知らないと危険な時も! バイク初心者が高速道路を安全&快適に走るコツ|バイクの法律

バイクでツーリングに行く際、移動距離が一気に伸びて、より遠くの目的地へ、楽に、早く行くことができるのが高速道路。だが、バイク免許を取ったばかりの初心者ライダーなどにとっては、高速道路の走行は教習所で体験できないため、ちょっとハードルが高いと思う人もいるだろう。
ここでは、高速道路をバイクで走るにあたっての注意点やポイントについて紹介してみる。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●写真AC
*写真はイメージです

高速道路をバイクで走るための必須条件は?

まずは、バイクで高速道路を走るために、道路交通法などの法律で定められている必要な条件などを以下に紹介します。

【バイクで高速道路を走るための主な条件】
・125cc超のバイク
・普通自動二輪免許または大型自動二輪免許の保有者
・最高速度100km/h、最低速度50km/h


・2人乗りできる条件
→「年齢20歳以上」
→「大型自動二輪車免許又は普通自動二輪車免許を受けていた期間が通算3年以上」

法律上、高速道路を走行できるバイクは、125cc超~250cc以下の「軽二輪(二輪の軽自動車)」と250cc超の「小型二輪(二輪の小型自動車)」という決まりがある。つまり、125cc超のバイクでないと走行不可。原付一種や原付二種といった原動機付自転車は走行できない。

また、運転免許は、400ccまでのバイクであれば普通二輪免許、400cc超のバイクであれば大型二輪免許が必要。ただし、スクーターやAT機構を持つなどで、クラッチやシフト操作が不要なバイクであれば、AT限定普通二輪免許(400cc以下のバイク)、AT限定大型二輪免許でも運転できる。

さらに、高速道路を走行する場合の速度は、最高速度100km/h、最低速度50km/h。この範囲内から1km/hでも速かったり、遅く走ると違反となるので注意が必要だ。なお、最近は、新東名高速道路の一部や東北自動車道の一部など最高速度120km/hの区間もあるが、基本的にほとんどの高速道路は最高速度100km/hなので、スピード違反には十分気をつけたい。

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高速道路を通行するためには、法律で定められたさまざまな規定を守る必要がある

高速道路には2人乗り禁止の区間もある

加えて、高速道路でも2人乗りは可能だが、上記のように、20歳未満や、普通自動二輪車免許または大型自動二輪免許を取って3年未満のライダーは、高速道路で2人乗りはできない。

ただし、たとえば、普通二輪免許を取得後に、大型二輪免許を取った場合。普通二輪免許を取って3年以上が経過していれば、大型二輪免許を取って3年以内でも、高速道路などで大型バイクに乗って2人乗りをすることは可能だ。

ちなみに、東京都心を通る首都高速道路、いわゆる首都高の一部には、2人乗り禁止区間がある。この区間は、上の条件をクリアしていたとしても、バイクで2人乗りはできないので注意しよう。

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首都高の一部には、2人乗り禁止区間がある
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首都高速道路の2人乗り禁止エリア(出展:首都高速道路ホームページ「首都高ドライバーズサイト」)

高速道路を走る前の準備

次に、高速道路を走行する前に、やっておきたい準備などについて、いくつか紹介しよう。

【準備1】タイヤの空気圧を確認
バイクを安全に走行するためには、まず、車両の点検が大切。これは、一般道を走行する際も同じだが、特に、速度域の高い高速道路では、もし車両のトラブルなどがあると重大な事故につながる可能性も高くなる。走る前には、しっかりと事前のチェックをしておきたい。

そして、車両のチェックのなかでも、特に、重要なのがタイヤの空気圧だ。きちんとメーカー指定値になっているかは必ず走行前にチェックしよう。

また、パンクしていたり、釘などが刺さったりしていないか、タイヤの状態を調べておくことも大切。もし、高速道路の走行中にパンクしたりすると、場合によっては死亡事故にも繋がり兼ねない、非常に危険な状況を招きやすいからだ。

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空気圧や表面の状態など、タイヤの点検は走行前にしっかりやりたい

【準備2】ヘルメットやウェアは安全性の高いものを選ぶ
バイクでの死亡事故には、頭部損傷が原因となることが多いため、高速道路の走行でもヘルメットは非常に重要だ。自分の頭のサイズに合っていることはもちろん、フルフェイスやジェットヘルメットなど、高速道路を走行する際に風の抵抗を考慮したデザインを採用するタイプが好ましいといえる。

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高速道路を走る際、ヘルメットはフルフェイスやジェットヘルメットなど、風の抵抗を考慮したデザインを採用するタイプを選ぶことをおすすめする
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ヘルメットはアゴ紐をしっかりと締めることも重要

また、ヘルメットには安全規格が設定されており、SG規格やJIS規格・PSCマーク・SNELL規格・FIM/MFJ公認などがある。ヘルメットを選ぶ際は、これら規格に適合したヘルメットを被るようにしよう。

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SG規格やJIS規格、PSCマーク、SNELL規格、FIM/MFJ公認など、安全規格に適合したヘルメットを被るのが大前提

加えて、速いスピードで走行する高速道路では、もし転倒した場合、頭部だけでなく、体にも大きなダメージを受ける危険性大。そのため、胸部プロテクターなどを装着するか、プロテクター入りのバイク用ジャケットを着用することもおすすめする。

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胸部プロテクターを装着するなども重要

【準備3】ETCカードの有効期限や挿入のチェック
高速道路を走行する場合、バイクにETC車載器を搭載していれば、料金所で停止しなくてもいいため便利だ。ただし、ちゃんと作動しないと、料金所でゲートが開かないなどのトラブルが起きるので注意したい。

そのため、走行前には、ETCカードが有効期限内なのかや、車載器にきちんと挿入しているか、車載器自体に故障などがないかなどをチェックしておこう。

【準備4】天候の状況も確認
大雨や雪など天気が悪いときは、視界不良になったり、道路がスリップしやすくなるなど、バイクにとって危険な状況が発生しやすくなる。

高速道路を利用する予定がある場合は、通行する予定の道路やエリアの天気を事前に確認し、現地の状況に応じつつ、慎重に運転することが大切だ。

特に、近年は、線状降水帯の発生により、いきなりゲリラ豪雨が降り、多大な被害を受けるケースも増えている。そんな時は、絶対に無理をせず、ツーリングの予定を変更するなど、命を優先に考える行動を取りたい。

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雨天など、天候が悪い日の高速道路は、バイクにとって危険な状況が発生しやすくなる

バイクで高速道路を走る際の6ポイント

次は、高速道路の走り方などで、主に初心者が注意したい6つのポイントを紹介しよう。

【ポイント1】合流に注意
IC(インターチェンジ)やSA(サービスエリア)、PA(パーキングエリア)から本線に合流する際は、特に注意が必要だ。合流車線で80km~100kmまでしっかりと加速し、本線の流れに上手く乗れるようにしよう。

また、合流時は、後方にぶつかりそうなクルマがないことを確認しつつ、必ず本線を走るクルマの後ろから本線に入るよう心掛けたい。本線を走行するクルマの前へ無理に入ると、接触事故などの原因となるため、特に注意が必要だ。

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合流車線でしっかりと加速するなど、本線への合流は注意点も多い

【ポイント2】基本は左側車線を走行
初心者ライダーのなかには、右側の追い越し車線を80km/h程度のゆっくりした速度で走行し続ける人もたまに見かける。

でも、そもそも、追い越し車線は、前のクルマを追い越す時に走行し、追い越し完了後は左の走行車線に戻ることが基本だ。

追い越し車線を長距離で走行し続けると、「通行帯違反」となり、捕まると2輪車の場合で反則点数1点、反則金6000円が課せられる。

また、追い越し車線をゆっくり走り続ける行為は、違反であるだけでなく、危険なあおり運転などを誘発することにもつながる。くれぐれも、うっかり追い越し車線を走行し続けることなどのないよう十分に注意したい。

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右側の追い越し車線を長い間走行し続けるのは違反

【ポイント3】十分な車間距離をとる
一般道よりも速度域が高い高速道路では、ブレーキをかけた時の制動距離も長くなるため、十分に車間距離を取ることも重要だ。一般的には、速度が80km/hの時は約80m、速度が100km/hの時は約100mの車間距離を取るべきとされている。

また、雨などで路面が濡れていたり、タイヤがすり減っている場合は、これらの約2倍程度の車間距離が必要ともいわれている。

高速道路には、適正な車間距離をキープする目安となる車間距離確認表示板などがあるから、こうしたものを使って車間距離をしっかりと取るように心掛けよう。

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車間距離確認表示板などで、常に先行車との車間距離を確認することも大切

【ポイント4】横風に注意
トンネルの出口や高い位置にある道路、橋など、高速道路には横風が強く吹きやすい場所も多い。特に、クルマと比べ車体が軽いバイクは、風の影響を受けやすく、あおられると車体が不安定になりがちだ。

高速道路で横風が強く吹く場所には、警告のための黄色い「横風注意」標識や「吹き流し」が設置されていることもある。そうした区間を走行する場合は、ギヤを1段落とすことで路面への駆動力を高めたり、ニーグリップを強めにするなどで、できるだけ横風を受けても車体が振られないような運転を心掛けよう。

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横風注意の標識などがある場所では、走り方も注意したい

【ポイント5】大型車の近くはできるだけ避ける
トラックやバスなどの大型車の真後ろを走ると、前方が見えにくくなる。特に、渋滞や事故などで前のクルマが急ブレーキを突然かけた場合、対応が遅れて追突してしまう可能性もあるので注意しよう。

また、追い越し車線を走り、走行車線を走る大型車の横を並走すると、たとえばトンネルの出口付近などで強い横風を受け、バイクの車体姿勢が不安定になることもある。特に、高速道路の走行に慣れていない初心者などは、できるだけ大型車には近づかないようにした方がいいだろう。

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トラックやバスなど大型車の近くを走るのは、できるだけ避けたい

【ポイント6】休憩はこまめに
高速道路は、体に走行風を受けたり、高速で走ることで長時間緊張が続くなどにより、意外に疲れがたまってしまうこともある。そこで、大切なのは、疲れてしまう前にSAやPAなどで、こまめに休憩を取ること。個人差もあるだろうが、一般的には100kmまたは1時間ごとに休む方がいいとされている。

休憩する際は、首や腰、肩や手指の関節をストレッチすると疲労が抜けやすくなるといわれている。また、夏場は熱中症の危険が増すため、休憩時はしっかりと水分補給もやっておきたい。

疲れてしまう前に、SAやPAなどでこまめに休憩を取ることも大切

マナーを守ることも大切

ちなみに、SAやPAに入り、バイクを駐車する際は、二輪車専用駐車場へ停めるようにしよう。高速道路のSAやPAは、さまざまなタイプの車両が休憩を取るため、たとえば、大型車用の場所に置くことなどは迷惑となる。なお、二輪車専用駐車場が空いていない場合は、その近くの邪魔にならない場所へ停めるようにするのがマナーだ。

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SAやPAでバイクを駐車する際は、二輪車専用駐車場へ停めるよう心がけたい

高速道路を走行する場合のマナーとしては、ほかにも、渋滞中や遅いクルマを抜くためなどに、すり抜けするのは危険。また、道路が混んでいるからといって、路側帯を走るのはマナーが悪いだけでなく、交通違反となる。もし捕まると、2輪車の場合で、反則点数2点、反則金7000円を科せられるので注意したい。

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高速道路でもすり抜けは危険
路側帯を走るのはマナーが悪いだけでなく、交通違反となる

このように、高速道路での走行には意外に注意点も多い。だが、上手く使いこなせば、ツーリングなどで、スムーズで楽に、しかも短時間でより遠くの目的地へ行ける。高速道路の初心者は、ぜひマスターして、楽しく安全なバイク旅を満喫して頂きたい。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…