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ロイヤルエンフィールド・ニューヒマラヤ……880,000円〜

手ごろなサイズのボディは街乗りからツーリングまで対応
アドベンチャーツアラーはリッターオーバーの大型モデルが主流になっています。しかし日本の道路環境を考えると、よほどの猛者じゃない限り手に余るというのが本音じゃないでしょうか。これは私感ですが、車格や性能を考えれば250から400㏄あたりが国内ではもっとも使いやすいクラスです。
アドベンチャーツアラーというカテゴリーに目を向けると、ミドルクラスに意外と選択肢は多くありません。ホンダNX400、BMW G310GS、KTM390アドベンチャーくらいしか頭に浮かびません。そんなミドルアドベンチャーに新たに加わったのがロイヤルエンフィールドのニューヒマラヤです。
ロイヤルエンフィールドにはすでにヒマラヤ411というモデルが存在してるのですが、このニューヒマラヤはヒマラヤ411の発展型ではなく、まったくの新作モデルになっています。そのため現時点では、ヒマラヤ411とニューヒマラヤの2機種がミドルアドベンチャーカテゴリーにラインナップされています。
フロント21、リア17インチタイヤをワイヤースポークホイールに装着したスタイルは、オフロード走行を意識したアドベンチャーフォルムです。ボディサイズは決してコンパクトじゃないですが、威圧されるほどの大きさはありません。おそらくアドベンチャーツアラーとしては小さめだと思います。ちなみにこのモデルは450㏄エンジンを搭載しているのですが、まあ排気量に合った車格だということができます。
外観上で目に付くのは「ROYAL ENFIELD」のロゴがあしらわれたスチールパイプ製の頑丈そうなタンクガードです。過酷なアドベンチャーツーリングでは転倒のリスクも少なくありません。万が一のそうしたトラブルにも燃料タンクの破損を防ぎ、目的地までの走行を可能にするための大切な装備ということになります。過剰な装備はせず、必要な装備はすべて備えている。そんなコンセプトがボディスタイリングに表れています。
長距離走行を見据えた快適なポジション設定とシート高調整機能
見るからに頑丈そうなサイドスタンドは頼もしいが、かなり車体が寝た状態で立てられる。止める場所を選ばないと倒れる危険性があるので要改善だと思います。そのサイドスタンドとは別にセンタースタンドも装備しているので、メンテナンス時や荷物積載にはありがたいです。
乗車する際にサイドスタンドを払うのですが、寝ているため車体の引き起こしに重さを感じます。車重は195㎏とこのクラスとしては標準的なのですが、タンクガードやグラブバー付きリアキャリアなどの重量物がボディの上部に装備されているので、それも引き起こしの重さにつながっていると思います。
シートは高さを825㎜と845㎜の2段階に変えることができます。今回は低いほうの825㎜で乗車しました。結果的に足つき性に関しては問題なく、178㎝の身長がある僕でもヒザ周りに窮屈さはありませんでした。市街地走行をメインにするならシートは低い位置でいいと思います。一方、高速走行を含めたロングランなら高い位置にしたほうが快適でラクなライディングができるでしょう。
ステップもワイドで、ラバーも装着してあるので、足が載せやすく快適でした。さらにシートの座面も広くクッション性もまずまずなので、お尻の痛みは少なくすみそうです。
このようにポジション面では、平均的な体格の日本のライダーが、市街地走行からツーリングといった一般的な使い方で、ムリなく快適にライディングを楽しめるスタイルになっていると感じました。
初物尽くしの新開発エンジン
ニューヒマラヤでは次世代に向けた新しい取り組みが行われています。その筆頭がエンジンです。まず水冷システムとしたのが初、ツインカムの採用も初、そしてライドバイワイヤの導入も初となります。こうして新開発された水冷DOHC4バルブ単気筒452㏄エンジンは、最高出力29.4kW(40ps)/8000rpm、最大トルク40Nm(4.08kgm)/5500rpmを実現しています。ライディングモードはパフォーマンスとエコが選べて、さらにABSとリアのみABSオフと全部で4通りに切り替え可能。走行状況に合わせて最適な特性を選択できるようになっています。
キーをオンにすると丸型のデジタルメーターが立ち上がります。表示が大きく見やすいのがありがたいですね。さらにこのメーターはナビ表示もするようになっていて、スマホにロイヤルエンフィールドのアプリを入れ、車両と連携させることでグーグルマップのナビを表示できるようになります。あると便利な機能がしっかり盛り込まれています。
キルスイッチと共用のスイッチでセルを始動させるとエンジンは元気よくかかりました。右手にあるモードスイッチでまずはパフォーマンスモードのABSオンでスタートします。ライディングモードはパフォーマンスですが、出力特性に暴力的なところはなく、アクセルにリニアに反応しスムーズに加速していきます。単気筒のいわゆるドコドコ感は強くありませんが、低回転からトルクが出ていて意のままに加減速できるエンジン特性になっています。8000rpmで最高出力を発生するエンジンなので、高回転の伸びも十分。全回転域で性能が引き出せるようになっています。
エコモードのABSオンに切り替えてみると、やはりレスポンスは穏やかになり、通常走行ではちょっと物足りないパワーになります。まあこれだけ穏やかなエンジン特性なら雨の日の走行も安心してできそうです。ツーリングではさまざまな気象にさらされることが多いので、こうしたライディングモードは大きな安心感を生んでくれます。
ミッションは6速が採用されているのですが、全体にハイギヤードで、高速走行などでは優位ですが、市街地走行や一般道では5速までの使用になります。
エンジン性能に関していえば、必要にして十分なポテンシャルだと感じました。市街地走行でも使いやすい特性でしたし、一般道を淡々と走ったり、峠道をスポーティに走るときにも要求に応えてくれます。そして振動も少ないので、長距離移動にも快適な走行を実現してくれます。これなら日本の道に最適な走りをすることができます。

しっかり仕事をしてくれるサスペンションが快適な乗り心地と素直なハンドリングを提供
ヒマラヤの過酷な条件下でもタフな走りを実現するため、骨格であるスチール製ツインスパーフレームは強靭なものとしています。そしてサスペンションにはフロントにショーワ製カートリッジ式倒立フォーク、リアにはプリロード調整機構付きモノショックを装備。オフロード走行を見据えてロングストロークとしていて、良好な作動性としています。これに加えてフロント21インチ、リア17インチのワイヤースポーク式ホイールも衝撃を緩和してくれるので、乗り心地はとても快適です。装着するタイヤはインドのCEAT製で、フロントが90/90-21、リアは140/80R17となっています。今回試乗したスタンダードはチューブタイプのタイヤを装着していますが、プレミアムタイプではチューブレスタイヤを採用しています。
このようにフロント21、リア17インチタイヤとしているため、しっかりとした直進安定性と穏やかなハンドリング特性となっています。軽快性が前面に出ているわけじゃありませんが、全体に素直な反応を見せてくれるので、操作しやすい操縦性だといえると思います。またタイヤはセミブロックパターンで、オンロードとオフロードのどちらにも対応させています。いわゆるアドベンチャータイヤといわれるものなのですが、ロードノイズも気になりませんでしたし、グリップ性も不足はありません。
ブレーキは前後ともにシングルディスクで、フロントがΦ320mm、リアにΦ270mmローターを装備しています。ABSは前後に装備されていますが、モード切替でリアのみオフにすることができます。
国土が狭く、道も狭隘な山岳路が多い日本では、ミドルアドベンチャーツアラーが使いやすいカテゴリーだと思います。そうした点からもこのニューヒマラヤは、日本のライダーのツーリングをサポートしてくれるモデルだと感じます。価格面でもライバルモデルと大差はありませんから、十分に選択肢の1台になるはずです。ただし、ライバルモデルの多くが400㏄以下なので普通二輪免許で乗車できるのに対し、452㏄のニューヒマラヤは大型二輪免許が必要。中免ライダーが除外されてしまうのがデメリットのひとつではあります。
ディテール解説
主要諸元
全長 | 2,285mm |
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全幅 | 852mm |
全高 | 1,316mm |
シート高 | 825mm/845mm |
乗車定員 | 2人 |
排気量 | 452cc |
重量 | 195kg |
エンジン | 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ |
最大出力 | 29.4kW(40ps)/8000rpm |
最大トルク | 40Nm(4.08kgm)/5500rpm |
トランスミッション | 6速リターン式 |
フューエルタンク | 17L |
ブレーキ | Front=φ320mmディスク Rear=φ270mmディスク ともにABS付 |
タイヤ | Front=90/90-21 Rear=140/80R17 |
その他 標準装備品 | ○ LEDヘッドライト ○ 一体型のLEDテールライト、ターンシグナルライト ○ 4インチ円形TFT液晶カラーディスプレイ、「Ride-by-Wire」システム、「Tripper Dash」フルマップナビゲーション ○ USB(タイプC)充電ポート ○ リアラック / トップボックス用マウント |
製造国 | インド |