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ヨーロッパ市場で広がるホンダの電動二輪戦略

ホンダが欧州市場で電動二輪車戦略を一層推し進める。新たに発表されたCUV e:は、EM1 e:に続く欧州市場での二台目の電気スクーターとなり、同時に電動モビリティ向けに進化した新型コネクティビティアプリ「RoadSync Duo」もデビューを果たした。ホンダは2030年までに30車種の電動バイクを投入し、2040年には全二輪ラインナップのカーボンニュートラル達成を目指す大計画を掲げており、今回のCUV e:の導入はその重要な一歩となる。
CUVという頭字語は1994年、ホンダが国内専用モデルとして発売した「CUV ES」に端を発する。「Clean Urban Vehicle」の略で、都市環境をクリーンに移動するコンセプトは30年を経た現在もなお色あせない。CUV e:はその名を継承しつつ、欧州における電動スクーター戦略の中核を担うモデルとして位置付けられる。
着脱式MPP e:バッテリー2基で航続70km超を実現

CUV e:は、ホンダが開発した取り外し可能な「Honda Mobile Power Pack e:」バッテリーを2基搭載し、最大70kmを超える航続距離を確保する。EM1 e:と同様のコンセプトに基づきながら、6kWの横置きE-Driveモーターを搭載し、最大トルク22Nmを発揮。これにより従来の125ccクラスに匹敵する最高速を実現し、力強く滑らかな加速特性を備える。
EM1 e:が短距離の都市移動に特化したキャラクターであるのに対し、CUV e:は通勤や中距離移動を含めた幅広いシーンに対応する万能性が魅力だ。軽量で頑丈なスチールチューブ製のクレードルフレームに26mmフロントフォークとリアモノショック、12インチホイールを組み合わせ、街中だけでなく多少の荒れた道でも安定感を発揮する。
外観は滑らかな曲面と柔らかいラインが融合したモダンデザインで、高品質フルLEDライトが独自のシグネチャーを放ち、ホンダらしい繊細な造形を印象づける。さらにフラットなフットボードが確保する足元空間の広さは、デザイン性と実用性の両立を象徴するポイントだ。
RoadSync Duoが拓く電動バイクの知能化

今回CUV e:と同時に発表された「Honda RoadSync Duo」は、既存のHonda RoadSyncを進化させた電動モビリティ専用アプリだ。7インチTFTスクリーンとインテリジェントナビゲーターを搭載し、スマートフォン連携を通じて車両とシームレスに通信。バッテリー残量を監視し、リアルタイムで最適なルートを提案する。さらにソフトウェアを無線アップデート(OTA)で常に最新に保つことが可能で、ハードだけでなくソフト面からもユーザー体験を高める。
アーバンコミューターとしての利便性を追求した装備も充実している。スマートキーによるイージースタートや狭い場所での取り回しを助けるアシストバック機能、USB-Cポートによるデバイス充電、直感的に操作できる新設計スイッチなど、都市での使いやすさを支える数々の機能が盛り込まれる。
フロントシールド裏の小物入れやシート下収納、さらに純正トップボックスの装着にも対応し、日常使いからちょっとしたツーリングまで柔軟に応えるユーティリティを確保している。
世界に広がるMPP e:バッテリーのネットワーク

CUV e:が搭載する着脱式バッテリー「MPP e:」は、単なる電動スクーター用電源に留まらない。ホンダはこのコンセプトを2015年の東京モーターショーで発表し、以来インド、インドネシア、日本、タイで展開されるバッテリーシェアリング事業の中核技術として活用。さらに現在はスウェーデン・マルメのGoCimoと共同で、欧州での実証実験も進行中だ。
CUV e:は、ベンリィe:、ジャイロe:、ジャイロキャノピーe:、EM1 e:、アクティバe:に続くホンダのMPPバッテリー搭載モデルであり、二輪だけでなく軽自動車や農業機械、建設車両、船舶などへの応用も検討されている。MPP e:はクリーンで安全なエネルギーへのアクセスを世界中の人々に届けるために開発された持続可能なソリューションであり、ホンダが描く電動モビリティ社会の象徴とも言える存在だ。
CUV e:は2025年9月から欧州で発売予定。価格はバッテリー2基と充電器2基込みで4,690ユーロ(VAT込)となり、パールジュビリーホワイト、プレミアムシルバーメタリックの2色展開が予定されている。電動モビリティの次なるステージを担うこのスクーターが、欧州の街並みに新たな風を吹き込む日も近い。
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