アプリリア・SR GTレプリカ200はジェントルかつパワフルなエンジンを持ち、コーナーも楽しめるスクーターだ

 

アプリリア・SR GTレプリカ200……616,000円

扱いやすいサイズ感と高いパワーによって注目されているのが150から200ccクラスのスクーターだ。原付二種並みに手軽に乗ることができるのにパワフルで高速道路を使うこともできる。根強い人気があるこのクラスで異彩を放つのがアプリリアのSR GT Replica 200だ。MotoGPマシンをイメージさせるカラーリングやイタリアンデザインは、他のライバルにない魅力を感じさせる。

アプリリア初のクロスオーバースクーター

アプリリアSR GT 200は、2022年に発売されたアプリリア初のアドベンチャー系スクーターだった。オフロードも走ることができるクロスオーバーモデルとしての位置づけにあることから前後サスストロークは長めに確保されていてセミブロックタイヤが装着されていた。

今回紹介するSR GT Replica 200はMotoGPをイメージしたスペシャルエディション。アレイシ・エスパルガロ選手とマーベリック・ビニャーレス選手が駆るRS-GP24をイメージしたカラーリングが施されてオンロードタイヤが装着されている。

サスペンションが長めなので車高は高めになっているが、車体自体はコンパクトだ。

ジェントルかつ力強いエンジン

アプリリアのスクーターに乗ったのは今回がはじめてだ。SR GT Replica 200はMotoGPマシンを彷彿させる雰囲気だから走りも過激なのかと思いきやエンジンはいたってジェントルで音も静か。滑らかで上品なフィーリングなので特にパワフルという印象を受けないのだけれど、実はあまり体感できないだけで全域トルクフル。ゼロ発進からの加速でも瞬発力があるし、クルーズ状態から追い越す場合もストレスなく加速してくれて上り坂もまったく苦にならない。自由自在に加速してくれる動力性能を持っているので街中やちょっとしたツーリングでは実に扱いやすい。試しに高速道路も少し走ってみたところ、排気量がそれほど大きくないので120km/hで巡航し続けるのは苦しそう。それでもちょっと高速道路を使って移動するくらいの使い方であれば十分な性能を持っている。

コーナーリング性能は素晴らしいのだが……

とても完成度の高いエンジンなのだが、一方で乗り心地はあまり良くない。シートがポーツバイクのように硬めで角張ってるデザインであることに加え、リアショックが硬いのである(イニシャルも強めだがスプリングレート自体も高そう)。これはタンデムを想定しているからかもしれない。それに対してフロントフォークの動きはしなやかでダンピングもとても良く効いている。前後のサスペンションの設定に差があってアンバランスな印象があったものだから、コーナリングはどうなのかと思っていたのだが、これが意外に悪くない……というか、とっても面白い。バイクをバンクさせていったときのステアリングの動きには小径タイヤ独特のクイックさがなく、とても自然だしバンクしているときの安定感もある。

峠道で少しペースを上げてコーナーに侵入していくとフロントフォークがとても良い仕事をしてくれる。ブレーキでフロント沈ませ、ブレーキをリリースしながら倒していくような乗り方をするとフロントフォークのしなやかさとダンピングのおかげで実に乗りやすい。ライターの操作の仕方しだいで運動性能を引き出せるようなスポーティさがあってバンク角も深い。調子に乗ってペースをどんどん上げてみたが、前後サスが暴れたり破綻するような兆候もみられなかった。正直なことをいうとテスターの後藤は、小径ホイールのスクーターがあまり好きではない。それでもSR GT Replica 200のハンドリングはかなり楽しくて、ついコーナーを攻めたくなってしまった。
ブレーキは使いやすいが、ABSが装備されているのはフロントのみ。滑りやすい場所なども含めて何度かABSが作動するくらいまでハードなブレーキングをしてみると、若干タイヤがロック気味になってしまうことが何度かあった。制御はあまり緻密に行われているわけではないが、それでもあるとないとでは大違い。緊急時に急制動が必要になったときは十分頼りになる。

市街地からワインディングまでとても楽しく走ることができたのだが、長く乗っていて感じるのはやはりリアショックの硬さ。イニシャルを抜くことができれば、それだけでも改善されるかもしれないが、一人乗り前提であればもう少しバネレートを下げてみたい。そうすれば乗り心地改善されるだけでなく、ハンドリングにもさらにしっとりとしたものになりそうだ。
そんなカスタムをしたくなるのもこのマシンの素性が良いからこそ。サスのセットが決まったときは、ワンランク上の素晴らしい走りを見せてくれそうだし、そうしてみたくなるスクーターである。

ポジション&足つき(身長178㎝ 体重75kg)

ポジションは一般的だが、車体がそれほど大きくないことに加え、快適さとスポーライディングを両立させているため250フルサイズスクーターのようなゆったりした感じではない。

サスペンションが長めだからこのクラスのスクーターとしては足つきは良い方ではないが、それでも両足はベッタリとついて膝が曲がる。

ディテール

エンジンは水冷単気筒OHCで174cc。最大出力は17.4HP/8500rpm。最大トルクは16.6Nm/7000rpmを発揮する。サイドに配置されたラジエターが勇ましい。
リアホイールの右サイドはアルミプレートタイプのスイングアームで剛性を高めている。
Euro5をクリアしたエンジンは静粛性にも優れている。
左右非対称なデザインのキャストホイール。フロントには110/80-14のオンロードタイヤを履く。ブレーキは油圧の片押し2ポット。
変速はVベルトによる無断変速。独自のアイドリングストップ機構も装備している。
リアサスペンションはツインショックで不等ピッチスプリングを採用。
スポーティーさを感じさせるシートのデザイン。スポンジは硬め。
シート下の収納も十分な容量が確保されている。
左スイッチポックスにはRISSというアプリリア独自のアイドリングストップのスイッチを装備。オンにしておくと停止して数秒後にエンジンが停止し、スロットルを開けるとエンジンが始動する。
右スイッチボックスはキルスイッチとセルスターターボタン、メーターの表示を変える保団が配置されている。
パイプハンドルは幅広でマシンを操作しやすい。
アプリリアのスポーツバイクをイメージさせるフロントマスク。MotoGPマシンをイメージしたカラーリングが個性的だ。
ウインドシールドは大きすぎないので走行中もライディングのさまたげにはならない。

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後藤武 近影

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