ジブリアニメ、東京・多摩地区の聖地巡礼をしてみた。ゆるカブツーリング第10弾

さまざまな漫画やアニメの舞台として登場する多摩ニュータウン。多摩丘陵を切り開いて1969年に開発が始まった。
旅のスタイルは千差万別です。もちろんバイクツーリングもそれは同じです。そんな旅の目的のひとつに映画やTVドラマのロケ地めぐりや、アニメの舞台の聖地巡礼があります。こうしたロケ地めぐりや聖地巡礼にはバイクがとても便利な手段になってくれます。そこで今回は、ジブリアニメ「平成狸合戦ぽんぽこ」と「耳をすませば」の舞台になった多摩ニュータウンをゆるりとツーリングしてみました。

平成狸合戦ぽんぽこの舞台を訪ねて南大沢へ

「平成狸合戦ぽんぽこ」は1994年に公開されたアニメーション映画で、1965年から始められた多摩ニュータウン開発によって、それまで多摩丘陵を生息地としていた狸たちが、人間の手からすみかを守ろうとさまざまな方法で抵抗するという内容です。
 まずは、狸たちの生活拠点として描かれていた菩提餅山万福寺へと向かいました。もちろん実際にそういう名の寺が存在しているわけじゃなく、八王子市堀之内にある龍生寺阿弥陀堂がモデルになっているようです。
新しい住宅地に囲まれた中に龍生寺阿弥陀堂はあるのですが、この一角だけは昔ながらの里山風景が残されていて、堀之内寺沢里山公園が隣接していました。こじんまりとした境内には、何体もの地蔵が並んである本堂や、江戸時代中期に建立された宝篋印塔などがあり、時代を遡ったような印象を受けます。裏手は木々に覆われた斜面となっているので、いまでも狸が生息しています。
作中では、最終的に万福寺が壊されて、跡地にはおしゃれな集合住宅が建設されます。そのモデルになったのが多摩ニュータウンベルコリーヌ南大沢です。堀之内から南大沢までは京王相模原線でひと駅の距離で、スーパーカブで行くと、都道20号線を西へ走って3~4㎞ほどの場所になります。外観がおしゃれな集合住宅が建ち並び、大型スーパーやカフェなどもある街の雰囲気は、ニュータウンの名にふさわしいと思いました。
多摩ニュータウンの中心地域である京王多摩センター駅界隈も登場します。商業施設が林立する駅周辺やすぐ下を流れる乞田川などは、多くの人で賑わっています。またサンリオピューロランドがあることから最近では、海外からの観光客も増加しています。
 また、同じ京王線の聖蹟桜ヶ丘駅も作中に登場しているので、平成狸合戦ぽんぽこの聖地巡礼の最後に訪れてみました。こちらも多摩センター同様にデパートをはじめ多くの商業施設がありにぎやかでした。余談ですが、ここ聖蹟桜ヶ丘に京王電鉄本社があります。
狸たちの拠点とされた菩提餅山万福寺のモデルになったといわれている龍生寺阿弥陀堂
何体もの地蔵が並ぶ本堂が特徴的
里山風景名が残る一角に龍生寺阿弥陀堂はある
作中に登場した鐘つき堂のモデル?
作品では最終的に万福寺が取り壊されてしまい、そのあとにおしゃれな集合住宅が建設された。そのモデルがベルコリーヌ南大沢
多摩ニュータウン内の道路には、あちらこちらに狸が描かれた動物注意の標識がある
いまも実際に野生の狸が生息している
作中に登場する給水塔
開発の波に飲み込まれて散り散りとなってしまった狸たちだが、中には人間に化けて暮らす狸の正吉もいた。正吉が仕事から帰ってきたときのシーンでは京王多摩センター駅が登場
開発中の護岸工事のシーンで描かれた乞田川
助っ人として四国からやってきた三長老は、聖蹟桜ヶ丘駅の改札を出てくる

耳をすませばの聖地にはいまも訪れるファンが絶えない

高台にある桜ヶ丘住宅地には眺めの良いポイントが何カ所もある。階段の先に道がまっすぐに続くこの場所は、TVドラマやCMにたびたび登場する
聖蹟桜ヶ丘駅は、平成狸合戦ぽんぽこ公開の翌年の1995年に公開された「耳をすませば」の舞台でもあります。聖蹟桜ヶ丘はたくさんの漫画やアニメの舞台になっているのですが、もっとも有名な作品がスタジオジブリの耳をすませばです。ということで、耳をすませばの聖地巡礼ツーリングをすることにしました。
アニメ映画耳をすませばは、中学生の月島雫と天沢聖司が図書館の貸し出しカードが縁で知り合い、思いを寄せながらお互いの夢を応援するといった内容の物語です。舞台の多くが聖蹟桜ヶ丘駅から西に、小高い丘に築かれた桜ケ丘住宅地から愛宕団地に集中していて、駅直結の京王ストア前に聖蹟桜ヶ丘散策マップがあり、まずはそのマップを入手しました。マップには3カ所のスタンプスペースがあり、聖地巡礼の思い出にできるようになっています。さらに、作中に登場する地球屋をモチーフにした青春のポストも設置されていて、ファンに親しまれています。
聖蹟桜ヶ丘駅から川崎街道を渡り、さくら通りを西へ向かいます。商店街を抜けると大栗川に架かる霞が関橋を渡ります。橋周辺の風景もアニメに登場します。橋を渡ると登り坂になり、いろは坂通りに入ります。ヘアピンカーブを連続させて一気に高度を上げる道は、アニメの主要シーンにたびたび登場します。道の間には急な階段が設えてあり、主人公の雫がこれらの階段を駆け抜けています。マップ片手に聖地巡礼している人をよく見かけますが、急な階段をものともせずに上っているのですから感心します。そんな耳をすませばファンを横目にスーパーカブでスイスイいろは坂を上っていきます。
上り切る手前に金比羅神社の小さなお堂があります。ここは同級生の杉村が雫に告白した場所のモデルです。坂を上り切ったところには天守台があり、ここもアニメに登場します。さらにその先にもTVドラマやCMにもたびたび登場しているいわば定番のロケ地になっている住宅地を見晴らす階段があり、ここも聖地のひとつになっています。
閑静な住宅地をさらに進んで行くと、桜ヶ丘ロータリーに着きます。日本では数少ないラウンドアバウトで、このロータリーの一角に天沢聖司の祖父が営むアンティークショップ地球屋があります。もちろん実際にはそんな建物はないのですが、同じ場所にノアという洋菓子店と和桜というダイニングがあり、ファンには聖地として親しまれています。そしてスタンプの設置場所でもあります。
地球屋はないのですが、桜ケ丘ロータリーはアニメに描かれた風景に近いイメージで、どこか日本離れした雰囲気です。
マップにはこのロータリーまでしか描かれていないのですが、さらに進んでいき、都道157号乞田東寺方線を越えた先にある愛宕団地まで走っていきました。この団地に雫が住んでいるという設定になっています。団地内を走る道をたどってみると、たしかにアニメに登場した風景に出会えました。
作中では京玉線杉の宮駅となっている京王線聖蹟桜ヶ丘駅
さくら通りから聖蹟桜ヶ丘駅方向を見た風景も登場する
京王ストア前には地球屋をモチーフにした青春のポストが設置してある
京王ストア前ほか2カ所で入手できる聖蹟桜ヶ丘散策マップ。スタンプスペースがあり、今回は3カ所すべてを回りスタンプを押してみた
大栗川に架かる霞が関橋
霞が関橋を境にいろは坂通りが始まる
作中では雫が歩いているシーンが描かれているが、実際には手前側にしか歩道はない
作中ではこのあたりに図書館があるが、現実にはいろは坂桜公園があり、春にはソメイヨシノの花に彩られる
雫が元気よく駆け下りていく階段
いろは坂は車道はヘアピンカーブのつづら折りで、歩道は急な階段となっている
いろは坂を上ったところにある金比羅神社
杉村が雫に告白するシーンが描かれた社
関戸城は北条氏の家臣の居城で、鎌倉街道、関戸宿を眼下にする要害だったのではないかといわれている
天守台と階段も作中に登場する。ただし天守台は天守の丘とされている
日本では数少ないラウンドアバウトのひとつが桜ヶ丘ロータリー。作品ではこのロータリーの一角にアンティークショップ地球屋が建っている
地球屋が建つ場所の近くには、ノア洋菓子店とダイニング和桜があり、ファンの聖地になっている
ノア洋菓子店の店先には聖司と雫の顔はめパネルがあった
雫が住んでいた愛宕団地
とまあ今回はちょっと趣向を変えて、ジブリアニメ「平成狸合戦ぽんぽこ」「耳をすませば」と2つの作品の聖地巡礼ツーリングをしてみました。歩いてめぐるとけっこう大変な行程ですが、スーパーカブで行けば半日ですべて見て回れました。こんなツーリングもたまにはいいんじゃないでしょうか。
走行距離は約50㎞。使用したガソリンは0.92L。ランチ代を含めて1000円程度でした。

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…