車重393kg、価格440万円。最新のバットウイングをまとうウルトラ、排気量55cc増量でパワーは何と23%アップだ!|ハーレーダビッドソン・ストリートグライドウルトラ

2024年モデルを最後にディスコンとなったウルトラリミテッド。その後継に位置付けられる“ストリートグライドウルトラ”が新たに加わった。先に登場したストリートグライドと共通のスタイリングをまとい、空水冷45度Vツインのミルウォーキーエイトは114ci(1868cc)から117ci(1923cc)へ。グランドアメリカンツーリングファミリーの真髄に迫ろう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ハーレーダビッドソンジャパン

ハーレーダビッドソン・ストリートグライドウルトラ……440万8800円~(2025年3月21日予約開始)

1969年に登場したエレクトラグライド以来、ハーレーの象徴の一つになっているのがバットウイングフェアリング。2023年4月、まず新型フェアリングを採用したCVOストリートグライドが発表され、2024年にストリートグライドが登場。その上位モデルとして2025年にストリートグライドウルトラが追加された。
昨年のブルースカイヘブンに展示されていたストリートグライド。ツアーパック(トップケース)やロアフェアリング(レッグシールド)の有無がウルトラとの外観における主な違いだ。2025年モデルの価格は377万800円~で、ウルトラとの差額は63万8000円となっている。
2024年モデルのウルトラリミテッド(454万5200円~)。新旧のバットウイングフェアリングの違いを見ていただくために掲載した。新型はこれまでのイメージを大きく変えずにフロントウインカー(兼ポジションランプ)とミラーを一体化し、モダンなデザインに仕立てている。
撮影車両はブラックトリム(+19万1400円)のブルーバースト(+10万4500円)というカラーリングで、車両のみの総額は470万4700円となる。ウインドシールドはストリートグライドよりも101.6mm高いトールタイプだ。

パワフルさの中に柔らかな脈動感と扱いやすさあり

セグメントの統廃合により、かつてシンプルに“ツーリング”と呼ばれていたファミリーは、今では“グランドアメリカンツーリング”と名称を変更している。ハーレーのメインストリームであり、筆者が最後に試乗したのは2019年モデルのエレクトラグライドスタンダードだ。エンジンは空油冷のミルウォーキーエイト107(1745cc)で、従前のツインカムからの進化ぶりに驚いたのを今でも覚えている。

2019年に発売されたエレクトラグライドスタンダード。カラーリングや装備を簡素化することで290万5200円という価格を実現した。

さて、今回試乗したのは2025年のニューモデルとして登場した“ストリートグライドウルトラ”だ。昨年デビューしたストリートグライドの上位モデルであり、また2024年モデルを最後にディスコンとなったウルトラリミテッドの後継と見ることもできる。

エンジンはミルウォーキーエイト117と呼ばれる1923ccの空水冷45度V型2気筒で、175Nmという強大なトルクを3500rpmで発生する。2リッターのVツインと聞いて思わず尻込みしてしまうが、ハーレーは加速/減速/旋回のあらゆるシーンにおいてトラクションを制御できるよう、さまざまな安全性強化機能を盛り込んでいる。

エンジンは、排気バルブ周りにウォーターラインを設けて部分的に水冷化した、空冷45度V型OHV4バルブ2気筒“ミルウォーキーエイト117”だ。ウルトラリミテッドが搭載していた“ツインクールド・ミルウォーキーエイト114”をベースに、114.3mmというストロークはそのままにボアを102mmから103.5mmへと1.5mm拡大。排気量を55ccプラスの1923ccとしている。これにより最高出力は87HP(88.2PS)から107HP(108.5PS)へ、最大トルクは160Nmから175Nmとそれぞれアップした。ライディングモードが新設されたのもポイントで(ウルトラリミテッドはトラコンの設定としてロードとレインモードがあった)、スポーツ/ロード/レイン/カスタムA/カスタムBの5種類が用意される。レッドゾーンは5500rpmから。

試乗時間が限られていたことから、ロードモードをメインにテストを実施した。このミルウォーキーエイト117、400kgに迫る車体を軽々と発進させられるほど低回転域から力強いが、何より感心したのはFIの調教ぶりだ。半クラッチを使いながら人が歩くような速度を維持していても、ストンとエンストしてしまうようなそぶりが一切ない。スロットル開け始めの反応が緻密だからこそ安心してコントロールでき、これならタンデムライドにおいてパッセンジャーを慌てさせることはないだろう。

一般道を流してみる。ビッグツインらしい図太い排気音を響かせながらも回転上昇はスムーズで、不快だと感じる振動はほとんど体に伝わってこない。これは1次バランサーやラバーマウントのおかげだろう。右手を大きく動かせばどこからでもズドンッと加速するものの、そこには柔らかな脈動感も混じり合い、ジェントルな雰囲気すら漂う。ライディングモードをスポーツにすると、スロットルレスポンスは明確にアップし、巨体をよりキビキビと扱えるようになる。一方、レインモードは全域で反応が穏やかになり、かつてのCVキャブを彷彿させる優しい性格に。一つのエンジンでここまでキャラクターを作り分けるとは、さすがと言っていいだろう。

なお、個人的にやや残念に感じた点が二つある。一つはクラッチレバーの重さだ。昨今はスリッパークラッチ採用車が増え、リッタークラスでも250cc並みにレバー操作が軽いモデルが珍しくないので、相対的に重く感じてしまうのだ。そしてもう一つは、シフトペダルがシーソータイプではないことだ。試乗した個体がまだ新車で、ミッションの動きが固かったということもあるが、かかとで踏んでシフトアップできたらどんなに楽だろうと思った。なお、どちらもアフターマーケットパーツや純正アクセサリーで改善できるので、同様の悩みが発生したらディーラーに相談してみてほしい。

シフトペダルはシーソータイプではない。シフトペダルの下にブーツを差し込む際、フットボードにソールが触れて抵抗になってしまうのも気になるところ。

動き出せば驚くほど軽快、乗り心地の良さは極上レベル

グランドアメリカンツーリングファミリーは、ステム軸よりも後方にフォークがあるという特殊な足周りとなっており、このストリートグライドウルトラは170mmというトレール量を稼ぎ出している。ホンダのゴールドウイングが109mm、レブル1100が110mmなので、いかに長いかが分かるだろう。そんな特殊なディメンションが功を奏してか、これほどの巨体ながら10km/hぐらいの微速域でもふらつかずに走ることができ、さらに驚くほど軽い操縦で交差点を曲がることができるのだ。

S字コーナーなどで素早く切り返そうとすると、ツアーパックが装着されている分だけ高重心な雰囲気が伝わる上に、ハンドルクランプのラバーマウントの柔らかさも露呈する。だが、そんなことが気になってしまうほど、ストリートグライドウルトラは軽快かつ運動性の高いハンドリングを有しているのだ。フロントタイヤは60%扁平という特殊なサイズだが、それがまったくネガになっていないのも驚きである。

フロントタイヤはウルトラリミテッドの130/70B18から130/60B19へ。リヤは180/55B18で変更なし。フロントフォークはφ49mmの正立式で、デュアルベンディングバルブを採用する。
リヤサスペンションはツインショックで、ホイールトラベル量は76.2mm。ショーワ製のデュアルアウトボードエマルジョンテクノロジーショックを採用し、右側のプリロード調整はダブルナット式、左側はサドルバッグを外さずとも調整できる油圧リモートコントローラー式となっている。さらに左右ともダンピングアジャスターあり。推奨セッティングはオーナーズマニュアルに詳しく記載されている。

サスペンションは電子制御のないオーソドックスなものだが、乗り心地が抜群に良いのはもちろん、一人乗りでもタンデムでも印象が大きく変化しないのは不思議だ。オーナーズマニュアルには細かく推奨セッティングが記載されているので、オーナーになられた方はぜひご自身でいろいろ試してみてほしい。

ロアフェアリングのベントドアやフォークマウントのエアディフレクターによるエアフロー効果までは試せなかったが、調整次第でおそらく快適性は高められるはずだ。グランドアメリカンツーリングファミリーの中で最も王道的なモデルであり、価格に見合うだけの価値は間違いなくあろう。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

シート高はウルトラリミテッドの740mmから725mmへとダウン。両足がしっかりと地面に届くので、393kgという重さを支えることが可能だ。シートが腰を適度にサポートしてくれる上に、足の置き場所の自由度が高いフットボードとの組み合わせにより、ロングツーリングでの疲労度は非常に少ないはずだ。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…