今や希少な存在の250ccビッグスクーター、ヤマハ新型XMAX。NMAX/155とも乗り比べて感じた美点アレコレ

近年の日本のスクーター市場の主力は原付二種、そして原付二種と基本設計を共有する150~180ccクラスである。とはいえ、ヤマハが展開するMAXシリーズの中軸を担うXMAXの最新型を体感した筆者は、250ccならではの守備範囲の広さに大いに感心することとなった。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハXMAX ABS……737,000円

パッと見の雰囲気は2023~2024年型と同様だが、2025年型XMAXは電動スクリーンや約800gの軽量化を図った新作マフラー、構成を改めたTFT+LCDメーターを採用。

昨今では少数派の250ccスクーター

1990年代中盤~2000年代は250ccが大人気を獲得していたものの、現在の日本市場のスクーターは125ccが主力である。事実、最近の僕が試乗したスクーターは原付二種、あるいは原付二種と基本設計を共有する150~180ccクラスがほとんどで、軽二輪クラスの排気量上限となる250ccスクーターはわずかしか体験していない。

そんな僕が、2025年型で仕様変更を受けたXMAXにどんな第一印象を抱いたかと言うと、デカくて重い……だった。その背景には、直前にNMAX(125)/155を試乗したという事情があるのかもしれないが、ここ最近は250ccスクーターとの縁が薄くなっている身としては、XMAXの車格はちょっとハードルが高かったのだ。

日本では4機種を展開するMAXシリーズ

本題に入る前に大前提の話をしておくと、近年のヤマハが展開しているスポーツスクーターのMAXシリーズには、125/155ccのNMAX、250/300ccのXMAX、560ccのTMAXが存在し、日本で販売されている4車の重量・ホイールベース・シート高は以下の通り。

NMAX(125)…132kg・1340mm・770mm

NMAX155………135kg・1340mm・770mm

XMAX(250)…183kg・1540mm・795mm

TMAX560………218kg・1575mm・800mm

各車の数値を見ていただければわかるように、XMAXの車体寸法は、NMAXとTMAX560の中間ではなく、TMAX560寄りなのだ。もっとも近年の250ccスクーターの基準で考えれば、XMAXは決して大柄ではない。ライバル勢の数値は、ホンダ・フォルツァ(250):186kg・1510mm・780mm、キムコXタウンCT250:194kg・1500mm・790mm、SYMジョイマックスZ250:184kg・1546mm・747mmなのだから。そういった事実を考えると、僕のようにXMAXの車格に大きさや重さ感じるライダーは、世間では少数派なのかもしれない。

車格はTMAX寄りだが、価格はNMAX寄り?

2025年型で仕様変更を行ったXMAXに関して、ヤマハの広報資料に記された従来型との主な相違点は、①内部構造の見直しで800gの軽量化を図ったマフラー、②ボルトの差し替えによる2段階調整式→無段階の電動調整式に変更したスクリーン、③4.2インチTFTと3.2インチLCDを左右に並べた新作メーターの3点。ただし、アジャスト式ハンドルの標準位置を約20mmライダー寄りにしたり、コクピット周辺のボルトをブラックで統一したり、フットレストカバー裏面に経年変化を考慮した対策を施したりと、改良点は多岐に及んでいる。

シリーズ初となる電動スクリーンの可動範囲は100mm。陰影を強調するクリスタルグラファイトでペイントされたステーはアルミダイキャスト製。

そんな2025年型XMAXの価格は、従来型+2万3000円となる73万7000円で、改良点を考えれば約3%の値上げに異論を述べる人はあまりいないだろう。なお他のMAXシリーズは、TMAX560:140万8000円、同テックマックス:164万4500円、NMAX155:42万3500円、NMAX(125):37万9500円だから、車体寸法とは異なり、XMAXの価格はNMAX寄りである。

250ccならではの余裕を実感

冒頭で述べた“デカくて重い”という印象が消えたわけではない。とはいえ、XMAXを駆っていろいろな場面を走った僕は、原付二種とその兄貴分とは一線を画する、250ccスクーターの美点をしみじみ実感することとなった。具体的な話をするなら、混雑した市街地やチマチマした住宅街は、やっぱりNMAX(125)/155のほうが扱いやすいのだけれど、流れのいい幹線道路や高速道路では、XMAXのほうが明らかに優勢だったのだ。

僕がそう感じた一番の原因はエンジンのパワフルさだが(最高出力は、XMAX:23ps/7000rpm、NMAX155:15ps/8000rpm)、長めのホイールベースや大径タイヤ(XMAX:15/14インチ、NMAX:前後13インチ)、一般的なモーターサイクルと同様にフォークをアッパー+アンダーブラケットで支持するフロントサスペンション(NMAXは昔ながらのスクーターの通例に従い、アンダーブラケットのみで支持)などの効果で、絶大な安定感が味わえることも、XMAXの魅力だろう。

ちなみに、過去にNMAX155で高速道路で走った僕は、100km/h巡航が可能な性能を認識して、これで十分じゃないか?と感じたのだが、今回の試乗では250ccならではの余裕を認識。短距離の移動ではなく、ある程度以上の距離を走るなら、120km/h巡航が楽勝で、追い越しがイージーで、さらには2025年型から電動スクリーンを採用した、XMAXのほうが格段に快適なのだ。

そんなわけで、XMAXの走りに大いに感心した僕だが、ここまでに述べた美点の多くは他メーカーの250ccスクーターにも通じる話である。では同じ排気量帯のライバル勢と比較した場合、XMAXがどんな美点を備えているかと言うと……、それはやっぱり、MAXシリーズならではのスポーツ性が存分に味わえることだと思う。

もちろんこの件については、同条件でライバル勢との比較をしないと断言はできないのだが、XMAXはライダーがソノ気になったときの反応が絶妙で、加速と減速とコーナリングがとにかく楽しい。そういった操る手応えに、僕はNMAXやTMAXと同じ資質を感じたのだ。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

かつてのヤマハが販売した250ccスクーター、マジェスティやマグザムの乗車姿勢が快適&安定指向だったのに対して、XMAXはスポーツ性を重視。もっともシート高は795mmで、サイドカバーの左右への張り出しが大きいので、身長が170cm以下のライダーは足つき性に不安を感じるだろう。そしてそういった問題を解決するため、ヤマハの純正アクセサリーパーツを販売するワイズギアでは、着座位置が約40mm低くなるローダウンシート:4万2350円を準備。

ディティール解説

ヘッドライトのロービームとポジションランプはX型で発光。ハイビームは中央下部に備わる。電動式スクリーンとのバランスを考慮して、ウインカーカバーやスポイラーは形状を刷新。
ブレーキをかけたときのみだが、ヘッドライト&ポジションランプと同様に、テール&ストップランプもX型で発光する。なおリアウインカーはテール&ストップランプ内にビルトイン。
イグニッションはスマート式。リッド付きのフロントインナーポケット(左側のみに設置)の内部には、USBタイプC電源を装備。
スマホとの連携機能を備えるLCD+TFTメーターは、構成を上下→左右に変更。TFT画面には、Garmin社のナビが表示できる。
 
シートの座り心地は至って良好。フラットな座面がきっちり確保されているので、ワインディングロードでは体重移動が行いやすい。
ヘルメット×2、あるいは、ヘルメット+A4サイズのビジネスバッグを想定したシート下のトランクスペースは、45ℓの容量を確保。
 
運動性能と環境性能の両立を目指した水冷OHC4バルブ単気筒のBLUE COREエンジンは、DiASilシリンダーやアルミ鍛造ピストンを採用。クランクシャフトは、単気筒では珍しいプレーンメタル支持の一体鍛造。
エンドキャップは異形だが、約800gの軽量化が行われたマフラーは真円に近い形状(従来型は楕円型)。また、従来型では黒一色だったマフラーカバーは、ブラックとクリスタルグラファイトのツートーンとなった。
フロントフォークはφ33mm正立式、リアアサスはツインショックで、前後ホイールトラベルは110/79mm。フロントブレーキはφ267mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー。
リアブレーキはφ245mmディスク+片押し式1ピストンキャリパー。タイヤサイズはF:120/70-15・R:140/70-14で、純正指定品はダンロップ・スクートスマート。

主要諸元

車名:XMAX ABS

型式:8BK-SG8J

全長×全幅×全高:2180mm×1410~1505mm

軸間距離:1540mm

最低地上高:135mm

シート高:795mm

キャスター/トレール:26°30′/95mm

エンジン形式:水冷4ストローク単気筒

弁形式:OHC4バルブ

総排気量:249cc 

内径×行程:70mm×64.9mm

圧縮比:10.5

最高出力:17kW(23ps)/7000rpm 

最大トルク:24N・m(2.4kgf・m)/7000rpm

始動方式:セルフスターター

点火方式:フルトランジスタ

潤滑方式:ウェットサンプ

燃料供給方式:フューエルインジェクション

トランスミッション形式:Vベルト式無段変速

フレーム形式:バックボーン

懸架方式前:テレスコピック正立式φ33mm

懸架方式後:ユニットスイング式 ツインショック

タイヤサイズ前:120/70-15

タイヤサイズ後:140/70-14

ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク

ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク

車両重量:183kg

使用燃料:無鉛レギュラーガソリン

燃料タンク容量:13L

乗車定員:2名

燃料消費率国交省届出値:41.7km/L(2名乗車時)

燃料消費率WMTCモード値:33.5km/L(1名乗車時)


キーワードで検索する

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…