普通免許で乗れる400ccのVツインクルーザーとカワサキZX-4Rより安い4気筒スーパースポーツが発売間近!?【東京モーターサイクルショー2025】

2025年3月28日(金)〜30日(日)に開催された『第52回東京モーターサイクルショー』で、初参加ながらもっとも勢いを感じさせたのが中国の「QJモーター」だ。国内4大メーカーよりやや小さなブースに、日本未発売モデルを含む18台のマシンが展示されていたのだ。今回は日本市場に近日投入予定のSRK400RSとSRV400VSを中心にお送りする。

初参加ながら『東京モーターサイクルショー』で存在感を示したQJモーター

……赤い津波。2025年3月28日(金)~30日に(日)にかけて開催された『第52回東京モーターサイクルショー』に初出展した中国メーカー「QJ MOTOR(以下、QJモーター)」の勢いはそう表現するのがまさしくぴったりであった。

日本ではまだまだ無名な存在ではあるが、本拠地のある中国では大手優良バイクブランドのひとつに数えられており、近年ではヨーロッパを中心にシェアを着々と拡大しつつある。そんな同社がホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキの世界を代表する4大メーカーの牙城である日本市場に本格的に進出してきたのだ。

日本未発売モデルを含む18台を展示したQJモーターのブース。その面積はBMWやトライアンフにも匹敵した。

まず驚かされたのがブースの規模だ。『東京モーターサイクルショー』では初参加であるにもかかわらず、企業出展エリアに割り当てられた東京ビッグサイトの東1~3ホールのほぼ中央、東2ホールの目立つ場所に同社はブースを構えたのだ。そして、その面積は4大メーカーよりやや小さいものの、老舗メーカーのBMWやトライアンフに匹敵した。

キャンギャルが寄りかかっているのはSRK800RR(日本発売未定モデル)。

イメージカラーの深紅で統一されたブース内に展示された車両は全部で18台。現在、日本国内では125~250cc以下の小排気量車のみの展開となっているが、今回QJモーターが会場に持ち込んだのは、フルカウルスポーツからスポーツネイキッド、スクーター、クルーザー、サイドカー、そしてアドベンチャーバイクまで、国内未発売のモデルを含む幅広いクラス・排気量のマシンを一堂に並べたのだ。

カワサキ・ニンジャZX-4Rと真っ向勝負の「SRK400RS」

その中でも来場者の注目を集めていたのが、近く国内導入を予定している水冷並列4気筒エンジンを搭載したスーパースポーツの「SRK400RS」と、水冷Vツインエンジンを搭載したクルーザーの「SRV400VS」の2台だった。

両車は海外ではエンジン形式に変わりはないものの、それぞれ450ccと500ccの排気量で展開している。日本仕様はそれを免許制度に合わせて縮小しており、そんなことからもQJモーターの日本市場に対する意気込みが感じられる。

初夏に国内導入を予定しているSRK400RS。

SRK400RSはカワサキ・ニンジャZX-4Rを真っ向から意識したモデルで、最高出力は77.6ps/1万4000rpm、最大トルク3.9kg-m/1万3200rpmの性能を誇り、組み合わされるミッションは6速リターンとなる。両者のスペックを比較するとSRK400RSはZX-4Rを0.6ps上回り、車両重量は14kg軽い176kg。SRK400RSの性能が額面通りならニンジャよりも高性能ということになる。

カワサキ・ニンジャZX-4R(写真はZX-4RR KRT EDITION)

走行性能に直結する足まわりは、倒立式フロントフォーク、ブレーキはブレンボ製のラジアルマウントキャリパー&マスターに300mmフローティングディスクローターの組み合わせ。タイヤサイズはフロント120/70ZR17・リヤ160/60ZR17で、マフラーはレーシーなショートタイプを装着する。メーターはフルカラーTFT液晶で、もちろん灯火類はフルLED。ウインカーはシーケンシャルタイプだ。

SRK400RSに搭載される水冷並列4気筒DOHCエンジン。最高出力は77.6ps/1万4000rpm、最大トルク3.9kg-m/1万3200rpmを発揮する。

しかも、販売価格はZX-4Rの新車価格118万8000円(2025年現在)を下回るようなのだ。説明員によると

「私たちは日本市場においてはチャレンジャーです。性能面で負けては話になりませんし、後発である以上、より安価な価格を打ち出せなければ市場に参入する意味はないでしょう。具体的な金額はまだ言えませんが、最低でも1割程度、できることならそれよりも安い金額を実現できれば、と考えています」

とのことだ。ということはSRK400RSの販売価格は100万円前後、為替の影響もあるだろうが100万円切りも充分に考えられる話ではある。

国産バイクからは無くなってしまったVツインクルーザー「SRV400VS」

SRV400VSは、国産バイクからは絶滅した水冷DOHC4バルブV型2気筒ツインカム4バルブエンジンを搭載した400ccのクルーザーだ。最高出力は38ps/8500rpm、最大トルク3.57kg-m/5000rpmと特筆すべき性能ではないがクルーザーとしては必要にして充分な性能だろう。

そのスタイルはフラット形状のハンドルバーを採用したボバーで、シート高は734mmと小柄な女性でも足つきには問題がなく、老若男女問わず、快適なクルージングが楽しめるライディングポジションが取れるよう設計されている。

SRK400RSとともに日本導入が予定されるSRV400VS。Vツインエンジンを搭載するボバータイプのクルーザーだ。

また、最近はゆったり走るクルーザーにも高性能な足まわりを与えることがトレンドとなっているが、SRV400VSもその例に漏れず、フロントには路面追随性に優れる倒立式フォークを採用。タイヤサイズはフロント130/80-16、リヤ150/80-16で、ファイナルドライブはハーレーダビッドソンと同じく、静粛性や乗り心地に優れるベルトドライブを採用している。

そして、ブレーキはデュアルチャンネルABSを採用しており、メーターはフルデジタルパネル、灯火類はフルLEDで、最初からUSBポートが備わるなど装備も充実している。

普通自動車二輪免許で乗れる126~400ccクラスのクルーザーは、国産車にはホンダ・レブル250とカワサキ・エリミネーターしかなく、前車は単気筒、後者が並列2気筒エンジン車だ。やはりクルーザーはVツインエンジンで乗りたいというファンも少なくなく、そうした人には選択肢が他にないため、リーズナブルなプライスで登場すれば購入候補の筆頭に挙がることだろう。

カワサキ・エリミネーター
ホンダ・レブル250

性能と商品性で日本車に対抗
導入済みのOEM車の実績に裏付けられた品質

ただし、中国製品で多くの人が不安に感じるのは品質だろう。確かに、多くの日本人にとって中国製品には「安かろう悪かろうのイメージ」がいまだ拭い去れずにいる。実際問題として中国国内を流通する製品は現在でも玉石混交であることはたしかなのだが、日本法人を設立、あるいは国内企業と代理店契約を結び、輸出に力を入れているグローバル企業の場合、製品の開発段階はもちろんのこと製造段階でも厳しい品質管理がされており、さらには輸出前と輸出後にも検査を実施して、仮に基準に達していない品質の製品が見つかった場合には、消費者の手に渡る前に排除される仕組みとなっている。

現在発売中の125cc単気筒エンジンを搭載するミニバイクのSRF12。価格は35万8000円(税込)。

例えば、ハイアールやハイセンスの家電製品、レノボやXiaomiのパソコン、ファーウェイのスマホ、BYDの自動車、テイクオンのファッション、ドラゴンやトランペッターのプラモデルなど、世界市場で一定の評価を受けたメーカーの製品は、性能面や品質面では相応の基準に達していると判断して間違いはないだろう。もちろん、これはバイクメーカーのQJモーターにも当てはまることだ。

現在発売中の125cc単気筒エンジンを搭載するクルーザーのSRV125。価格は50万8000円(税込)。

そう断言できる理由はある。たしかにQJモーターは2025年1月から日本市場に参入したばかりの新参メーカーではあるが、その製品は5年前の2020年から日本の道をすでに走っており着実な実績を築いている。それも1台や2台の話ではない。数千台というまとまった台数が、だ。

どういうことかと言えば、2020年からプロトが取り扱いを始めたベネリ、そして2023年からハーレーダビッドソンジャパンが導入したX350とX500は、すべて中国・温嶺市にあるQJモーターの工場で生産されたOEM製品なのだ。

QJモーターのブランド名でビジネスを展開する銭江モーターサイクルが製造を担当するベネリTNT249S(デザインと開発はイタリア のベネリが担当)。
銭江モーターサイクルはハーレーダビッドソンと提携関係にあり、日本でも販売されるX350とX500は同社の工場で生産される。X350はベネリTNT249Sをベースに排気量を拡大して開発された(写真はX500)。

これらのバイクは小・中型バイクとして日本のユーザーからも高く評価されており、製品の欠陥があって事故につながったとか、品質が悪くて故障が頻発するなどの話を筆者は寡聞にして聞いたことがない。故障率の低さで定評のあるホンダと比べれば見劣りするのかもしれないが、その信頼性は名の通ったブランドと同じくらいの水準にあるものと考えて良さそうだ。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…