電動バイクなのに自転車みたい! 車体も軽くて、なんだか新鮮。|ELMOTO・HR-4

シュトゥットガルト生まれのエルモトはGOVECS SCOOTER社製のEV(電動)バイクでポーランドで製造されている。ドイツ本国ではe-Bikeと呼ばれ、クラス最軽量をうたう「LOOP E-MOPED」として販売。日本で言うと原動機付き自転車(50ccバイクと同じ1種)のカテゴリーに属す親しみやすいモデルである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 双新電子(ELMOTO JAPAN)

ELMOTO・HR-4…….605,000円

 日本での初お披露目は、本サイトで既報の通り2018年3月の大阪モーターサイクルショー。開発自体は古く10年前の海外メッセで初代プロトタイプのe-Bikeが披露されている。欧州では2012年にドイツを中心に販売開始され1万台を超えるセールスを記録しているそう。

 もともとバッテリー搭載スペースや重量、そして航続距離とコストの問題で、4輪自動車と比較するとバイクのEV化はあまり進んでいない。
 ただ、一番の問題点とされているバッテリーの進化は著しく、現在も発展途上の日進月歩であることは間違いない。生活道具の中で多くの人に親しまれる携帯電話~スマホへの飛躍的進化(通話機~多機能モバイル機)も、その背景には小型で大容量の電力を繰り返し使う事ができる二次電池の性能向上があり、現在の主流となっているのが、リチウムイオン電池なのである。
 極論を言うと電池の性能さえさらに向上すれば、バイクのEV化は難しい事ではなく、電池の活用が膨らめば大量生産によるコストダウンも期待できると言うわけ。
 つまりバイクのEV化は今後の社会や経済情勢等の動向と協調次第で流れは変わってくるだろう。
 実際、電動バイク自体は、半世紀近く前からダイハツ・ハローBC(3輪)の販売実績が有り、その後もホンダやヤマハから原付1種の製品を投入してきた経緯がある。
 そして現在はグローバル規模でカーボンニュートラルを目指す追い風に乗り、カワサキも本格的バイクのEV化予定を公式発表済み。街中でも郵便配達の赤いバイクがEVに変わってきている事に気づくだろう。ようやくEVバイク普及に弾みがつき始めている。

 ELMOTO・HR-4はご覧の通り、見るからに自転車感覚の軽量級電動バイクである。角パイプを使用したバックボーンフレーム等の主要部分こそオリジナル開発されたものだが、サスペンションやタイヤ、ブレーキ等の部品の多くは自転車(MTB)用のパーツが採用されている。
 もちろんお手軽に流用されたわけではない。例えばブレーキは電動バイク用に、つまりそれなりに重い車重を考慮して専用設計されたヘビーデューティな部品を選択した。
 動力は3相ブラシレスモーターのインホイールタイプ。見映えがドラムブレーキ的なリヤのハブがモーターになっており、ダイレクトに後輪が駆動される。従ってギヤ機構は存在しないし、クラッチも無いのである。
 バッテリーはシート下にマウントされ、脱着可能。カタログ値ながら、満充電で60km走れると言う。まだまだ不十分と思うかもしれないが、かつて社会的に大ヒットし、原付1種の飛躍的販売増に貢献したホンダ・ロードパルやヤマハ・パッソルの実用性能に迫る領域まで来ている。

 ちなみにロードパルNC50は満タン(2L)実用で70km前後は走れた。使い方によるが、通常の足代わり利用なら一週間に一度の給油でOKだったと記憶している。何よりも当初の価格は5万9,800円。気軽に乗れるバイクとして多くの人々に大歓迎されたのである。
 ELMOTO HR-4なら、バッテリーの消耗に応じて家で充電すれば良い。週に一度の頻度で事足りそうなレベルに近づいて来ていると思われる。諸元や外観を見る限り、“価格以外”は偉大なヒット商品の実用性能に近づいて来たと言えそうである。
 なお、現在キャンペーン期間中。50台に限り、547,800円で販売されるそうだ。

原付一種故の難点が気になるも、本来の使い勝手は大満足。

 試乗車を目の前にすると、見るからに軽そう。自転車並と言う表現をするとオーバーだが、もはやバイクのイメージではない軽さとスマートなフォルムが印象深い。実際諸元にある車両重量は59kg。競技用のトライアル車よりも軽いバイクなんて驚異的ですらある。
 今回のELMOTO ER-4も新鮮なデザインセンスと共に、軽量バイクとしてのインパクトの大きさでは、なかなかどうして侮れない存在であると思えた。

 一見モトクロッサー風な外観デザインながら、自転車的なパーツ構成の仕上がりからはMTBの雰囲気がある。また極太で独特のパターンデザインを持つ24インチの前後タイヤからは、ビーチクルーザー的な自転車の様にも見えるだろう。
 跨がると意外と腰高で、日本の常識よりワンサイズ大きな欧州の自転車に乗る感覚。車体は細身に仕上げられているが、筆者の体格では両足の踵が地面から離れてしまった。もっとも車体が軽い故にバイクを支える不安は皆無であった。
 バイクと呼ぶにはスマート過ぎ、エンジンやマフラー等は無く、やや太めながら「ペダルの無い自転車」と言っても良い、何とも新鮮な雰囲気に発進前からウキウキした心持ちになった。
                     
 走行はキーをONにして右手のスロットルグリップを回す。それだけでOK。クラッチ操作もギヤの変速操作も不要。減速は自転車と同様に両手のブレーキレバーを握れば良い。
 発進はソロリとそれはもう穏やかな感触でスタートする優しさを備えている。一瞬レスポンスが鈍いと感じさせる乗り味だが、高級ブランドのメルセデスベンツにもある感覚だからドイツ車的センスなのかもしれない。
 しかしその後はスルスルとスムーズにかつ不足のない加速性能を至って静かに披露する。信号発進時の一般的な4輪の流れを邪魔しない程度の加速力は発揮してくれる。
 ハンドル切れ角が少なめで小回りUターンは少し苦手。微速前進時の調速でブレーキを握るとモーター駆動力がカットされるので、期せずして失速してしまう点には慣れが必要だが、軽さ故にどんな場面でも扱いに苦労する様な事には至らない。
 ブレーキユニットはコンパクト軽量な作りが印象的。対向4ピストンの油圧式という本格派で、ブレーキレバーにはリーチアジャスターも装備されている。
 MTB等で見られるコンパクトで短めのスポーツレバーが採用されていて、指1〜2本のフィンガータッチ操作も扱いやすい。急制動時は前後共にかなり強めの握力が要求されるが、ホイールロックまでもって行ける程、十分な制動力を発揮してくれた。
 動力性能的には、正直言って郊外のパイパス路等、幹線道路を走るには役不足。誤解なきよう断っておくとそれは性能的な話以前にこれが原付1種だと言う事。
 つまり法定速度は30km/hであり、大きな交差点では二段階右折が強いられるからだ。

 某所でスロットル全開性能をチェックすると0~30km/h迄の到達所要時間は4.3秒。最高速度はメーター読みで45km/h。欧州規制の速度リミッターが作動する。
 実力的にはもっと高いレベルにあり実際同じユニットでも制御を変えれば原付2種にも適応可能なポテンシャルを持っているそう。
 また、編集部で満充電〜電欠まで走らせたところ、航続距離は58.5kmをマークした。諸元値は60km、実用でもほぼ同レベルのポテンシャルがあると理解できる。
 いずれにしても近所の買い物利用や駅までの通勤通学用途に活用すると実に快適な「足」になることは間違いない。価格も含めて多くの人が自由自在に乗れるようになると良いのにな~と思えたのが正直な感想である。
 
 そしてもうひとつ、話は逸れるがこのバイクに乗るのに果たして免許証が必要なのだろうかという素朴な疑問が沸いた。
 誰にでも簡単に、むしろ自転車よりも楽に乗れる快適簡便性はとても魅力的。
 社会に秩序ある交通環境を育てようとしていた古き時代を見習い、例えば14歳から許可制(教育講習等を経て)で「原付1種」をより若い内から多くの人に乗せられるカテゴリーにした方が賢明ではないだろうか。
 教育活動も添えられてバイクに早く触れられる機会があれば、自転車を含む2輪車の交通秩序の改善と将来的な安全運転への啓蒙になり、社会に貢献できる事は間違い無いからである。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

ご覧の通り、両足の踵は少し浮いてしまう。跨った当初は腰高な印象。ドイツ人との体格(平均身長)の差を実感する。しかし車重は59kgと言う超軽量級。自転車感覚に近い扱いやすさがあり、バイクを支える事に対する不安は皆無だった。

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…