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レブル1100とレブル250でツーリング時の実力を比較
まずは同一スタイルを持つ実際のモデルを例に、大排気量バイクと小排気量バイクを比較してみよう。
たとえば、ホンダの「レブル1100」と「レブル250」。いずれも、特に直線路などをゆったりとツーリングすることに適したクルーザーモデルと呼ばれるバイクだ。
レブル1100は、2025年モデルで一部仕様変更し、エンジンの圧縮比変更などで低中速域のトルク向上などを実施。ラインアップには、カウルレスのスタンダード仕様「レブル1100」と、大型フロントカウルやサドルバッグを装備した「レブル1100T」を設定。また、一般的な6速MT仕様のほかに、AT機構を持つ「DCT(デュアル クラッチ トランスミッション)仕様車をそれぞれのタイプに用意する。さらに、20125年モデルでは、ヘッドライトカウルやフォークブーツなどを採用した「レブル1100 SエディションDCT」もタイプ追加し、幅広いニーズに対応する。



一方、レブル250も2025年モデルでマイナーチェンジを敢行。ハンドル形状を見直してポジションの最適化を図るとともに、シート内部の素材を変更し快適性の向上などを図っている。また、最新の電子制御シフト機構「ホンダE-クラッチ」を採用するモデルも2タイプ追加。従来のスタンダード仕様「レブル250」と同じスタイルの「レブル250E-クラッチ」と、ヘッドライトカウルなどを装備する「レブル250Sエディション E-クラッチ」を用意し、こちらもランアップを強化している。


そんなレブル1100シリーズとレブル250シリーズだが、とくに、カウルレス仕様のレブル1100/DCTとレブル250/E-クラッチはスタイル的にかなり似ているといえる。だが、エンジンは、レブル1100/DCTが1082cc・2気筒なのに対し、レブル250/E-クラッチは249cc・単気筒を搭載。排気量がかなり違うが、実際に、どちらがよりツーリングに最適なのだろうか? それを検証するために、まずは2モデルのカウルレス仕様について、主なスペックを比較してみよう。
【レブル1100/DCT主要諸元】
■車体サイズ:全長2240mm×全幅850【835】mm×全高1125mm
■シート高:710mm
■車両重量:226【236】kg
■エンジン型式:1082cc・水冷4ストローク直列2気筒
■最高出力:65kW(88PS)/7250rpm
■最大トルク:98N・m(10.0kgf-m)/4750rpm
■燃料タンク容量:13L
■燃料消費率:WMTCモード値18.6km/L
■タイヤサイズ:前130/70B18M/C 63H、後180/65B16M/C 81H
■価格(税込):120万4500円【131万4500円】
*【 】内はDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)車
【レブル250/E-クラッチ主要諸元】
■車体サイズ:全長2205mm×全幅810mm×全高1090mm
■シート高:690mm
■車両重量:171【174】kg
■エンジン型式:249cc・水冷4ストローク単気筒
■最高出力:19kW(26PS)/9500rpm
■最大トルク:22N・m(2.2kgf-m)/6500rpm
■燃料タンク容量:11L
■燃料消費率:WMTCモード値34.9km/L
■タイヤサイズ:前130/90-16M/C 67H、後150/80-16M/C 71H
■価格(税込):63万8000円【69万3000円】
*【 】内はE-クラッチ車
レブル1100/DCTの車体サイズは、レブル250/E-クラッチと比べ、全体的に大柄であることは数値を見比べても一目瞭然だ。これにより、高速道路の直進安定性が高いことがうかがえる。
振動が少なく疲れにくい大排気量バイク
しかも、レブル1100/DCTは、エンジンの排気量がレブル250/E-クラッチの4.3倍以上あるだけに、最高出力も約3.3倍、最大トルクは約4.5倍だ。加えて、いずれも発生回転数がレブル250/E-クラッチより低くなっている。
特に、トルクは、レブル1100/DCTではエンジン回転数が4750rpmのときに最大となり、最大トルク発生回転数6500rpmのレブル250/E-クラッチよりかなり低い設定だ。

そのため、たとえば、高速道路の合流などで、速度を80~100km/hに到達させる場合、レブル1100/DCTはより低い回転数で加速させることが可能だ。また、同じ速度で巡航する場合も、エンジン回転数をより低くできる。
一般的に、加速や巡航時でエンジン回転数が低いバイクの方が、車体に伝わる振動も少なく、疲れにくいといえる。つまり、レブル1100/DCTは、レブル250/E-クラッチより、走りに余裕があるだけでなく、疲れにくいエンジン特性だといえるのだ。
また、車体サイズが大きいだけでなく、車両重量も1.3倍以上あるレブル1100/DCTの方が、走行安定性という意味では比較的高いといえる。あくまで一般論だが、特に、強めの横風が吹いている時は、軽いバイクの方があおられやすく、ヒヤリとするシーンさえある。対して、重い大排気量バイクの方が、風に対して強い傾向にあり、心理的な余裕も含め、結果的に疲れにくいことが多い。
もちろん、駐車場などでの取り回しではレブル250/E-クラッチの方が扱いやすいだろう。でも、一旦走り出してしまえば、レブル1100/DCTもハンドリングは軽快な方だし、直線路などでの安心感はより高いといえる。
なお、レブル250/E-クラッチは足着き性のよさにも定評があるが、シート高は690mm。レブル1100/DCTのシート高は710mmだから、意外にあまり差がないことも注目点だ。
大排気量モデルは追い越しや2人乗りも楽
さらに、レブル1100/DCTのような大排気量バイクでは、前述の通り、エンジンに余裕があるため、高速道路などで前を走るクルマを追い越す際も比較的楽だといえる。速度や道の勾配などにもよるが、トップギアや1段落としただけで加速できるケースも多々あるだろう。
一方、レブル250/E-クラッチのような小排気量バイクでは、同様のシーンで、ギヤを2〜3段落として加速しなければならない場合も多い。とくに、従来の6速MT仕様車で比較すると、レブル1100/DCTの方が走行中にシフトペダルやクラッチレバーなどの操作回数が少なくすむはずだ。そう考えると、ロングツーリング時の疲労度が少ないのも大排気量バイクの方だといえる。
ほかにも、たとえば、たくさんの荷物を積んで走ったり、2人乗りをしてツーリングをする場合も、レブル1100/DCTの方が、エンジンにパワーがある分、発進時はもちろん、巡航時も余裕があるのは確か。また、車両重量も重いため、タンデムや重い荷物の積載時も、レブル250/E-クラッチより安定して走ることができるといえるだろう。

価格が高い分ツーリングに最適な装備が充実
ただし、レブル1100/DCTは、価格(税込)が120万4500円〜131万4500円。レブル250/E-クラッチの価格(税込)が63万8000円〜69万3000円なので、2倍近く高い。だが、その分、ツーリングにも最適な装備がかなり充実している。
たとえば、レブル1100/DCTには、高速道路などで設定した車速を一定に保つことが可能な「クルーズコントロール」を標準装備する。ロングツーリング時の高速巡航時に、頻繁なアクセル操作を不要とする便利な装備だ。
また、レブル1100/DCTでは、スマートフォンと車両を連携する「Honda RoadSync」も採用。ハンドルスイッチやBluetooth接続されたヘッドセットを通じたライダーの音声などで、スマートフォンのマップやミュージックアプリなどの操作を可能とする。
ほかにも、冬場など寒いときに効果を発揮する「グリップヒーター」、シート下には容量3Lの収納スペースも確保するなど充実装備が満載だ。
このように、大排気量バイク、特にツーリング向けのモデルは、パワーや重さといった元々の素性に加え、装備もかなり小排気量バイクと違ってくる。値段が高い分、快適性や利便性などもかなりいいといえるのだ。

電子制御シフト機構では互角になった
ただし、レブル250の場合は、2025年モデルでホンダE-クラッチ搭載車を選べるようになった点は注目だ。
レブル1100では、従来、シフトペダルやクラッチレバーのないAT車のようなDCT仕様車が用意されており、現行モデルでも継続販売する。そして、その仕様を選べば、ライダーは発進から加減速、巡航まで、すべての走行でクラッチ操作だけでなく、シフトペダルの操作も不要。そのぶん、長距離のツーリングでライダーの披露を軽減してくれる。

一方、レブル250は、従来、6速MT車だけの設定だったため、ほとんどの走行シーンでシフトペダルやクラッチレバーの操作が必要だった。それが、新型に設定されたホンダE-クラッチ搭載車を選べば、発進、変速、停止などでクラッチレバーの操作は一切不要となる。もちろん、ホンダE-クラッチの場合、変速時にシフトペダルの操作は必要。だが、最新の電子制御技術より最適なクラッチコントロールを自動制御してくれるから、クラッチレバーの操作ミスも少なく、初心者などであれば6速MT車よりもスムーズに走ることが可能だろう。また、長距離ツーリングなどでの疲労度も、今まで以上に軽減してくれるようになったといえる。
しかも、ホンダE-クラッチは、電子制御中でもライダーがクラッチレバー操作を行えば、手動によるクラッチコントロールもできる。従来の6速MT車と同じ操作を行いたいライダーのニーズにも対応しているのだ。

ちなみに、レブル1100のDCT搭載車でも、左ハンドルにあるスイッチで、シフトのアップ/ダウン操作が可能。こちらは、4輪AT車のパドルシフト的な機能だが、スポーティなMTシフト操作を行いたいライダーの要求に応える点では同様だろう。
ともあれ、DCTとE-クラッチでは機構が違うため一概には言えないが、シフト操作を軽減するという点では、新型のレブル250E-クラッチは、レブル1100DCTの持つメリットにかなり近づいた仕様であるといえるだろう。
燃費や航続距離は小排気量バイクの方が上?
このように、レブル250/E-クラッチも、機能面でレブル1100/DCTに近づいた点はあるといえる。だが、ここまでの比較では、やはり大排気量バイクの方が勝っている点も多いようだ。
では、ツーリングでは、やはり小排気量バイクよりも大排気量バイクの方が上なのだろうか? いやいや、実は小排気量バイクだって大排気量バイクに勝る点もあるのだ。
たとえば、燃費や1回の満タンで走行できる距離。レブル250の燃料タンクは容量11Lなので、容量13Lのレブル1100より小さな燃料タンクを搭載している。だが、燃料消費率は、いずれもWMTCモード値で、レブル250/E-クラッチが34.9km/Lなのに対し、レブル1100/DCTは18.6km/Lだ。
そのため、1回の満タンで走れる距離は、あくまでスペック上の計算だが、レブル1100/DCTの241.8kmに対し、レブル250/E-クラッチは383.9kmと、より長く走ることができることになる。
特に、最近は、地方を旅する際に、ガソリンスタンドが少ないエリアも増えているから、給油のタイミングも重要。そうした点では、レブル250/E-クラッチの方がレブル1100/DCTよりも安心感は高いといえる。
そして、レブル250/E-クラッチに限らず、小排気量バイクの方が、大排気量バイクと比べると、燃費性能は比較的いい傾向にある。ツーリング時の燃費面でいえば、250ccなどの小排気量モデルの方が、1000超の大排気量バイクに勝るケースも多いといえるだろう。

もちろん、燃費や航続距離は、走行時の天候や路面状況、ライダーの乗り方などで変わりるため、一概にはいえない。また、モデルによって違いもある。
たとえば、レブル1100/DCTと同系のエンジンを持つホンダ「CRF1100アフリカツイン」。24Lもの大容量の燃料タンクを搭載する「アドベンチャースポーツES」の場合なら、燃料消費率はWMTCモード値19.6km/Lなので、1回の満タンで470.4kmも走れる計算だ。
つまり、たとえ燃費性能で劣ったとしても、車体が大きな大排気量のツアラーモデルなどなら、大容量の燃料タンクを搭載することで、航続距離も長くなる傾向にあることも間違いないだろう。

小排気量バイクがハヤブサに勝るシーンも?
ほかにも、モデルや状況によっては、大排気量バイクが、小排気量バイクに負けてしまうシーンもある。たとえば、筆者がかつて所有していたスズキの2代目「ハヤブサ(正式名称GSX1300Rハヤブサ)」。
ご存じの通り、ハヤブサは、排気量1339cc・水冷4気筒エンジンを搭載し、最高速度300km/hを誇るメガスポーツとよばれるフルカウルモデルだ。世界中にファンを持つスズキのロングセラーモデルで、現行の3代目が2021年に発売されている。
2代目の装備重量は266kgで、駐車場などでの取り回しでは車体がかなり重い印象だった。だが、乗ってしまえば走りは軽快で、最高出力197PSのスペックを活かし、高速道路の巡航などでは余裕の走りと抜群の直線安定性を発揮。また、ある程度の風にも強かったことで、ロングツーリング時の快適性はかなり高いバイクだった。

ところが、春先など、かなり強い突風が吹くときに高速道路を走行したときは、ハヤブサの車体があおられて怖い思いをした経験もある。とくに、関東のライダーなどにはおなじみの東京湾アクアラインは最悪だった。海ほたるPAと木更津を結ぶ海の上にかけられた橋(アクアブリッジ)では、風速10m/秒を超える強風が吹くときもあり、その際に海から押し寄せる横風はかなり強烈で、通行止めになることさえある。
筆者は、一度、そんな強風時にハヤブサを走らせたところ、いきなりの台風級(と感じるほど強烈な)横風にあおられ、片側2車線の隣の車線まで飛ばされそうになったことがある。そんな時、橫の車線にクルマが走っていたら……衝突して大事故になったかもしれない。
その後は、あまりの恐怖からスピードを50km/h程度に落とし、走行車線を超ゆっくりと走行。心理的にはもちろん、飛ばされまいとハンドルに力を入れすぎたことで肉体的にもヘトヘトで、早く高速を降りたいと思いながら走行したことを覚えている。
そんな時、追い越し車線の後方から、(モデルは忘れたが)250cc・単気筒のオフロードバイクが接近。なにくわぬ顔(のように見えた)で、80km/h近い速度で筆者のハヤブサを抜いていったのだ。筆者の愛車と比べ、絶対的なパワーで劣り、車両重量も軽いオフロードバイクに、なぜあれほどまで楽々と抜かれたのか? 通常時にはありえないことだ。
あくまで私見だが、おそらく理由は、2代目ハヤブサは全長2190mm、全高1170mmという大柄な車体と、フルカウル仕様だったことが禍(わざわい)したのではないかと思う。特に、ハヤブサのカウリングは、現行モデルも同様だが、最高速度を高めるための空力特性を考慮した、文字通りのフルカバード仕様。そのため、前から吹く走行風にはめっぽう強く、前傾姿勢でヘルメットまでウインドスクリーンの中に潜れば、走行風はほとんど体に当たらない。

ところが、サイドカウルなどに風が抜ける隙間はまるでなく、大柄なバイクだけに、横風を受ける面積も大きめだといる。胃覆う、250ccのオフロードバイクは、橫からみたときに隙間も多く、全高はあるけれど、風を受ける面積自体は小さいといえる。そのぶん、ハヤブサの方が横風の影響を受けやすいのではないかと考えらえる。

ちなみに、フルカウルモデルが横風に弱いという話は、1000ccスーパースポーツなどのオーナーからもたまに聞くので、筆者の推測もあながち間違いではないかもしれない。そう考えると、同じ大排気量バイクでも、ネイキッドやアメリカンなどと比べ、フルカウル仕様のスポーツバイクは橫風には弱い傾向にあるといえるかもしれない。
のんびりバイク旅に最適な小排気量バイク
加えて、大排気量バイクは、ツーリング先の駐車場へバイクを停める際、駐車スペースに気を遣う場合もある。これも、筆者がハヤブサに乗っていた時の話だが、たとえば、駐車スペースの奧が下りになっている場合。そこに、不用意にフロントから車体を入れてしまうと、駐車場を出る際にかなり苦労するケースもあったのだ。
とくに、奧までの下り勾配がきついと、車体の左脇に立ち、サイドスタンドを戻した後、ハンドルを引きながら駐車スペースをバックするときに、装備重量が266kgもあるため、かなり力が必要になる。「ハヤブサにもバックギアが欲しい!」と思った事も一度だけではなかった。
その点、車体が軽い250ccなどの小排気量バイクなら、あまり駐車する場所に気を遣うこともないだろう。もちろん、これは、ライダーの体格などによっても違うが、街中はもちろん、ツーリング先でも気軽に乗れるという点では、小排気量バイクの方が上ではないだろうか。
ほかにも、よく耳にするのが、小排気量バイクは大排気量バイクと比べスピードが遅い分、ツーリング時に「周りの景色をのんびり楽しめる」という話。また、大排気量バイクなら、シューンと行き過ぎてしまうような隠れた絶景スポットなどを、ゆっくり走れる小排気量バイクなら発見しやすいという声も多い。

これらを総合すると、大排気量バイクと小排気量バイクでは、旅の楽しみ方が違い、その意味で優劣はないといえる。あくまで、自分がどんなツーリングをしたいのかによって、モデルや排気量を選ぶのが正解なのではないかと思う。