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ホンダ・レブル250 Sエディション Eクラッチ……731,500円
Rebel 250 E-ClutchはホンダのE-Clutch採用機種としては2番手となる。E-Clutchモデルの開発を行ったのはRebel 250の開発チームでCB650R E-Clutchの技術者たちと連携を取りながらマシンづくりを進めていった。
E-Clutch 装着車2番手
「CB650R E-Clutchにはじめて触れたときは驚きました。発進、変速、走りのレベルがすべてワンランク上がっていたからです。色々な車種に広がって欲しいと思っていたので、Rebel 250への採用が決まったときは嬉しかったですね。」と語るのは開発責任者代行の野島一人氏。
E-Clutchのハード面で大きく変わったことはない。クラッチを押し引きする一部の部品以外はCB650R E-Clutchと同じユニットを使い、カバーのデザインとクラッチ操作の制御などが見直されているのみ。
Rebel250のコンパクトなエンジンにどうやって溶け込ませるかという点に留意してカバーの大きさやデザインが決められている。
基本的にクラッチ付きのエンジンであれば、どんな車種にも展開できるというE-Clutchだが、だからといって簡単に取り付けができるというわけではない。Rebel 250の場合はCB650Rとはクラッチカバーの形状が異なるし、水やオイルの経路を避ける必要があった。それらをクリアしつつRebel 250の雰囲気を壊さずに機能を成立させるために相当な苦労があったという。
更に問題だったのはモーターコントロールユニットやECUが増えたこと。スリムコンパクトなRebel 250には新しく部品を設置するスペースがなかったのである。シート高をあげてスペースを確保すれば簡単だが、デザインやシート高は変えたくない。
シート下周辺の色々な部品を見直してユニット類を配置することはできたものの、今度はモーターコントロールユニットとECUが吸気口を塞いでしまった。最終的には吸気ダクトの形状まで見直してシート下にすべての部品を収めることができたのである。
今回のモデルではE-Clutch以外でも進化があった。ハンドル位置とシートの変更である。ハンドルをフルロックさせた時に手が届きにくくなるというユーザーの声に応えてハンドル位置を10mm短くし(握る位置では8.9mmずつ)、手前に6.5mm引いて 5mmアップ。ステアリングステムからの距離を短くしてハンドルを切ったときの操作性を向上させている。シートには高反発ウレタンが採用されて快適性が向上した。
メーターにはE-Clutchの作動を表示するライトとシフトダウンインジケーターが追加され、リアフェンダーが樹脂製となった。オプションではグリップヒーター、ETC、スポンジが10mm厚くなって快適性が向上したリアのコンフォタブルシートなども用意されるなど、Rebel 250らしさを大事にしつつアップデートされているのである。
E-Clutchのフィーリングに驚き
テスターはCBR650R E-Clutchを10日間ほど使っていたことがある。だからRebel250のE-Clutchに関してもある程度「似たようなフィーリングだろう」と勝手に予想して走り出したのだが、最初にスロットルを開けて動き出した瞬間にまったく違うことに驚いた。発進がスムーズだし、低回転でシフトアップしたときも滑らか。このクラッチフィーリングはちょっとした感動だった。
聞けばシフトアップの点火をカットする時間が長めで、クラッチのつながり方もおだやかにしてあるとのこと。
「CB650Rは4気筒でRebel 250は単気筒。同じように制御するとギクシャクしてしまうのでエンジンの特性にあわせて特性を作り込んでいます。CB650Rではスポーツ感を味わうために変速も早めでカチッとしたフィーリングになっていますが Rebel250の場合は機種のコンセプトにあわせて、クルーズしながらシフトアップしても車体に挙動が出ないように点火カットの時間を少し長めに設定し、長めの半クラッチでつなぐようにしています。シフトダウンのときの半クラッチもおだやかにつながる設定です。」と開発担当者。
このフィーリングが実に気持ち良くて、まったりと走るのが楽しくなる。そして高回転のシフトフィーリングもまた実に良いのである。
点火カットと半クラッチの時間は回転数や車速に応じて変化する。Rebel 250 E-Clutchの場合、高回転で変速すると通常のクイックシフターのようにカチッカチッとシフトしていくのではなく、なめらかにギアが入る。ダイレクトさよりもおだやかさを大事にした設定になっているからだ。変速しているのにシームレスに加速していく感じは、ちょっと不思議な感じがする。
シフトダウンのブリッパーはないが、必要性はまったく感じない。試乗中、河川敷の土手に登っていく道を走った。2速で急な坂を登りながら減速し、Uターンするように鋭角ターン。深くバンクしながら1速に落として加速する。速度が出ていないから車体の姿勢を崩しやすいシチュエーションだ。こんな場所でもRebel 250 E-Clutchは、減速からシフトダウンを半クラッチでスムーズにいなしてくれる。どんな場所でも躊躇することなく変速ができるというのはとてもありがたい。
ちにみにE-Clutchはクラッチレバーを握るとマニュアルでクラッチ操作をすることができる。Uターンなどで微妙な操作をするときは、ライダーの意思でクラッチ操作ができるようになっているのである。
ただ、Rebel250のE-Clutchに関しては半クラッチの制御がおだやかになっているから、クラッチレバーを操作する機会はほとんどないはずだ。実際、今回も撮影のために何度となくハンドルをフルロックさせたUターンをしたけれど、クラッチレバーを操作したことは一度もなかったのである。
Rebel250のE-Clutchはタンデムでも威力を発揮しそうである。タンデムでシフト操作がラフになり、ヘルメット同士がぶつかってしまう経験は誰もがしたことがあるはず。ショックアップ、ダウンでショックをほとんど感じずにスムーズな加減速ができるE-Clutchだったらそんなこともない。オプションのコンフォートタンデムシートを使えば、ロングのタンデムツーリングでの疲れも激減することだろう。
Rebel250 E-Clutchには、単気筒250が、ここまでスムーズに加減速できるのかという驚きがあった。「変速するのが好きになるように考えた」という技術者に言っていることが実によく伝わってマシンである。
ボジション&足つき(身長178cm 体重75kg)
ハンドル位置の変更はライダーの体格もあって、前のモデルからの違いを大きく感じなかったがシートの座り心地が向上しているのは跨った瞬間に感じられる。E-Clutchとあわせて、長距離ツーリングなどでライダーの疲労を大きく低減してくれることだろう。
シートのスポンジは変更されたが、足つきの良さは相変わらない。クラッチカバーにE-Clutchが張り出しているが、足をついたときに多少当たることがあるという程度。実際に走っているときはまったく気にならなかった。
ディテール















主要諸元 【 】内は E-Clutch、〔 〕内は S Edition E-Clutch
車名・型式 | ホンダ・8BK-MC49 | |||
---|---|---|---|---|
全長(mm) | 2,205 | |||
全幅(mm) | 810 | |||
全高(mm) | 1,090 | |||
軸距(mm) | 1,490 | |||
最低地上高(mm)★ | 134 | |||
シート高(mm)★ | 690 | |||
車両重量(kg) | 171【174】〔175〕 | |||
乗車定員(人) | 2 | |||
燃料消費率*1 (km/L) |
国土交通省届出値: 定地燃費値*2 (km/h) |
47.0(60)〈2名乗車時〉 | ||
WMTCモード値★ (クラス)*3 |
34.9(クラス 2-2)〈1名乗車時〉 | |||
最小回転半径(m) | 2.8 | |||
エンジン型式 | MC49E | |||
エンジン種類 | 水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 | |||
総排気量(cm3) | 249 | |||
内径×行程(mm) | 76.0×55.0 | |||
圧縮比★ | 10.7 | |||
最高出力(kW[PS]/rpm) | 19[26]/9,500 | |||
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 22[2.2]/6,500 | |||
燃料供給装置形式 | 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 | |||
始動方式★ | セルフ式 | |||
点火装置形式★ | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |||
潤滑方式★ | 圧送飛沫併用式 | |||
燃料タンク容量(L) | 11 | |||
クラッチ形式★ | 湿式多板コイルスプリング式 | |||
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |||
変速比 | 1速 | 3.416 | ||
2速 | 2.250 | |||
3速 | 1.650 | |||
4速 | 1.350 | |||
5速 | 1.166 | |||
6速 | 1.038 | |||
減速比(1次★/2次) | 2.807/2.571 | |||
キャスター角(度)★ | 28゜00′ | |||
トレール量(mm)★ | 110 | |||
タイヤ | 前 | 130/90-16M/C 67H | ||
後 | 150/80-16M/C 71H | |||
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ディスク(ABS) | ||
後 | 油圧式ディスク(ABS) | |||
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 | ||
後 | スイングアーム式 | |||
フレーム形式 | ダイヤモンド |
- ■道路運送車両法による型式認定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
- ■製造事業者/Thai Honda Co., Ltd.
- ■製造国/タイ
- ■輸入事業者/本田技研工業株式会社
- *1 燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
- *2 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
- *3 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。