身長153cmとヤマハMT-07の相性。|688ccネイキッド、MT-07の足着き性を検証。WILD WING厚底ブーツの効果は?

小柄なライダーが大型バイクと向き合ったとき、気になってしまう足着き性。ヤマハのMT-07の場合はどうだろうか。そして、足着き性を高めるブーツを履いた場合の操作性とは……。足着き性にフォーカスした、MT-07の印象をお届けする。

REPORT●伊藤英里(ITO Eri)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハ・MT-07 ABS……814,000円(消費税10%込み)

 今回は、ヤマハのMT-07の足着き性に焦点を当てていく。MT-07は688ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒エンジンを搭載するバイクである。車両重量は184kgと控えめながら、大型バイクらしい車格を持っている。身長153cm、体重42kgの筆者からすると、向き合ったときにその車格には少し圧倒されるものがある。タンク自体が横に大きいために余計にサイズを感じてしまうようだった。
 
 では、足着き性についてじっくり見ていこう。MT-07のシート高は805mm。実際にまたがってみたところ、両足を着こうとすると、ぎりぎり靴の先が着く程度。とてもじゃないが、踏ん張れない。そんな足着きでも車体の横幅が細身で、足が横に広がってしまい足着きを悪くするということはない、という点は好印象なのだが、惜しむらくはステップ位置が足を下ろしたちょうど先にあるというところ。といってもこれはMT-07に限ったことではなく、多くのネイキッドバイクで小柄なライダーの足着きに干渉する部分だったりもする。というわけで、走行時は、腰を左右どちらかにずらして停止するのがベターだろう。MT-07のシートは比較的広めだが、摩擦で腰をずらしにくい、ということはあまりなさそうだ。筆者の身長で、この足着き性でも乗りこなすことはできるだろうと思えた。
 
 ライディングポジションについては、ハンドル位置、ステップ位置がやや遠く感じる。ステップ位置は操作に影響がない程度。ただ、2021年のマイナーチェンジで左右幅が32mm広くなったというハンドルは、筆者の体格からすれば少し横幅が広めで、たとえば高速道路を長時間にわたって走行する場合は肩や腕に疲労がたまりやすいだろうと感じた。一方でこのハンドル、非常に軽くて操作がしやすい。取り回しに至っても、ハンドルを完全に切ったときに反対側の腕が突っ張ることもなかった。こうしたメリットを含めて考えれば、ある程度の幅広さは納得してしかるべきかもしれない。

ライディングポジションをとると、ややハンドルの横幅が広く、ステップの位置が遠く感じられた

 では、厚底のライディングブーツを履いた場合はどうだろうか。今回は、WING GLOVE(ウィングローブ)が展開するブランド、WILD WINGの1.7cm厚底ブーツ『厚底ファルコンWWM-0001ATU』を履いて足着き性と実際の操作性についても検証した。
 
 まずは足着き性。1.7cmの恩恵により、爪先が着く程度に足着き性が向上した。靴の底が地面に触れていて、自分の足の感覚としては少し遠いために「飛躍的に足着きがよくなった」という印象は、そこまで大きくはない。ただ、靴のほんの先が着いている状態から爪先が着いている、という状態に改善されていることは実感できる。この差は大きい。
 
 厚底ブーツによって足着きは改善されたものの力を入れられないため、基本的には左右どちらかに腰をずらして停止することを前提にするのがベターという状態。ただ、不測の事態にどちらの足でもなんとか地面に着く、という安心感がプラスされることは間違いない。また、ソール部分がよくグリップするので、184kgの車体を取り回す際に、厚底ブーツを履いた状態の方が動かしやすくなる、という予想外のメリットもあった。これは細かいようで意外にありがたい部分で、足着き性とともに、バイクをさらに楽に扱える要素になると感じている。

WILD WING『厚底ファルコンWWM-0001ATU』。1.7cmの厚底ブーツだ
足の裏の感触として劇的に足着きがよくなった! という感じではない。ただ、安心感は確かにある
通常のライディングブーツだとほぼバレリーナ状態
1.7cmの厚底ブーツの場合(右)、地面に足が着いている
足着きがよくなれば不安も減る。停止時の心配事が減って自信を持って走れる
踏ん張りがきくソールはWING GLOVEのオリジナル。取り回しがすごく楽にできた

 そこで気になるのが、この厚底ブーツの操作性である。足着き性が向上しても、バイクの操作性が損なわれてしまっては、それはまた別のストレスや危険を生んでしまう。厚底ブーツを履いてしばらくMT-07を走らせていると、リヤブレーキの操作についてはノーマルのペダルのポジションで問題はなさそうだった。厚底によってリヤブレーキを意図せずかけてしまい引きずっていたり、それを回避するために少し足首を上にキープしなければならない、ということもなかった。もちろんこれはライダーのくせによって異なる部分なので、各人で確認が必要だろう。
 
 一方、シフトチェンジ、特にシフトアップである。シフトアップ時、チェンジペダルの下に左足を入れるのにいつもより大きめの動作が必要だった。つまり、無意識にいつもの足首の動作を行うとチェンジペダルの下に足が入らず、シフトアップしそこねてしまったのだ。これは最初のうちは意識付けが必要な部分だろう。ただ、チェンジペダルの下に足がまったく入らなかったり、危険を感じるような操作につながることはなかった。確かに、もしもきびきびとした素早いシフトチェンジを望むならば、それはこの厚底ブーツを履いた状態では難しいだろう。ただ、足着きがよくなり、不安要素が減るというメリットと相殺で考えるならば、道具に頼ることもまた、バイクを楽しむ上での安全性を高める手段だと筆者は思う。

斜めにカットされたヒールは、ステップに合わせると爪先が前を向くように設計されている
大ぶりなベルクロで結んだ後の靴紐を留めるようになっている。ファスナーによって着脱も簡単
最初こそ何度かシフトチェンジミスをしたが、慣れると操作に大きな影響は感じなかった

 最後になるが、MT-07自体の走りの印象を見ていこう。走り出すと、700cc近い排気量のバイクらしい加速感に爽快感を感じるとともに、その扱いやすさに驚いた。まず、低速のトルクがしっかりしているから、低速域で不安定さを感じない。スロットルを操作したときにそのパワーを感じられる一方で、出方がとてもスムーズかつ優しいからだ。すごく乗りやすい、というのが第一印象で、その印象は最後まで裏切られることはなかった。ライディングポジションを考えたときに幅広く感じたハンドルはとても軽快。小回りのよさにこれまた驚く。ライディングスキルが決して高い方ではない筆者にとって、狭い路地のシビアな曲がり角は少し緊張することもあるのだが、MT-07ではそんなこともなかった。バイクが行きたい方向に自然に行ってくれる。頼もしさを感じるばかりだった。
 
 少しスポーツ寄りの走りをしてみると、車体が軽く感じる。サーキットで走行したわけではないので想像の範囲になるが、ある程度のスピードに乗せて走れば、さらに軽快さを感じられそうだ。正直なところ、街乗りでスロットルレスポンスについては少しリニアに感じていたが、ほんの少しスポーツライディングのような走りをして、その意味がわかる。リニアなエンジンの反応が車体の動きとマッチしていた。さらに、エンジンブレーキが利きすぎない点もポイント。すべてがライダーに親しみやすく、それでいて走り込む喜びを堪能できる。

しっかりメリハリのある走りに切り替えると、戦闘モードが顔を出す。軽快な車体の動き、パワフルでありながらフレンドリーな力強さで気持ちよく走れる

 ネイキッドのよさをしっかりと持ちながらも、スポーツライディングも楽しめる。フレンドリーでありながら、鋭い走り味をも持っている。MT-07はそんな万能ストリートスポーツだ。

主要諸元

全長/全幅/全高:2,085mm/780mm/1,105mm
シート高:805mm
軸間距離:1,400mm
最低地上高:140mm
車両重量:184kg
エンジン:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ 直列2気筒
総排気量:688cm3
内径×行程:80.0mm×68.5mm
圧縮比:11.5 : 1
最高出力:54kW(73PS)/8,750r/min
最大トルク:67N・m(6.8kgf・m)/6,500r/min
燃料タンク容量:13L
タイヤサイズ(前/後):120/70ZR17M/C (58W)(チューブレス)/ 180/55ZR17M/C (73W)(チューブレス)
制動装置形式(前/後):油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ

メーカー希望小売価格:814,000円(消費税10%込み)

著者プロフィール

伊藤英里 近影

伊藤英里