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電制サスペンションを新たに投入/マシン解説
4年ぶりにマイナーチェンジを受けた「スピードトリプル1200RS」の2025年モデルが登場した。2眼ヘッドライトや片持ちスイングアームなど30年来受け継いできた伝統を受け継ぎつつ、中身が大幅に進化しているのがポイントだ。注目は1160ccの水冷3気筒エンジン。最高出力は183馬力(+3ps)、最大トルクは128Nm(+3Nm)と数値で見てもパワフルだが、トルクの発生回転数が下がったことで、街乗りから高速域まで扱いやすさも増している。
電子制御も最先端だ。6軸IMUによるコーナリングABSやトラクションコントロール、エンジンブレーキ制御などが安瀬確実にライダーの走りをサポート。さらに、リアタイヤのスライドを許容しながらABSを調整する「ブレーキスライドアシスト」や、急減速時にブレーキランプを点滅させる「緊急減速警告」も新たに搭載された。
足まわりにも抜かりはない。目玉は新たに採用されたオーリンズ製の電子制御サスペンションで、走行モードや路面に応じて減衰力を自動調整し、快適さと安定感を両立。ブレンボ製キャリパー、軽量ホイール、公道OKのピレリ製スーパースポーツタイヤなど、装備面も3気筒ロードスターのフラッグシップにふさわしい充実度。新型スピードトリプルは最新テクノロジーと高性能パーツを惜しみなく詰め込んだ、まさにトライアンフ流“大人の本気バイク”である。
エンジンも走りも一段と洗練された
試乗インプレッション
ぱっと見では従来モデルと大きく変わらないが、それが英国・トライアンフの流儀。伝統を重んじるブランドだけにデザインを劇的に変えず、熟成によって進化を感じさせてくる。だが跨った瞬間、微妙にワイドになったハンドルバーやライポジの変化で、よりファイター然とした構えに気づく。メインスイッチをONにすると、TFTディスプレイが華やかに立ち上がり、固まっていた“足”が自重で沈み込んで車高がスッと下がることで「ああ、これが電制サスか」と気付く。足着きも良くなった感じだ。
エンジンは俊敏かつ軽やかで、従来よりもわずかにパワーとトルクが増加。回転フィールも一段と洗練され、2世代前までの“ゴリゴリした荒々しさ”は影を潜めた。しかし、3気筒ならではの分厚い低中速トルクによる力強い加速力はむしろ増しており、どの回転域でも躍動感に満ちている。ブレンボ製の前後ブレーキも健在で、強力な制動力を保ちつつ、指一本でコントロールできる繊細さが素晴らしい。さらにMCS(マルチクリックシステム)付きのブレーキレバーが秀逸で、スパンだけでなくレバー比も調整できるため、手の大きさや好みに応じたタッチ感が得られるのも嬉しい。
5つのライディングモードは走行中にも左手スイッチで簡単に切り替え可能。例えば市街地では「レイン」を選べば穏やかにクルージングでき、最強の「トラック」ではサーキット仕様のアグレッシブな特性に変化。クイックシフターも装備されており、発進・停止以外ではクラッチ操作がほぼ不要だ。さらに、コーナリング対応のABSとトラコンがライダーをしっかりサポートしてくれるので、路面状況が悪くても精神的に余裕を持って走れるのが大きな安心感に繋がる。特設会場なので性能を引き出すまではいかないが、素性の良さは分かった。
コーナリング中の安定感が段違い
なかでも注目すべきは新搭載の「スマートEC3.0」だ。ライダーがメニュー画面から細かく設定できるだけでなく、バイク自身が走行状況をリアルタイムでモニタリングし、最適な減衰力に自動調整してくれるセミアクティブ方式。これにより加速・減速時の車体姿勢の変化も穏やかで、ギャップを越えたときの突き上げ感も大幅に軽減。乗り心地はまるで別物のように上質になっている。
実は後日、同じマシンをサーキットでもテストする機会があったが、以前は気になっていた路面の凹凸が、新型ではまったく気にならなかった。これまでならバンク中に車体を少し立て直してギャップを受け流していた場面でも、新型では深いリーンを保ったまま、何事もなかったように通過できる。まるで「大丈夫、任せて」とマシンが語りかけてくるようで、結果としてライダーの緊張がほぐれ、走りに集中できる。これは走行ペースや疲労低減にも直結する重要なポイントだ。
今回のRSは、先代ではRRにしか与えられていなかった電子制御サスを、よりカジュアルなRSに搭載した点が特に大きい。これにより快適性とコーナリング性能が格段に向上し、日常からスポーツ走行まで対応力が飛躍的に高まった。今流行りのウイングなど派手なエアロデバイスは備えていないが、このバイクは間違いなくトップレベルの実力を秘めている。そして何より、ライバル車と比較してもコストパフォーマンスの高さが大きな魅力になっていると思う。
駐車場を利用した特設会場ということで、持てる性能のほんの一部しか使えていないが、3気筒独特のサウンドや図太いトルク、軽快なフットワークを体験できた。

スタイリング解説
トリプル系ロードスターシリーズの頂上モデルに相応しい迫力と高級感のあるデザイン。トライアンフらしい端正なフォルムが印象的だ。従来型とひと目で分かる違いは、ホイールデザインとサイレンサーが短くコンパクトになったこと。






ライポジ解説
ハンドルが近く上体が軽く前傾した幅広い乗り方に対応できるライポジ。バンク角を稼ぐためステップ位置はけっこう高めだ。シート高830㎜だが電制サスペンションにより足着きは向上。200kgを切る軽量な車体は取り回しもしやすい。
ライダー身長179cm、体重73kg。
ディテール解説













スピードトリプル1200RS 主要諸元
エンジンタイプ:水冷・DOHC・12バルブ・直列3気筒
総排気量:1160cc
内径×行程:90.0mm × 60.8 \mm
圧縮比:13.2 : 1
最高出力:183PS / 180.5bhp(134.6kW) @10,750rpm
最大トルク:128Nm @8,750rpm
燃料供給方式:マルチポイント・シーケンシャル電子燃料噴射(電子スロットル制御付き)
排気システム:ステンレス製3-in-1ヘッダー+アンダースリング型プライマリサイレンサー+サイドマウント型セカンダリサイレンサー
最終駆動方式:Xリングチェーン
クラッチ:湿式多板クラッチ(スリップ&アシスト機構付き)
変速機:6速リターン式
フレーム:アルミニウム製ツインスパーフレーム(ボルトオン式アルミリアサブフレーム)
スイングアーム:アルミ製片持ち式スイングアーム(シングルサイド)
前ホイール:キャストアルミホイール 17 × 3.50インチ
後ホイール:キャストアルミホイール 17 × 6.00インチ
フロントタイヤ:ピレリ ディアブロ スーパーコルサ SP V3 120/70ZR17 58W
リアタイヤ:ピレリ ディアブロ スーパーコルサ SP V3 190/55ZR17 75W
フロントサスペンション:Öhlins(オーリンズ)製43mm倒立(USD)フルアジャスタブルフォーク/電子制御コンプレッション/リバウンドダンピング(SmartEC 3.0 OBTi)ストローク:120mm
リアサスペンション:Öhlins(オーリンズ)製モノショック(リンク式・RSU)/電子制御コンプレッション/リバウンドダンピング(SmartEC 3.0 OBTi)
ホイールトラベル:120mm
フロントブレーキ:320mmフローティングダブルディスク、Brembo(ブレンボ)Stylema モノブロックキャリパー、Brembo MCS ラジアルマスターシリンダー、OC-ABS搭載
リアブレーキ:220mmシングルディスク ブレンボ製ツインピストンキャリパー OC-ABS搭載
メーター:フルカラー 5インチ TFTディスプレイ
全幅(ハンドルバー):810mm
全高(ミラー除く):1,085mm
シート高:830mm
ホイールベース:1,445mm
キャスター角(レーキ):23.9°
トレール量:104.7mm
車両重量(装備重量):199kg(燃料・オイル含む)
燃料タンク容量:15.5L
サービス間隔:10,000マイル(16,000 km)/12か月(いずれか早い方)
および2年間のメーカー保証が標準装備
燃費:5.5リットル/100km(51.4 mpg)
排出量:127g/km ユーロ5+
CO2排出量および燃費データは、規制168/2013/ECに基づいて測定されています。
燃費データは特定の試験条件に基づいて算出されたものであり、比較のみを目的としています。
実際の運転結果を反映していない可能性があります。