8.6馬力アップ。CBR650R専用フルエキゾーストを欧州で発表|MIVV

ホンダCBRの系譜に磨きをかける最新ラインナップ

イタリアの老舗マフラーブランドMIVVが、ホンダCBRファミリーに向けた最新のアフターマーケット製品群を発表した。対象となるのは2024年から2025年モデルのCBR650Rで、従来のストリート適合マフラーに加えて、サーキット専用仕様も揃えた多彩な提案となる。

MIVVは1969年創業以来、二輪車の排気系を専門に手がけてきたメーカーで、初めてホンダCBR用にマフラーを開発したのは1991年、600Fに遡る。それ以降、単気筒から4気筒まで数多のホンダエンジンを解析し、その特性を活かす製品を供給し続けてきた。

AK-1、GP PRO、MK3の3モデルを展開

今回のCBR650R向けには3種類のフルエキゾーストシステムが設定された。AK-1とGP PROは、MIVVが別売する触媒ACC099.A1を組み合わせることで公道使用に必要な認証をクリアできる仕様。もう一方のMK3は完全なレース用として用意され、公道走行は想定されていない。

AK-1は軽量と高性能を両立した設計で、サイレンサー本体をステンレスまたはチタンから選択可能。どちらもカーボン製のテーパーエンドを装備し、標準でカーボンヒートシールドも付属する。公道適合には触媒(353ユーロ)が必要だが、その見返りは大きい。最大で+8.60馬力(11,600rpm)、+6.60Nm(9,500rpm)を発揮し、重量は純正比で最大-2.9kgの軽量化となる。

GP PROはコンパクトさと無駄のないデザインが魅力のモデル。半手作業によるTIG溶接で組まれ、出口には取り外し可能な保護グリル付き。ラインナップはカーボンボディとブラックステンレスの2種で、最大+8.50馬力(11,600rpm)、+6.60Nm(9,400rpm)、重量は-2.6kgというパフォーマンスを誇る。ヒートシールドもカーボン製が標準添付される。

レース直系のMK3は最大3.5kgの軽量化

公道使用ができないMK3は、MIVVがMoto3やMoto2で培った技術をダイレクトに投入したレース志向の製品だ。カーボンまたはブラックステンレスのボディに、排気口のハイテク感あふれるグリルが目を引く。ダイノデータによれば、最高で+7.90馬力(11,600rpm)、+5.90Nm(9,500rpm)を記録し、総重量はわずか5.0kg。これは純正比で-3.5kgの大幅軽量化を実現する。

この劇的な軽さとパワー増強により、CBR650Rの加速性能はもちろん、ハンドリングにも直接的な恩恵が及ぶ。純正マフラーが持つ8.5kgという重さが5kgまで削減されることで、バンクからの切り返し動作が俊敏になり、タイムアタックでのアドバンテージは計り知れない。

サウンドやトルク特性の詳細はMIVV公式で公開

これら各モデルの詳細な出力曲線やサウンドクリップは、MIVVの公式サイトにて公開されている。トルクは全域で増強傾向を示し、特に3,000回転付近から明確な差が現れる。これにより街乗り領域でも力強さが増し、CBR650Rが持つ4気筒の滑らかさと相まって、極めて扱いやすくかつスポーティなライディングフィールを実現している。

今回のMIVVの提案は、単なる見た目のドレスアップや音質の変化だけに留まらない。エンジンの潜在能力を引き出す性能向上、不要な重量を排する軽快感、その全てを高度な設計と素材技術でバランスさせた製品群といえる。公道仕様のAK-1とGP PRO、そして本気でサーキットを攻めるMK3。それぞれの目的に合わせてCBR650Rの個性をさらに引き立てる選択肢として、非常に魅力的な存在だ。

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