「追い越し」と「追い抜き」、バイクが左から抜くと違反になるのはどっち?

バイクが前を走るクルマなどの車両を抜く際、「追い越し」と「追い抜き」では、違反になるか否かが変わるケースもあることをご存じだろう? また、渋滞路などで、バイクがクルマの間を「すり抜ける」行為も、よく違反か否かが話題となる。では、実際に、これらの行為は道路交通法などでどんなルールが定められているのか? 

REPORT●平塚直樹
PHOTO●平塚直樹、写真AC
*写真はすべてイメージです

「追い越し」は進路変更後に抜く行為

まずは、追い越しについて。これは、ウインカーを出して進路を変更してから前を走る車両を抜く行為のことをいう。

追い越しの方法については、道路交通法第28条に以下のような規定がある。

「車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両の右側を通行しなければならない」

この規定により、前を走る遅い車両などを追い越す際は、その車両の右側を通行する必要がある。もし前車を左側から追い越した場合は「追越し違反」として検挙される可能性があり、適用されると以下の違反点数や反則金を科せられる。

【追越し違反の違反点数・反則金】
・違反点数:2点
・反則金:二輪車7000円、原付車6000円(普通車9000円、大型車1万2000円)

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「追い越し」はウインカーを出して進路を変更してから前を走る車両を追い越す行為

進路変更しないのが「追い抜き」

一方の「追い抜き」。こちらは、進路変更をしないまま前を走る車両の前方に出る行為のことをいう。基本的にウインカーは出さないし、車線を変更することもない。

つまり、「追い越し」と「追い抜き」では、「車線変更を伴うか否か」という点に大きな違いがあるといえる。そのため、どちらを行い前の車両を抜いたかで、違反になるか否かのケースが変わってくることがある。

たとえば、高速道路や広い幹線道路など2車線以上ある道路で、左車線を走る遅いクルマなどを抜く場合。後ろを走るバイクが一度右の車線に車線変更した後、遅いクルマを右側から抜き、また左の車線に戻るのは通常の「追い越し」となり、制限速度を守ってさえいれば違反にならない。

また、バイクが左車線、前のクルマが右車線を走っている場合に、バイクが左車線をキープしたまま右車線を走る遅いクルマに追いついて抜くのは「追い抜き」。このケースでも、バイクが制限速度を守っていれば違反にならないといえる。

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高速道路など2車線以上ある道路で、バイクが左車線をキープしたまま右車線を走る遅いクルマに追いついて抜くのは「追い抜き」

ただし、右車線の前を走るクルマなどを抜く際はちょっと注意が必要だ。同じ右車線を走るバイクが、一度左車線へ車線変更した後、遅い前車を左側から抜くと「追越し違反」とみなされる場合がある。実際に、筆者の知人もこのパターンで白バイに捕まったそうで、違反キップを切られ、前述のような反則点数と反則金を科せられたという。

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右車線を走るバイクが、一度左車線へ車線変更した後、右車線の遅い前車を左側から抜くと「追越し違反」とみなされる場合がある

このように、前車を左側から抜く際に違反となるか否かは、直前に進路変更をしているかどうかがポイントとなる。最初から左車線を走行していて右車線の遅い車両を追い抜いただけでは危険行為とみなされる可能性は低く、違反には当たらないことが一般的だといえる(もちろん制限速度を守っていることが大前提だが)。

バイクの「すり抜け」は違反になるか?

では、いわゆる「すり抜け」はどうだろうか? たとえば、渋滞路などで、バイクが同一車線内で止まっている(またはのろのろと低速で動く)クルマの列を左側から抜いていく場合だ。

こうしたケースも、車線変更をしていなければ、左からの追い抜きに該当し、それ自体が違反になるわけではないというのが一般的な解釈のようだ。ただし、危険なことには変わりなく、事故を起こしてしまった場合は安全運転義務違反になってしまうこともありえる。その場合、反則点数や反則金は以下の通りだ。

【安全運転義務違反の違反点数や反則金】
・違反点数:2点
・反則金:二輪車7000円、原付車6000円(普通車9000円、大型車1万2000円)

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すり抜けは危険なことには変わりなく、事故を起こしてしまった場合は安全運転義務違反になる可能性がある

「路側帯」をすり抜けで走るのは違反

また、クルマの左側をすり抜ける際、歩道のない道路で一番左にある白線の外側にある「路側帯」を通行するのも違反だ。こうした路側帯は歩行者優先で、道路交通法第17条第1項により原付を含めたバイクやクルマの通行は禁止。もし捕まると「通行区分違反」となり、以下の反則点数や反則金を科せられる。

【通行区分違反の反則点数や反則金】
・反則点数:2点
・反則金:二輪車7000円、原付車6000円(普通車9000円、大型車1万2000円)

ちなみに、道路脇に歩道がある場合はいわゆる「路肩」となる。これは、道路の主要な構造物を保護するために設けられているもので、道路交通法上でバイクの走行は禁止されていない(車両制限令によりクルマは禁止)。ただし、たとえば、車両の合間をS字ですり抜けたり、左右の車線を駆使しすり抜ける場合などは「左側追越し禁止」の原則に違反する可能性もあり、取り締まられる可能性はある。また、そもそも歩道があるとはいえ、路肩には歩行者がいる場合もあり、それを考慮すると積極的に走行するのは控えた方がいいといえる。

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路肩は歩行者がいる場合もあり、積極的に走行するのは控えた方がいい

なお、よく高速道路では「路肩を走ると違反」といわれるが、実は道路交通法上では「路側帯」に該当する。基本的に、高速道路上で歩行者は歩いていないものの、一番左側の白線外側は緊急事態に対応するためのエリアということで、クルマはもちろん、バイクも走行禁止。走行すると通行区分違反となる。

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高速道路の路側帯は通行禁止

さらに、道路の左端に「自転車専用」と書かれたブルーの通行帯は「自転車専用通行帯」。いわゆる自転車レーンと呼ばれるもので、走行できるのは基本的に自転車のみ。バイクやクルマは通行禁止だ。この場合も、もし走行して捕まると、前述の通行区分違反が適用され、反則点数や反則金も同様となる。

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自転車専用通行帯もバイクやクルマは通行禁止

ちなみに、追い越しについては、黄色の実線でセンターラインが引かれている場合、追い越しのために車線をはみ出すのは違反になるなど、ほかにも決まりが多々あるのはご存じの通りだ。

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黄色の実線でセンターラインが引かれている場合、追い越しのために車線をはみ出すのは違反

ともあれ、追い越しや追い抜き、すり抜けでは、それぞれ違いもあり、違反になるか否かもケースによってさまざま。ただし、いずれも、十分に安全を確保して走ることが大前提なのは確かだ。自分の体やバイクはもちろん、歩行者や周りの車両へ気を配り、危険が及ばないようなクレバーな走りを常に心がけたいものだ。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…