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ヤマハXMAX ABS……737,000円

昨今では少数派の250ccスクーター
1990年代中盤~2000年代は250ccが大人気を獲得していたものの、現在の日本市場のスクーターは125ccが主力である。事実、最近の僕が試乗したスクーターは原付二種、あるいは原付二種と基本設計を共有する150~180ccクラスがほとんどで、軽二輪クラスの排気量上限となる250ccスクーターはわずかしか体験していない。

そんな僕が、2025年型で仕様変更を受けたXMAXにどんな第一印象を抱いたかと言うと、デカくて重い……だった。その背景には、直前にNMAX(125)/155を試乗したという事情があるのかもしれないが、ここ最近は250ccスクーターとの縁が薄くなっている身としては、XMAXの車格はちょっとハードルが高かったのだ。

日本では4機種を展開するMAXシリーズ
本題に入る前に大前提の話をしておくと、近年のヤマハが展開しているスポーツスクーターのMAXシリーズには、125/155ccのNMAX、250/300ccのXMAX、560ccのTMAXが存在し、日本で販売されている4車の重量・ホイールベース・シート高は以下の通り。

NMAX(125)…132kg・1340mm・770mm
NMAX155………135kg・1340mm・770mm
XMAX(250)…183kg・1540mm・795mm
TMAX560………218kg・1575mm・800mm
各車の数値を見ていただければわかるように、XMAXの車体寸法は、NMAXとTMAX560の中間ではなく、TMAX560寄りなのだ。もっとも近年の250ccスクーターの基準で考えれば、XMAXは決して大柄ではない。ライバル勢の数値は、ホンダ・フォルツァ(250):186kg・1510mm・780mm、キムコXタウンCT250:194kg・1500mm・790mm、SYMジョイマックスZ250:184kg・1546mm・747mmなのだから。そういった事実を考えると、僕のようにXMAXの車格に大きさや重さ感じるライダーは、世間では少数派なのかもしれない。

車格はTMAX寄りだが、価格はNMAX寄り?
2025年型で仕様変更を行ったXMAXに関して、ヤマハの広報資料に記された従来型との主な相違点は、①内部構造の見直しで800gの軽量化を図ったマフラー、②ボルトの差し替えによる2段階調整式→無段階の電動調整式に変更したスクリーン、③4.2インチTFTと3.2インチLCDを左右に並べた新作メーターの3点。ただし、アジャスト式ハンドルの標準位置を約20mmライダー寄りにしたり、コクピット周辺のボルトをブラックで統一したり、フットレストカバー裏面に経年変化を考慮した対策を施したりと、改良点は多岐に及んでいる。

そんな2025年型XMAXの価格は、従来型+2万3000円となる73万7000円で、改良点を考えれば約3%の値上げに異論を述べる人はあまりいないだろう。なお他のMAXシリーズは、TMAX560:140万8000円、同テックマックス:164万4500円、NMAX155:42万3500円、NMAX(125):37万9500円だから、車体寸法とは異なり、XMAXの価格はNMAX寄りである。

250ccならではの余裕を実感
冒頭で述べた“デカくて重い”という印象が消えたわけではない。とはいえ、XMAXを駆っていろいろな場面を走った僕は、原付二種とその兄貴分とは一線を画する、250ccスクーターの美点をしみじみ実感することとなった。具体的な話をするなら、混雑した市街地やチマチマした住宅街は、やっぱりNMAX(125)/155のほうが扱いやすいのだけれど、流れのいい幹線道路や高速道路では、XMAXのほうが明らかに優勢だったのだ。

僕がそう感じた一番の原因はエンジンのパワフルさだが(最高出力は、XMAX:23ps/7000rpm、NMAX155:15ps/8000rpm)、長めのホイールベースや大径タイヤ(XMAX:15/14インチ、NMAX:前後13インチ)、一般的なモーターサイクルと同様にフォークをアッパー+アンダーブラケットで支持するフロントサスペンション(NMAXは昔ながらのスクーターの通例に従い、アンダーブラケットのみで支持)などの効果で、絶大な安定感が味わえることも、XMAXの魅力だろう。

ちなみに、過去にNMAX155で高速道路で走った僕は、100km/h巡航が可能な性能を認識して、これで十分じゃないか?と感じたのだが、今回の試乗では250ccならではの余裕を認識。短距離の移動ではなく、ある程度以上の距離を走るなら、120km/h巡航が楽勝で、追い越しがイージーで、さらには2025年型から電動スクリーンを採用した、XMAXのほうが格段に快適なのだ。

そんなわけで、XMAXの走りに大いに感心した僕だが、ここまでに述べた美点の多くは他メーカーの250ccスクーターにも通じる話である。では同じ排気量帯のライバル勢と比較した場合、XMAXがどんな美点を備えているかと言うと……、それはやっぱり、MAXシリーズならではのスポーツ性が存分に味わえることだと思う。

もちろんこの件については、同条件でライバル勢との比較をしないと断言はできないのだが、XMAXはライダーがソノ気になったときの反応が絶妙で、加速と減速とコーナリングがとにかく楽しい。そういった操る手応えに、僕はNMAXやTMAXと同じ資質を感じたのだ。
ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)
ディティール解説
主要諸元
車名:XMAX ABS
型式:8BK-SG8J
全長×全幅×全高:2180mm×1410~1505mm
軸間距離:1540mm
最低地上高:135mm
シート高:795mm
キャスター/トレール:26°30′/95mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC4バルブ
総排気量:249cc
内径×行程:70mm×64.9mm
圧縮比:10.5
最高出力:17kW(23ps)/7000rpm
最大トルク:24N・m(2.4kgf・m)/7000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:Vベルト式無段変速
フレーム形式:バックボーン
懸架方式前:テレスコピック正立式φ33mm
懸架方式後:ユニットスイング式 ツインショック
タイヤサイズ前:120/70-15
タイヤサイズ後:140/70-14
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:183kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:13L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:41.7km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値:33.5km/L(1名乗車時)