空冷から水冷に大進化! ヤマハ・シグナスXの後継モデル、シグナスグリファスに初試乗

YGNUS GRYPHUS(シグナスグリファス)は既にヤマハモーター台湾で製造発売されている125ccの本格派スクーター。日本で同様なポジションにあるのが同社が製造するシグナスXであり、シグナスグリファスは期待の次期ニューモデルである。国内の正規デビューについては公表されてない。今回の新型試乗は並行輸入されたもので、スクーターチューニングパーツメーカーで知られるKN企画のパーツ開発&テスト用車両。KN企画では駆動系パーツからドレスアップパーツまで今後さまざまなアイテムを展開する予定だ。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハ・CYGNUS GRYPHUS

ホワイト/ダークグレー
キャプション入力欄
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マットダークグレー

 シグナスXは前後に12インチホイールを採用。スポーティなスタイリングを追求した本格派の標準的な原二スクーターである。
 初代デビューは2002年。その後3~4年毎のモデルチェンジを重ね、現在国内販売されているのは2018年登場の第5世代モデル。今回試乗したシグナスグリファスは、その後を継ぐ第6世代目モデルで、空冷から水冷へと進化したエンジンが最大のトピックとなる。

 現行シグナスXと比較すると、車体サイズはひと回りボリューム感が増している。全長は45mm、ホイールベースは35mm、全高も40mm拡大されているが、車幅は従来通りの690mmがキープされている。
 前後のタイヤサイズも共に70偏平の12インチを採用。この点に変わりは無いが、ワンサイズ太くなって前120後130サイズを履いている。スチール製アンダーボーンフレームも新設計。そして搭載されたエンジンは、次世代Blue Coreと呼ばれる最新の水冷SOHC4バルブ単気筒である。
 実はこのエンジン、既に2018年登場の新型トリシティに搭載済み。昨年4月発売のNMAXにも活用された事で知られている。
 既に聞き慣れたBLUE COREとは、動力性能と環境性能を併せ持つ燃費の良いハイテク・エンジンを総称する呼称で、簡単に説明すると燃焼効率と各部フリクションロスの低減が徹底追求されている。
 
 現行シグナスXとの比較で明確に異なっているのは冷却方法の水冷化、ボアストロークの一新(ボアは52.4→52mmへ縮小、ストロークは57.9→58.7mmへ延長)。そしてVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)機構を搭載。
 またオフセットシリンダーやSMG(スマート・モーター・ジェネレーター)を活用するSGCU(スターター・ジェネレーター・コントロール・ユニット)を採用。要は従来のセルモーターは廃止され、発電機に電流を流すことでクランクを直接回転させてエンジン始動する方式が新採用された。

 注目のVVAとは、2015年に投入されたNMAXから始まっているバルブタイミング可変機構の事。吸気側のバルブ開閉タイミングを自動可変する仕組みが採用されているのである。
 ごく簡単に触れておくとバルブタイミングとは、バルブを開閉する時期の事でバルブを押し開くカムのプロフィール(形状)がそれを決めている。
 このエンジンはSOHCなので通常は吸気側と排気側用のカムがそれぞれひとつずつある。4バルブなので、ふたつずつ4個ある場合もゼロではないが、バルブが4本でもカムは2個であり、ロッカーアームを介してひとつのカムがそれぞれふたつのバルブを駆動するのが一般的。
 今回のVVAエンジンはカムシャフトに排気バルブ用がひとつ、吸気バルブ用にふたつ、つまり全部で3個のカムを持っているのが特徴。
 カムシャフトは左サイドカムチェーンで駆動され、カムは左側から順に排気バルブ用、吸気バルブの高速用、同じく中低速用の3個が並んでいる。
 中央と右の吸気用カムに注目するとそれぞれにローラーロッカーがあてがわれているが、メインは右端のカムで2本のバルブを駆動。通常中央のロッカーアームは遊んでいる。
 しかし右外に搭載された電磁式ソレノイドの働きで横方向にピンが押し出されると、遊んでいた中央のロッカーアームが右側のロッカーアーム(吸気用のメイン)と締結されて、中央カムのプロフィールで駆動されるようになるのである。
 このVVAの働きで、エンジン回転の広範囲で理想的な高出力高トルクの発揮が達成されたと言うのである。

 今回の試乗車はホワイト/ダークグレーのUBS (ユニファイド・ブレーキ・システム)前後連動ブレーキ仕様。カラーバリエーションはマットダークグレーとの2タイプのみだが、ABS (アンチロック・ブレーキ・システム)仕様は5色のカラーバリエーションが揃えられている。(あくまで台湾本国での話)   
 ちなみに台湾での価格は88,300台湾元、ABS 仕様は98,000台湾元。現時点でレート換算すると約346,000 円と384,000 円になる。現行のシグナスXは335,000円。国内での新ネーミングがどうなるかは不明ながら、このシグナスグリファスが国内投入される時は、それなりの値上がりを覚悟する必要が有りそうだ。

細部まで変更熟成され、操縦安定性が高められたアンダーボーンフレーム。
新開発された水冷Blue Coreエンジン。可変バルブタイミング機構が採用されている。
Blue Core VVA

ダイナミックなスロットルレスポンスにびっくり!

 早速試乗車に股がると、これまでの標準的な12インチホイールを履く原二スクーターと比較すると、車体はやや大きくなった感は否めない。車重もシグナスX比較で4kg増の123kgある。
 ただ、それらの感触はドッシリとした落ち着きを伴い、むしろ心地良いフィット感覚を生んでいるように思えた。明確なカテゴリーが存在している訳ではないが、12インチホイールクラスのスクーターとしては上質で立派な雰囲気を漂わせていたのが印象深い。
 

 ライバルがホンダ・リード125やスズキ・アドレス125とするなら、その雰囲気と車格は間違いなく頂点に位置する上級な存在感が構築されているのである。

 シグナスXと比較すると全体のスタイリングはシャキッとより洗練された印象。装備面ではほぼ同等で各部の仕上がり具合には順当な進化が感じられるも、基本キャラクターやグレード的にはキープコンセプトとした正常進化が成されているように思う。
 しかし、ホイールベースが35mm伸びて1340mmある事や太いタイヤの採用はぐんと安心感のある乗り味を提供してくれる。それでいてライディングポジションは、ほぼ従来通り。
 シート高がほんの僅か高くなりシートや車体も太く感じられたが、ハンドルに手を添えると、ゆったりした感覚の中にもライディングポジションはスマートに決まる。ステップスルーのフロアは地上高がやや高めなので、シート段差はそれほど大きくはなく、乗車時は股がほぼ水平になる。
 きちんと背筋を伸ばした姿勢を取ると前方の見晴らしが良く、前述のスマートさも相まって、混雑した市街地でも走りやすい。最小回転半径は1.9~2mになったが、実用上の取り回しは何も問題ないし、狭い路地でのUターン等もまるで気にもならず扱いやすかった。

 エンジンを始動するとアイドリングはメーター読みで1,500rpm。1万回転スケールのタコメーターは500rpm毎のデジタル表示なので正しくは1,500 以上2,000rpm未満である。
 スロットルを開けるとレスポンスはとても元気良く、なかなかどうして侮れない加速力を発揮してくれる。それもあまり高回転域を使わずに平然とダッシュする様は、まるでひとクラス排気量の大きなスクーターに乗っているのと同等な感覚。
 正直なところ、「155ccの新型です」と騙されて試乗したとしても、素直にそれを信じてしまえるほどの高性能ぶりに驚かされた。

 市街地の通常走行なら、4,500~5,000rpmをキープしながらいつでもストレスのない迅速な加速力を発揮。スロットルを全開にすると、6,500~7,000rpmあたりを駆使して豪快な動力性能を披露するのである。
 高速道路は走れないので、おそらく持てるポテンシャルを市街地から郊外でのキビキビした走りに配分された様子で、その元気の良い走りっぷりは爽快かつ気分が良い。
 いつでも思い通りになる俊敏な動力性能は抜群。交通の流れに素早くシンクロできる故に安心感が高く、ゆとりを持った走り方にも繋がり、全体的にストレスの無いハイパフォーマンスが魅力的である。

 一方エンジンブレーキの効きも良い。アクセル全閉で減速していくと、メーター読み14km/hの速度でクラッチが切れる。早め早めのスロットルオフを心がければ、両手で操作するブレーキの使用頻度も軽減でき、燃費節約にもつながりそう。
 手動ブレーキは前後連動式なので、左側のレバー操作だけで前後輪がバランス良く制動されて滑りやすい路面でも急制動をかけられる安心感は大きく、ドライな舗装路を走る限り、こうしたスクーターではABSよりも好印象を覚えたのが正直な感想である。
 直進安定性も良く、色々なコーナーでの操縦性も素直。タイヤのグリップ感も頼り甲斐が増した感じで総じて走りは扱いやすく快適。通勤用途の標準的原二スクーターとしては、贅沢なチョイスに成りそう。
 いずれにしても、基本の進化熟成を重ねてきたシグナスXの第6世代最新鋭モデル。国内正規投入が期待される存在であることは間違いないのである。

足つき性チェック(身長168cm)

シート高は785mm。ご覧の通り両足の踵は、ほぼべったりと地面を捉えることができる。車体は太過ぎず、足つき性に難は無い。

ディテール解説

キリッとしたフロントマスク。目つきの吊り上がったヘッドランプはLED式。左右のウインカーは12V10Wのハロゲン電球が使用されている。
フロントフォーク部までカバーされたフェンダーデザイン。φ245mmのディスクローターにはデュアルピストンのピンスライド式油圧キャリパーを採用。
新開発された水冷BLUECOREエンジンを搭載、右サイドに冷却用のラジエターが配置されている。
後方まで伸ばされた大容量右サイドアップマフラー。
駆動系はCVTと呼ばれるVベルト無段自動変速。上部のエアクリーナーボックスもかなり大容量だ。
ユニットスイング方式に2本ショックを組み合わせたリヤサスペンション。ショックユニットにはダブルピッチタイプのコイルスプリングを採用。4段階でプリロード調節ができる。
リヤブレーキはφ230mmのディスクローターにシングルピストンのピンスライド式油圧キャリパーを採用。
車幅は690mm。ライディングポジションは意外とスマート。
ごく一般的なハンドルスイッチ。左側は上から順にディマー、ウインカー、ホーンスイッチ。この配置は扱いやすい。
ハンドル右側にあるのはエンジン始動用スタータースイッチのみ。
液晶ディスプレイを採用したデジタルメーター。両脇の警告灯も含めて多彩な情報表示を担う。
イグニッションスイッチは盗難抑止用キーシャッター付き。その右側には5V2AのUSBアクセサリー電源ソケットが標準装備されている。左側は燃料給油口、キャップはヒンジ付き。キー操作で手前にパカンと開く。
フラットに続く長いダブルシート。ステッチもあしらわれている。後席両脇にはしっかりしたハンドグリップを標準装備。
一体式ダブルシートは前ヒンジ式。キー操作の解錠で簡単に開閉できる。収納容積にも余裕がある。
ご覧の通り、ヘルメット収納時もプラスαの活用スペースがある。写真のヘルメットはSHOEI製 J-FORCE Ⅳ。
T字状に3分割されたLED式のテール&ストップランプ。クリアレンズを使用した左右ウインカー(12V10W)とライセンスプレートランプ(12V5W)は電球式だ。

⬛️主要諸元⬛️

全長/全幅/全高:1,935mm/690mm/1,160mm
シート高:785mm
軸間距離:1,340mm
最低地上高:125mm
車両重量:123kg(ABS仕様は124kg)
燃料消費率:48.9km/L(定地燃費)

原動機種類:水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列:単気筒
総排気量:125㎤
内径×行程:52.0mm×58.7mm※
圧縮比:11.2:1
最高出力:9.0kW(12PS)/8,000rpm
最大トルク:11.2N・m(1.14kg・m)/6,000rpm
始動方式:セルフ式
潤滑方式:ウェットサンプ
エンジンオイル容量:0.90L
燃料タンク容量:6.1L
年間燃料使用量:92L(年間走行4,500km分の参考値)
吸気・燃料装置/燃料供給方式:フューエルインジェクション
点火方式:TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量:12V, 6.5Ah(10HR)
クラッチ形式:乾式自動遠心、シュー式
変速装置/変速方式:CVT(Vベルト式無段変速)/オートマチック
フレーム形式:アンダーボーン
タイヤサイズ(前/後):120/70-12 51L/130/70-12 56L
制動装置形式(前/後):油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後):テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
最小回転半径:2.0m
乗車定員:2名

製造国:台湾

⚫️試乗後の一言!

軽二輪(155ccクラス)だと言われても素直に信じてしまえる程、走りのパフォーマンスは抜群。

現所有車はホンダXR230 、ファンティック75。昔から変わらぬ夢は、排気量の大きなツアラーで開放された気まま旅を楽しんでみたい!

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の創刊メンバーに。1981年退社後はフリーランスとして専門誌や一般紙誌等、2輪に4輪にと幅広い執筆活動を続けている。
 ライディングやドライビングのインストラクター経験も豊富。東京都交通安全協会・安全運転管理者講習の講師も務めた。

 自動二輪から大型牽引二種まですべての運転免許を所持。現在は主にMotor-Fan BIKES等のWeb媒体やバスマガジンなどで取材&執筆活動中。バイクのレポートでは、ユーザーの気持ちになって乗り味のチェックとわかりやすい文章表現に努めている。

著者プロフィール

谷陽子 近影

谷陽子