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カワサキ KLX230シェルパ……638.000円

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg) ★★★★★

この写真では下半身が微妙に窮屈そうに見えるかもしれないが、ライディングポジションは至ってまっとうで、スポーツライディングが存分に楽しめたし、早朝から日没後まで走り続けるロングランでも身体に痛みは感じなかった。ただし筆者の体格には、座面がノーマル+13.5mmになる純正アクセサリーのハイシート(価格は良心的な1万1440円)のほうが合っている気がする。

車体が軽くてスリムで、乗車時の沈み込み多いので、身長165cm以上のライダーなら不安は感じないようだが、シート高は近年のトレール車ではやや高い845mmなので(先代KLX250Sは830mm)、一般的な基準だと足つき性は良好とは言い難い。そういった事情を考慮して、すでにいくつかのディーラー/ショップがローダウン仕様を発表している。

タンデムライディング ★★☆☆☆

既存の軽二輪以下のトレールバイクと同様に、2人乗りは厳しいものがあった。以下はタンデムライダーを務めた、身長172cm・体重52kgの富樫カメラマンの印象。「座面が小さくて薄くて、ステップは理想の位置よりかなり前方だから、とにかく身体が落ち着かなかった。アシストグリップとして使えそうなリアキャリアが装着されていたら、多少は印象が異なりそうだけど、このバイクのタンデムは基本的にはエマージェンシー用でしょう。逆に言うならタンデムをメインに考える人は、同系エンジンのW230かメグロS1を買ったほうがいいと思うよ」
取り回し ★★★★★

押し引きの感覚はヤマハ・セロー250とほぼ同等で、現在の市場でライバルになりそうなホンダCRF250L/〈S〉やスズキ・Vストローム250SXより楽チン。ただし狭いところに駐車する際は、クローズドタイプのナックルガードの左右幅と(ナックルガードを装備しないKLX230Sの全幅が845mmであるのに対して、シェルパは920mm)、マフラーの横方向の張り出しに、気を遣う必要があった。
ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

ハンドルは近年のオフロード系で定番になっている、アルミ製テーパータイプ(ただし、KLX230/S/SMはスチール製φ22.2mmバー)。クローズドタイプのナックルガードを標準装備することは嬉しいものの、ステーの構成をじっくり観察すると、転倒時の変形がちょっと心配。モノクロ液晶メーターは、スマホとの連携機能を装備。画面右端にはギア段数用?と思えるスペース存在するけれど、ここに表示されるのはバッテリー電圧警告灯。

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆
左右スイッチボックスは先代の構造を引き継ぐが、左にはABSのキャンセルボタン(リアのみではなく、前後輪がオフになる)を追加。グリップラバーは当然オフロードタイプで、このパーツも先代から継承。
カワサキは大昔からブレーキ/クラッチレバーの位置調整機構に熱心なメーカーだが、トレールバイクへの導入実績はほとんどナシ。なお現代の軽二輪の基準で考えると、クラッチレバーの操作はやや重め。
燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

タンクカバーのフィット感は非常に良好。直進時も旋回時も、着座位置が前でも後ろでも、程よいホールド感が得られた。7.6ℓというガソリン容量をどう感じるかは人それぞれで、個人的には十分と言いたいけれど……、林道ツーリングでの安心感を考えると、できれば+2ℓは欲しいところ。シートは動きやすさと快適性を重視したデザインで、足つき性はあまり意識していない模様。左サイドカバーのキーシリンダーは、左サイドカバーそのものの取り外し用で、シートはボルトでフレームに固定。テールカウル左側にはヘルメットホルダーを装備。

ステップは脱着式のラバーを装備しない完全なオフロード仕様。ギザギザ仕様のバー/ブーツ裏面の食いつきはそんなに強力ではないけれど、林道ツーリングを含めた一般的な使い方なら十分だろう。なお初代では別体式だったリアブレーキマスターシリンダーのリザーブタンクは、2025年型KLX230シリーズでは一体式となった。
積載性 ★☆☆☆☆

積載性に関する装備は一切ナシ。シートに巻き付けるベルトとリフレクターのベースを使って、筆者の私物であるタナックスのダブルデッキシートバッグをムリヤリ装着したところ(シートバッグとテールカウルの間にはキズ防止のウエスを挟んだ)、意外に良好な安定感が得られたものの、ツーリング派ならキャリアを装着を検討するべきだろう。純正アクセサリーのキャリアは2種が存在し、スモール(下の写真):1万9140円、ラージ:3万30円。シート下に収納スペースは無く、ETCユニットはリアキャリア内側に装着するのが前提。

ブレーキ ★★★★☆

前φ265mmペータルディスク+片押し式2ピストンキャリパー、後φ220mmペータルディスク+片押し1ピストンキャリパーのブレーキは、どんな場面でも扱いやすく、オフロードではABSが簡単にキャンセルできることがありがたかった。なお2025年型KLX230シリーズのスイングアームは、素材がスチール→アルミになり、後端のチェーン引きはレーシーなデザインに変更。

サスペンション ★★★★☆

φ37mm正立式フロントフォークとボトムリンク式リアサスペンションは、先代の構成を踏襲している。ただし、高荷重・高速域重視の感があった先代とは異なり、シェルパのセッティングはかなり幅広くなっていて、マッタリ巡航も余裕で受け付ける。調整機構はリアのプリロードのみ。KLX250Sと共通の前後ホイールトラベルは200/233mm(オフロード指向が強いKLX250は240/250mmで、スーパーモタードのSMは188/223mm)。

車載工具 ★★☆☆☆

車載工具は、12×14mmの両口スパナ、差し替え式ドライバー、プラグレンチのみ。2020年に当記事で取り上げた先代がその3点に、14×17mmの両口スパナ、22mmのメガネレンチ、リアショックのプリロード用フックレンチ+エクステンションバー、プライヤーを加えた7点だったことを考えると、少々寂しいものがある。
実測燃費 ★★★★★

34.1km/ℓのトータル燃費は、今どきの250cクラスの単気筒車では平均的。航続可能距離は、最も燃費が悪かった⑤は31.0×7.6=235.6km、最も良好だった④は36.7×7.6=278.9kmで、いずれにしても200km以上は確実に走れる。ただしガソリン残量警告灯の点滅タイミングが早いため(マニュアルには約2.3ℓと記されているけれど、今回の試乗車は3~3.5ℓで点滅開始)、②④⑤⑥の給油前は結構ドキドキだった。

主要諸元
車名:KLX230シェルパ
型式:8BK-LX232A
全長×全幅×全高:2080mm×920mm×1150mm
軸間距離:1365mm
最低地上高:240mm
シート高:845mm
キャスター/トレール:24.6°/96mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC2バルブ
総排気量:232cc
内径×行程:67.0mm×66.0mm
圧縮比:9.4
最高出力:13kW(18ps)/8000rpm
最大トルク:19N・m(1.9kgf・m)/6000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
1速:3.000
2速:2.066
3速:1.555
4速:1.260
5速:1.040
6速:0.851
1・2次減速比:2.870・3.214
フレーム形式:セミダブルクレードル(ペリメター)
懸架方式前:テレスコピック正立式φ37mm
懸架方式後:ボトムリンク式モノショック(ニューユニトラック)
タイヤサイズ前:2.75-21
タイヤサイズ後:4.10-18
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:134kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:7.6L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:45.5km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2-1:34.7km/L(1名乗車時)