているだけでなく、車体からエンジンまで極めて高い性能を発揮するアドベンチャーモデルだ。今回はそんなステルビオを1日かけて市街地、峠も含めたショートツーリングを行った。
快適性、動力性能、ハンドリングなどに関して紹介していきたいと思う。

車体からエンジンまで新設計

モトグッツィは伝統の縦置きVツインを進化させて様々なモデルに搭載している。その頂点に位置すると言える1台がステルビオだ。新設計された車体にマンデッロと同じ水冷DОHC4バルブの「コンパクトブロック」エンジンを搭載して、アドベンチャーツアラーとしての性能を徹底的に追求している。

コンパクトブロックは大きな進化を遂げている。写真を見れば分かるようにこれまでの縦置きVツインとは異なり、シリンダーが90度ひねった状態で取り付けられていて、吸気と排気の効率を大幅に向上させることに成功している。

クラッチも今までの乾式から湿式となり、潤滑方法を見直すなどしてエンジンを小型化。オフロード走行に対応した最低地上高を確保している。最高出力は115ps/8700rpmで最大トルク105Nm/6750rpmだが、3000rpmで82%のトルクを発生する。

空力を徹底的に考えてシミュレーションとテストを繰り返した結果、高い防風性能と快適さを実現。スクリーンは電動式。

レーダーセンサーや6軸慣性IМU、コーナーリングライトなど先端の電子装備も満載している。

車体や足回りにも新しいアイデアが盛り込まれ、快適にツーリングするだけでなく、峠でのスポーツ性能まで含めて追求された。モトグッツイの技術が結集したマシンである。

 

中速から猛烈な加速

このエンジン、2000rpm位ではあまりトルクがある感じはしないのだが、3000rpm位からの盛り上がり方が強烈だ。ワインディングやツーリングでは3、4000rpm位を常用することになるのだが、このあたりの加速力は尋常ではないレベルである。まるで重さがなくなったのではないかと思うように軽々と加速していく。力強さと俊敏さが同居したこのフィーリングは今まで感じたことがない。レブリミットは9500rpmだが、ここまで回してもトルクの落ち込む感じは全くなく、自然な感じでレブリミッターが作動する。フライホイールマスが十分に大きいく確保されているのに、それを感じさせなうよな勢いで履け上がっていくフィーリングは迫力がある。しかもモトグッツィのVツインに昔からあるツインのフィーリングは消えていない。

スロットルを開けたときの加速がすごいと感じるのは、スロットルのマネージメントも関係しているように思う。スロットル開け始めはおだやかなのだが、そこからスロットルを開けていくと猛獣に跨っているかのような勢いで走り出すのだ。予備知識なくこのバイクに乗ってスロットを大きめに開けた人は面食らうかもしれないかもしれないと思うほど。レインモードにすれば多少マイルドにはなるのだが、中速域のトルクはあまり変化しているようなフィーリングではない。普通に走るのであればレインモードで充分すぎる位。6000rpm位からのシャープに吹け上がる感じもそれほどおさえられていない感じを受けた。

実際に比較したらもっと速いバイクはあるだろうが、ストリートに限定していうのならこのエンジン特性とトルクは、もしかしたら最速なんじゃなかろうかと思ってしまうくらいに元気がいい。ちなみにこの特性、ライターの後藤はメッチャ好みだ。ワインディングなどでコーナーを立ち上がるときは痛快このうえない。ただしちょっとした場所での加速がとても楽しいものだからつい調子に乗って速度が上がり過ぎてしまい、スロットルを戻すようなことが何度もあった。自制すれば良いだけのことなのだけれど、それが我慢できなくなるくらいに麻薬的な面白さがあるのが困ったところである。

俊敏なコーナーリング

モトグッツイのアドベンチャーモデルは、歴代どれも素晴らしいハンドリングで楽しませてくれたが、それがステルビオでは新設計のフレームと19インチのスポークホイール、しなやかに動くサスペンションによってさらに進化している。ハンドリングはきっかけを与えてやると、非常に軽快にバンクしていく。動き自体はかるのだが穏やかさもあって安心感もある。ライダーが操作しなくてもバイクが自分から自然にバンクしていくような感じがあるので、スポーツバイクのようにライダーが積極的にコントロールするようなバイクから乗り換えたら、最初は違和感があるというライダーもいるかもしれない。しかし慣れるとこのハンドリングがとても気持ち良い。いったんバンクしてしまえば車体はビシッと安定して旋回していく。切り返しなどでバイクを勢いよく起こさなければならない時は多少重さを感じるけれど、全体としてはとてもニュートラルでシャープなハンドリングだ。

ブレーキのタッチは非常に鋭く、レバーを指1本で握っただけでフロントをロックさせてABSを作動させることができるくらいだ。このブレーキの鋭さを頭に入れておかないとUターンなどで迂闊にブレーキレバーを握ったときにタチゴケをしかねない。ただ、緊急時にフルブレーキングしないといけないときなどは、とても安心感がある。パニック気味になったとき、ブレーキレバーを強く握って最大限の減速をできるライダーはとても少ないことだろう。このブレーキなら、取り敢えずブレーキレバーに指がかかれば、相当の減速が可能になる。ちなみにこのブレーキをサポートするABSやトラクションコントロールは非常に緻密な制御が行われていて、路面状況の違う場所で何度もテストしてみたが車体の姿勢が乱れることは一度もなかった。

今回撮影では1日ステルビオに乗ってワインディングを楽しみつつ長距離を移動したが、とても快適で面白いバイクだった。縦置きVツインが、ここまで素晴らしいバイクになるとは思っていなかったというのが偽らざる気持ちである。前回試乗したモトグッツィ850TTトラベルも完成度が高くて楽しいマシンだった。価格も違うからモトグッツィでアドベンチャーモデルを考えている方は悩むことになるはずだ。850TTトラベルのほうが現実的に考えたら手が出しやすいかもしれない。価格も安いし、動力性能やエンジン特性が日本の道路事情にはマッチしているからである。しかしステルビオの刺激的な走りとモトグッツィの技術の粋を結集したメカニズム、そして最新の電子装備には抗えないくらいに魅力的であることも確か。機会があったら一度比較試乗していただきたい。乗り比べたら更に迷うことになってしまうかもしれないが。

ポジション&足つき(身長178㎝、体重75kg)

上体がリラックスして足の曲がりもきつくない。コーナーリングやオフロードでも扱いやすいポジションである。シートの座り心地はとても良く防風性能も極めて高いので長距離は快適だろう。

シート高は830mm。車体がスリムなこともあって足つき性は良好。両足をついて膝が曲がる。

ディテール

19インチのスポークホイールはチューブレス。ブレンボのモノブロックキャリパーをラジアルマウントしディスクはΦ320mmをダフルで装備。
先代の1200 8Vよりも軽くコンバクトに仕上がったエンジン。ボア✕ストロークは96mm✕72mm。クランクの回転はこれまでと逆になった。DOHC4バルブに加えフィンガーフォローシステムを採用している。
リアショックはKYB。リバウンドとプリロード調整が可能だ。
リアホイールは4.5✕17のスポーク。リアタイヤは150/70というサイズを履く。
シートは非常に座り心地が良い。先端が絞られせて足つき性を向上させている。
シート下には電装品類が収められている。
これまでよりもコンパクト軽量になったエンジン。クラッチはこれまでの乾式から湿式となった。
縦置きVツインの心地よい排気音を奏でるエキゾースト。
リアのスイングアームは片持ち式。
左のスイッチボックスにはウインカーやライトの切り替え、ホーンに加えて装備の切り替えを行うスイッチが配置されている。
右のスイッチボックスライトの切り替え、セルスターターとキルスイッチなどが配置されている。
フロントフォークはΦ46mmのザックス製。リバウンドのダンピングとプリロードの調整が可能。
タンク容量は21リッター。幅広のハンドルはオフロードや荒れた路面でもマシンをコントロールしやすい。
テールランプやウインカーはLED。
スクリーンは電動で150mm高さを変えることができる。DRL(デイタイム・ランニング・ライト)を装備し、日中はモトグッチのロゴであるイーグルを模したパターンで点灯する。コーナーリングライトを装備していて、車体がバンクすると内側の進行方向を照射する。
様々な情報を表示する5インチのTFTモニター。メーター横にUSBの取り出し口を配置。

 

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著者プロフィール

後藤武 近影

後藤武