高止まりするガソリン価格の「約4割が税金」!?  暫定税率や二重課税、トリガー条項などガソリン関連の課題とは?

ガソリン価格の高騰が続くなか、石破首相は、2025年4月22日、ガソリン価格を2025年5月22日から段階的に「1L当たり10円引き下げる」考えを表明した。だが、そもそもガソリン価格については、税金に関する課題の解消や減税を求める声も多い。
たとえば、「暫定税率」。自民、公明、国民民主3党は、2024年12月にこれを廃止することで合意しており、実現すれば「1L当たり25.1円の減税」となり、1L当たり10円の引き下げよりも価格は下がるはず。だが、実施時期がいまだに未定で、これに対する不満の声も多い。また、ほかにも「二重課税」「トリガー条項凍結」などの問題もあり、これらにより「実は価格の4割近くは税金で、見直すべきだ」といった声もよく聞く。では、実際、ガソリン価格に関わる税金にはどんなものがあり、どのような課題があるのだろうか? 

REPORT●平塚直樹
PHOTO●写真AC
*写真は全てイメージです

ガソリン税が本来より25.1円高いワケ

まず、ガソリン税にはどんなものがあるかというと、「揮発油税」(国税)と「地方揮発油税」(地方税)を挙げることができる。現在、各税率とその合計は、以下の通り。

「揮発油税48.6円/L」+「地方揮発油税5.2円/L」=「合計53.8円/L」

だが、実はこれは本来の税率とは異なり、特例税率、前述したいわゆる「暫定税率」が含まれている。

この暫定税率とは、「一時的に課税される」種類のもので、もともとは道路財源の不足を理由として1974年に設定されたものだ。2010年に一旦は廃止されたものの、すぐに同額分の特例税率が創設され現在も続いている。

ちなみに、本来のガソリン税は以下の通り。

「揮発油税24.3円/L」+「地方揮発油税4.4円/L」=「合計28.7円/L」

つまり、現在のガソリン税は、暫定税率によって元々の税率よりも25.1円/L高くなっているのだ。しかも、「一時的な課税」のはずが50年以上も続いている。

さらに、問題視されているのは、当初の使用目的は道路特定財源だったのが、今では一般財源に充てられていること。元々、道路の整備などが目的だったはずなのに、さまざまな行政サービスに支出することができる一般財源に変えられていることも、前述した「税金の見直し」を求める人たちが問題視する点のひとつだといえる。

ちなみに、ガソリンに課せられている税金には、ほかにも石油石炭税と地球温暖化対策税(石油石炭税に上乗せ)の合計2.8円/Lもある。そのため、現在、ガソリンには、これらの合計56.6円/Lの税金が課せられていることになる。

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現在、ガソリンには、合計56.6円/Lの税金が課せられている

消費税は二重課税されている?

さらに、ガソリン価格には、これらの税に加え、消費税もかかっている。しかも、ガソリンの場合、消費税はガソリン税や石油石炭税(地球温暖化対策税も含む。以下、石油石炭税)と本体価格の合計額に10%課税される。そして、この課税方式が「ガソリン税に消費税を課す二重課税」だと問題視されているのだ。また、これらの税金が課せられていることが、前述した「価格の4割近くは税金」といった指摘の根拠となっている。

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ガソリン価格には消費税も含まれており、ガソリン税や石油石炭税と本体価格の合計額に10%課税される

たとえば、レギュラーガソリンの小売り価格が185円/Lの場合、どれくらいの税金がかけられているのか試算すると、以下のようになる。

レギュラーガソリン小売り価格:185円/L
本体価格:112.4円/L
ガソリン税(本来の税額):28.7円/L
ガソリン税(暫定税):25.1円/L
石油石炭税:2.8円/L
消費税:16円/L

上記はあくまで参考例なので、消費税額は小数点以下の処理により(切り捨て・切り上げ)多少変わるかもしれないが、試算の場合でいえば、税金が72.6円/Lかかっていることになる。つまり、1Lあたり39%、約4割が税金だといえるのだ。

ちなみに、ガソリン税や石油石炭税は、ガソリンの本体価格が変わっても一定なので、もし本体価格が安くなれば、さらに税金の割合は増えることとなる。

たとえば、レギュラーガソリンの小売り価格が165円/Lであれば、本体価格93.4円/Lで、税金は、ガソリン税+石油石炭税の合計56.6円/Lと消費税15円/Lを合わせると合計71.6円/L。ガソリン1Lを購入するにあたり、税金が43%以上を占めることになる。

トリガー条項の凍結を解除すべきとの声も

ガソリン税の問題では、「トリガー条項凍結の解除」を求める声もある。

トリガー条項とは、2010年度の税制改正で導入された制度で、レギュラーガソリンの全国平均価格が「3か月連続で160円/Lを超えた場合」に、先に紹介した「暫定税率分の25.1円/Lを課税しない」というものだ。

国民生活に大きな影響を持つガソリン価格が一定基準以上になった場合に、拳銃などのトリガー(引き金)を引く、つまり「税金を引き下げる」ことで、価格の安定を図ることを目的に制定された。

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ガソリン税の問題では、「トリガー条項凍結の解除」を求める声もある

資源エネルギー庁のデータによれば、レギュラーガソリンの全国平均価格は、2021年10月4日時点で160円/Lになって以来、ずっと160円/L以上が続いている。そのため、本来であればこの制度が発動され、先に紹介したガソリン税+石油石炭税の合計は31.5円/Lとなっているはずだ。そして、もし先述した試算のように本体価格が112.4円/Lであれば、ガソリン価格は以下のようになる。

「本体価格112.4円/L」+「ガソリン税+石油石炭税31.5円/L」+「消費税14円/L」=「合計157.9円/L」

つまり、本体価格を112.4円/Lと仮定した場合、小売り価格は現行制度で試算した185円/Lよりも、暫定税率分を課税しなければ27.1円/Lも安くなることになる。

ところが、現在、トリガー条項は凍結状態だ。理由は、2011年に発生した東日本大震災の復興財源を確保するため。そのため、レギュラーガソリンの全国平均価格が160円/L以上、現在のように180円/L台となっても(2025年4月28日時点で184.5円/L)、依然として「税金額はそのまま」の状態が続いているのだ。

ちなみに、前述の通り、暫定税率は廃止することで自民、公明、国民民主3党が合意している。だが、まだ実施時期が未定となっており、いつになるかは不明だ。これは、暫定税率を廃止した場合、代替となる財源をどこから確保するのかが決まっていないためというが、果たして今後どうなるのかが注目だ。

暫定税率の廃止時期は不明のまま補助金も縮小

現在のガソリン価格高騰は、ロシアのウクライナ侵攻などによる世界的な原油高と、円安の影響が大きいといわれている。しかも、以前のような価格へ戻るのかは不透明。にもかかわらず、トリガー条項は凍結されたままだし、暫定税率の廃止もいつになるか分からない。

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現在のガソリン価格高騰は、ロシアのウクライナ侵攻などによる世界的な原油高と、円安の影響が大きいといわれている

従来、政府は、価格高騰への施策として石油元売り事業者に販売価格引き下げの原資のための「ガソリン補助金(燃料油価格激変緩和補助金)」を支給する対応をおこなってきた。だが、それも、2025年に入り支給額を縮小している。

2022年1月に制度が発動したこの補助金は、もともと、コロナ禍からの経済回復の重荷になる事態を防ぐための「時限的・緊急避難的な激変緩和事業」として設定したもの。コロナ禍がある程度落ち着いたことで、政府では段階的に見直しを図っているのだが、2025年4月17日からは支給額がついに制度発動して初の0円となった。

補助金0円にした理由は、予測価格が補助金を支給する基準価格の185円/Lを下回っているためのようだ。以前は、補助金がないとレギュラーで200円/Lを超えていたのに対し、原油価格などの関係で補助金なしでもレギュラーで185円/L台となったということらしい。

その後、ガソリン補助金の支給額は、5月1日から5月14日で1.1円となったが、それでも資源エネルギー庁の発表によれば、レギュラーガソリン全国平均価格は、最新の2025年4月28日時点で184.5円/L。前週の2025年4月21日時点185.1円/Lよりもやや下がったものの、それでも180円/L台の高値をキープ。ユーザーにしてみれば、市場におけるガソリン価格自体は高止まりしていることに変わりない。

なお、先に述べた2025年5月22日から段階的に1L当たり定額で10円引き下げる措置だが、おそらくこれも補助金によるものとなることが予想される。だが、心配なのは、補助金による価格引き下げは、あくまで一時的な措置であること。今回のように支給額が縮小またはゼロになると、価格がすぐに高騰してしまう危険性もある。一方、ガソリン税は、法律の改正なども絡んでくるだけに、なかなかすぐに減税措置となりにくいのも確かだ。いずれにしろ、ガソリン価格は国民の生活や経済に深く関係するものだけに、税制についても、公平で納得感のあるものとなることを期待したい。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…