【トライアンフ 新型スピードツイン900】英国発の本格ロードスター、でも普段着で乗れる親近感がいい。|海外試乗記

英国車の伝統を今に伝えるトライアンフのモダンクラシックシリーズ。その中でもシンプ
ルかつ現代的なスタイルと装備を持つベーシックモデルが「スピードツイン900」である
。その最新型がいよいよデビュー。スペインで開催された国際メディア試乗会からケニー
佐川がレポートする。
トライアンフ 新型スピードツイン900

スタイルを一新し足回りも大幅に進化

トライアンフ 新型スピードツイン900
トライアンフ 新型スピードツイン900

スピードツイン900のルーツはエンジンを水冷化した新生ボンネビルシリーズの一員として2016年に登場した「ストリートツイン」である。シンプルで扱いやすいエントリー向けモデルとして長らく親しまれ、何度かのマイナーチェンジを経て2023年に「スピードツイン900」へと名称を変更。兄貴分の「スピードツイン1200」とともにリブランドされて現在に至っている。そして今回、2025年モデルとして大幅なアップデートが施された。
エンジンはトライアンフ伝統のバーチカルツインで、最高出力65ps/7,500rpm、最大トルク80Nm/3800rpmを発生する水冷並列2気筒SOHC排気量899ccは従来モデルをそのまま踏襲している。一方で足まわりは大きく進化した。前後マルゾッキ製サスペンションはフロントに倒立フォークとリアにピギーバック式ツインショックを新たに採用。新型軽量ホイールにはトライアンフ銘柄の4ピストンラジアルキャリパー&φ320mm大型ディスクを装着してブレーキ性能を強化するとともに、スイングアームを従来のスチール製からアルミ鋳造タイプとして長さも15mm短縮することで、しっかりとした剛性感を出しながら旋回性能も高めている。フレームもリアセクションを軽量スリム化した新設計タイプとなり、キャスター角を若干立てつつトレール量も増やすことで俊敏かつ安心感のあるハンドリングを実現。また、ライディングモードは従来同様「ロード」と「レイン」の2種類だが、新たにリーンセンサー付きのコーナリングABSとトラクションコントロールが標準装備され安全性も向上している。
デザインも一新された。ヘッドライトはコンパクトなフルLEDタイプとなり、スリムな燃料タンクとクラシカルなベンチシートを新たに採用。FIカバーとサイドパネルが一体化した外装デザインへと見直されエンジンカバー類もよりスリムに、サイレンサーもコンパクト化されるなど全体的にスポーティで現代的なスタイルへと洗練されている。

試乗インプレッション

伝統の味わいは残しつつ軽快でスポーティに

トライアンフ 新型スピードツイン900
トライアンフ 新型スピードツイン900

白地に鮮やかなオレンジとブルーの差し色が目に飛び込んでくる。見た目もシュッとして、従来モデルに比べるとモダンで軽快な印象だ。シート高は780mmと従来よりも15mm高めだが、シート前方がスリムになったおかげで足着きはむしろ良くなった気もする。以前より高めのハンドルと低めのステップにより、ライポジも自然でリラックスできる。車重は216kgと従来と変わらないが、スリムな車体と低重心にハンドル切れ角も十分あるなど、元祖「ストリートツイン」以来の街乗りのしやすさはちゃんと継承されている。
ハイトルク型のバーチカルツインが紡ぐ270度クランクの不等間隔パルスが心地よく、高めのギアで流していても力強いトルクで路面を蹴り出していく。ワイドレシオの5速ミッションによる息の長い加速フィールといい、肌で感じる鼓動感やエモーショナルな乗り味という点では、兄貴分の新型スピードツイン1200を上回るかも。

フロント18インチのオーソドックスな車体構成によるクラシカルな乗り味は健在で、シート後方にどっかり座ってリーンウィズのまま体重移動で操っていく昔ながらのリアステア的な乗り方がしっくりくる。その一方で、性能アップした前後サスペンションやスイングアームによって現代的な乗り味へと洗練されていることも感じる。特にリアサスの踏ん張り感が増してスイングアーム剛性も上がったことで、スロットルを開けていく高速コーナーでも安定しているし、タイトな低速コーナーでも想像以上に良く曲がってくれる。従来モデルのねっちりとしたフロントの手応えと大らかなハンドリングも捨てがたいが、新型は見た目どおりに軽快でスポーティだ。

普段着で気軽に乗り回せる本格的な英国車

トライアンフ 新型スピードツイン900と筆者

標準装着されているミシュラン・ロードラシックも好印象だった。しっかりとした剛性感のあるタッチで荷重をかけたコーナリングでも安心して身を預けることができるし、滑りそうな埃っぽい路面でも意外なほどグリップしてくれた。マルゾッキの新型サスペンションの性能に依るところも大きいと思うが、路面状況にかかわらずコンスタントに安定感があって乗り心地も快適だった。ブレーキはフロントがディスク1枚ということもありタッチは穏やかだが制動力に不満はなく、むしろ市街地での速度コントロールはしやすい。出力特性が穏やかになるレインモードに加え、ABSやトラコンもリーンアングル対応型になったメリットは絶大で、特に初めて走る彼の地のワインディングでは精神安定剤となってくれた。高速道路ではあまり回転数を上げず、豊かなトルクに乗せて楽に流すのが気持ちいい。5速ミッションなので流れの速い欧州では辛いかと思っていたが、実際には120km/h巡行も楽々こなせた。新型メーターは速度や回転数、モードもひと目で分かるので走りの状況もチェックしやすく便利。さすがに風圧はきつくなるがネオクラシックとしては十分なレベルだろう。
従来モデルが持っていたクラシカルな雰囲気と穏やかな乗り味も個人的には好きだが、洗練されたスタイルと現代的な走りを求める人には新型をおすすめしたい。いずれにしても、スピードツイン900は普段着で気軽に乗り回せて、街乗りからショートツーリングまで幅広く楽しめる本格的な英国車である。

トライアンフ 新型スピードツイン900

ディテール解説

DRL付きのフルLEDタイプへとデザインを一新したヘッドライト。ケースも小径薄型タイプとなり軽量化されている。
φ43mmのマルゾッキ製倒立フォークを新たに採用。ホイールトラベル量120㎜でしなやかなストローク感が持ち味。従来型はクラシカルなフォークブーツ付きの正立フォークだった。
リアサスペンションもマルゾッキ製の新型で、プリロード調整&リザーバータンク付きツインショックにアップグレード。同時にホイールトラベル量を従来の120mmから116mmに短縮して車体の動きを俊敏にした。従来型はリザーバータンク無し。
トライアンフのロゴ入りの新型4ピストンラジアルキャリパー+φ320mmダブルディスクを採用。ウェット性能に優れる「ミシュラン・ロードクラシック」タイヤを標準装備。
従来型スピードツインの水冷並列2気筒SOHC4バルブ排気量899ccエンジンをそのまま継承する。低中速域が力強いハイトルク型の出力特性と270度クランクによる鼓動感が魅力。最高出力65ps/7500rpm、最大トルク80Nm/3800rpmも従来どおりだ。
エンジンケース自体も軽量化されスリムで角張ったデザインへと変更。サイドパネルもアルミ仕上げのスロットルボディカバーと一体感のあるデザインへと洗練された。
エンジンケース自体も軽量化されスリムで角張ったデザインへと変更。サイドパネルもアルミ仕上げのスロットルボディカバーと一体感のあるデザインへと洗練された。
クラシカルなベンチシートを新採用。シート高780mm(従来は765mm)と若干高くなったが、フロントが絞られた形状となり足着き性も両立。従来よりも薄型に見えるが部分的に肉厚を最適化して快適性とホールド感を高めている。
スイッチボックスも操作性に優れる十字キータイプを新たに採用。ホーンボタン横がライディングモード切り替えスイッチ。オプションのグリップヒーターを装備。
メーター左横にはスマホ等の充電に便利なUSB-Cソケットを装備する。
メガホンタイプのアップサイレンサーはよりコンパクトな形状になった。左右2本出しマフラーはエンジン下のサブチャンバーで一度集合してから2本に分かれる2-1-2構造を採用。音質と燃費も向上している。
従来に比べてハンドルバーを15mm高く3.5mm前方に移動、ステップ位置も6.5mm低く設定され、ライポジは従来よりも上体が起きてヒザの曲がりも緩い快適方向へシフトした。
従来のアナログメーターに代えてTFTディスプレイ内蔵のLCDメーターを採用。スマホと接続してターンバイターン式のナビにも対応。ライディングモードは「ロード」と「レイン」の2種類となる。

主要諸元

仕様 – スピードツイン 900

エンジンとトランスミッション
タイプ液冷並列2気筒、8バルブ、SOHC、270°点火順序
容量900cc
ボア84.6mm
脳卒中80.0mm
圧縮11.0:1
最大出力65 PS / 64 bhp (47.8 kW) @ 7,500 rpm
最大トルク80 Nm @ 3,800 rpm
燃料システム電子スロットル制御によるマルチポイント燃料噴射、2 つのライダー モード
排気艶消しステンレススチール製 2-2 排気システム、ツインブラック塗装サイレンサー、艶消しステンレススチール製エンドキャップ付き
ファイナルドライブXリングチェーン
クラッチウェット、マルチプレート、スリップ&アシスト
ギアボックス5速
シャーシ
フレーム鋼管、鋼製クレードル付き
スイングアーム両面加工アルミニウム
前輪鋳造アルミニウム合金、8本スポーク、18 x 2.75インチ
後輪鋳造アルミニウム合金、8本スポーク、17 x 4.25インチ
フロントタイヤ100/90-18インチ
リアタイヤ150/70 17インチ
フロントサスペンションØ 43mm 倒立マルゾッキフォーク、ホイールトラベル 120 mm
リアサスペンション外部リザーバーと調整可能なプリロードを備えたツインMarzocchi RSU、116 mmホイールトラベル
フロントブレーキシングル Ø 320mm フローティング ディスク、Triumph ブランドの 4 ピストン ラジアル キャリパー、OCABS
リアブレーキシングル Ø 255mm 固定ディスク、ニッシン 2 ピストン フローティング キャリパー、OCABS
楽器カラーTFTスクリーンを内蔵したLCD多機能計器
寸法と重量
長さ2090mm
幅(ハンドルバー)777mm
ミラーなしの高さ1115mm
シート高780mm
ホイールベース1435mm
レーキ24.9°
トレイル103mm
湿重量216kg
燃料タンク容量12L
サービス
サービス間隔10,000 mile(16,000km)/12か月
消費と排出(EU) 
燃費4.0L/100km
排出量EURO 5+
CO2 排出量および燃料消費量のデータは、規制 168/2013/EC に従って測定されています。燃料消費量の数値は特定のテスト条件から導き出されたもので、比較目的のみに使用されます。実際の運転結果を反映していない可能性があります。

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著者プロフィール

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ケニー佐川