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スズキKATANA……1,661,000円

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg) ★★★★☆

基本設計を共有するGSX-S1000を含めた現代のスポーツネイキッドの基準で考えると、カタナは着座位置が前方で、ハンドルグリップ位置が高め。だから久しぶりの試乗となった今回、当初の僕は少々違和感を抱いたものの、距離が進むにつれてこのライディングポジションだからこそ、と思えるハンドリングに感心。なお1度目のロングランでは腕や足腰にジンワリとした痛みを感じたが、その原因はライディングポジションではなく、前後ショックのセッティングで、プリロード/ダンパーアジャスターを大幅に弱めて臨んだ2度目のロングランでは、身体のどこかに露骨な痛みを感じることはなかった。

シート高はGSX-S1000+15mmの825mmで、両足が地面に接地するためには165cm前後の身長が必要。などと書くとハードルの高さを感じる人がいるかもしれないが、スーパースポーツの基本設計を転用して生まれた近年のスポーツネイキッドでは、825mmは平均的な数値である。と言っても、日本ではカタナのシート高に不満を感じるライダーが少なくないようで、アフターマーケット市場では数多くのローダウンキットが販売されている。

タンデムライディング ★★☆☆☆

過去に当記事で取り上げたスズキ車、ジクサーSF250やVストローム250/SX、SV650、GSX-8Rなどは、いずれも抜群のタンデム性能を備えていたものの、デザイン重視で製作されたためか、カタナはいまひとつだった。以下はタンデムライダーを務めた、身長172cm・体重52kgの富樫カメラマンの言葉。「見た目がコンパクトでも、シートの座り心地は意外に良好。ただし、タンデムベルトが妙に長くて、ステップ位置が高めだから、加減速では身体が揺すられて落ち着かなかった。メインライダーに身体を密着させれば問題は解消できそうだけど、このバイクはあまりタンデム向きではないと思うよ」
取り回し ★★★☆☆

現代のリッタースポーツネイキッドの中では、215kgという車重はやや重めだが(最軽量のドゥカティ・ストリートファイターV4やBMW S1000Rは200kg前後)、ハンドルグリップ位置が高いので取り回しは楽々。とはいえ、カウルとフロントフォークの緩衝を避けるため、ハンドル切れ角は29度に設定されているので(GSX-S1000は31度)、狭い場所での押し引きはちょっと気を遣う。
ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

テーパータイプのアルミハンドルは、幅広にしてグリップ位置が高め。バックミラーの視認性はなかなか良好だが、車両全体の雰囲気を考えると、もう少し低め・狭めのほうが似合う気がする。多機能デジタルメーターはL7以降のGSX-R1000がベースだが、文字盤のデザインは専用設計で、2022年型からはオレンジ色の表示となる夜間モードを追加。フルカラーTFTディスプレイの普及が急速に進んでいる昨今の状況を考えると、このメーターは逆に新鮮?

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆
左側スイッチボックスはGSX-S1000やGSX-8R/S、Vストローム800/DEなどと共通。ライディングモードとトラコンの設定も含めて、メーター内の情報は左側上部のセレクト&モードスイッチで操作。
フロントブレーキマスターシリンダーはオーソドックスなピストン横置き式で、レバーの基部には5段階のアジャスターダイヤルが備わる。グリップラバーは近年のスズキ製ロードスポーツの定番品だ。
燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

独創的な構成のガソリンタンクカバー+サイドカバー+シートには、往年のGSX1100Sカタナの雰囲気が盛り込まれている。乗車中にニーグリップするのはサイドカバーとシート前端部で、フィット感はなかなか良好。シートの座り心地も決して悪くなかったものの、ツーリング中はもう少し前後方向の自由度、フラットな面が欲しくなった。ただし、Aモードの強烈な加速と減速に自然に適応できたのは、座面に適度な傾斜が設けられているから(前上がり&前下がり)……のような気はする。

長めのバンクセンサーを除けば、ステップまわりはスーパースポーツ的なデザイン。ステップブラケットと一体型のヒールプレートは、左右幅の狭さに対するこだわりを感じるデザインで、ホールド感は抜群。シフトロッドの基部にはクイックシフター用のセンサーが備わる。
積載性 ★★★☆☆

シート裏面に格納式ループ、タンデムステップブラケットにはフックが備わるが、それらが荷物積載時に有効に使えるかと言うと、必ずしもそうではなさそう……。とはいえ、タンデムシートに巻き付けるベルトを使用して、筆者の私物であるタナックスのWデッキシートバッグを積載してみたら、まずまずの安定感が得られた。シート下は電装系部品でギッシリなので、ETCユニットをスマートに収めたいライダーは、テールカウル側面の膨らみ部分やガソリンタンク下などを利用しているようだ。

ブレーキ ★★★★☆

フロント:φ310mmディスク+ブレンボ製ラジアルマウント式4ピストンキャリパー、リア:φ250mmディスク+ニッシン製片押し式1ピストンキャリパーのブレーキは、前後とも質実剛健という印象で、どんな領域でもコントローラブル。ABSの介入は比較的遅めで、意図的な急制動を行って利き方のナチュラルさは確認したものの、ツーリング試乗中はほとんど作動しなかった。

サスペンション ★★★★☆

φ43mm倒立式フロントフォークはフルアジャスタブル式で、リンク式モノショックのリアサスはプリロードと伸び側ダンパーの調整が可能。標準設定は硬めだが、第2回目に記した通り、前後ともセッティングを柔らかめに変更したら、僕好みのフィーリングが得られた。もっともリアショックに関しては、ノーマルの動きと調整範囲に物足りなさを感じて、アフターマーケット製に交換するオーナーが多いようだ。

車載工具 ★★☆☆☆

シートベース裏面に固定される車載工具は、14×17mmの両口スパナと5mmの六角棒レンチの2点のみ。ちなみに兄弟車のGSX-S1000は、4mm・5mmの六角棒レンチ、差し替え式ドライバー、リアショックのプリロード調整用スパナの4点。
実測燃費 ★★★☆☆

ネットでは20km/ℓ前後という数値を公表するオーナー多いので、今回の数値はいまひとつ……と、当初は思ったものの、後に各年式のスペックを調べてみたら、2022年の仕様変更でWMTCモードの燃費が19.1→16.6km/ℓに低下していたことが判明。となれば、17.8km/ℓという今回のトータル燃費は、決して悪くはないのだろう。参考として他社のリッタースポーツネイキッドの公称燃費を記すと、ホンダCB1000ホーネット:17.7km/ℓ、ヤマハMT-10:15.6km/ℓ、BMW S1000R:16.12km/ℓ。なおカタナの指定ガソリンはハイオクで、平均燃費から割り出せる航続可能距離は17.8×12=213km。

主要諸元
車名:KATANA
型式:8BL-EK1AA
全長×全幅×全高:2130mm×820mm×1100mm
軸間距離:1460mm
最低地上高:140mm
シート高:825mm
キャスター/トレール:25°/100mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:998cc
内径×行程:73.4mm×59.0mm
圧縮比:12.2
最高出力:110kW(150ps)/11000rpm
最大トルク:105N・m(10.7kgf・m)/9250rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
1速:2.562
2速:2.052
3速:1.714
4速:1.500
5速:1.360
6速:1.269
1・2次減速比:1.533・2.588
フレーム形式:ダイヤモンド(アルミ製ツインスパー)
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ43mm
懸架方式後:ボトムリンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:190/50ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:215kg
使用燃料:無鉛ハイオクガソリン
燃料タンク容量:12L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:21.2km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3:16.2km/L(1名乗車時)