さすがGSの大柄ボディだけど!住宅街や細い路地は意外と素直に扱えた。|BMW・R 1250 GS スタイルラリー エンデューロパッケージ試乗

BMWのラインナップ中、人気の“アドベンチャー”カテゴリーには、40周年記念限定車も含めると12機種が揃えられている。筆頭に位置するのはR 1250 GS Adventureだが、GS(ゲレンデ・スポルト)の名に相応しいオフロード色の濃い1 台としてR 1250 GS スタイルラリー/ エンデューロパッケージはとても気になる存在なのである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ビー・エム・ダブリュー 株式会社

BMW・R 1250 GS スタイルラリー/エンデューロパッケージ…….2,932,000円

ライト・ホワイト/レーシング・ブルー・メタリック/レーシングレッド(写真は2021年型)

2022年型カラーバリエーション

ライト・ホワイト…….2,262,000円
ブラック・ストーム・メタリック/アガット・グレースタイルトリプルブラック…….2,364,000円
ブラック・ストーム・メタリック(40周年記念限定車)…….2,980,000円

 オフロードイメージ一色。見るからにヘビーデューティなスタイルは、アドベンチャーツアラーの中でも、とりわけ大きく立派。車体全体が醸すボリューム感と風格からは、長年そのカテゴリーを牽引してきた堂々たる存在感が漂ってくる。写真のモデルにオプションのアルミニウムパニアケースセット(178,728 円) を装備すると本来思い描くアドベンチャーツアラーとしての機能が完成する事だろう。
 あえて4輪で例えるなら、トヨタ・ランドクルーザーや、レンジローバーに相当する最上級モデルと言う方が理解が早いのかもしれない。いずれにせよアドベンチャー・カテゴリーにおける最高峰のモデルとして憧れられる存在なのである。

 1980年にデビューしたR80 GSに端を発す同シリーズは、現在第6世代へと進化。トラス構造のスチールパイプフレームに搭載の縦置き水平対向2気筒エンジンは排気量が1254ccへと拡大されてきている。ボア・ストロークは102.5×76mmと言うビッグボアを持つショートストロークタイプ。気筒当たり4バルブにセンタープラグのヘッドを持つDOHCを採用。12.5対1の圧縮比を得て100kW(136ps)/7,750rpmの最高出力と143Nm/6,250rpmの最大トルクを発揮する。
 既報のR 1250 RTでも触れているが、ShiftCamと呼ばれる可変カムシャフト機構が採用され、中低速の常用域から、高速の高出力域までをフルカバーする柔軟な出力特性の発揮が追求されている。
 可変機構を備えているのは吸気側のみ。ご存知の通り縦置き水平対向ツインのシリンダーは車体の左右に張り出しており、吸気側のカムシャフトは共にシリンダーヘッドの上方に位置している。
 カムチェーンはシリンダー後方側を通り、ギヤを介して吸排双方のカムシャフトを駆動する。カムシャフトは前後方向にほぼ水平配置。カムプロフィールがそれぞれロッカーアームを介してふたつのバルブを駆動する。
 吸気側のカムシャフトにはプロフィールの異なるカムが二つ×2個分の4つ。必要に応じてカムシャフトごとスラスト(前後)方向に移動させて、バルブを押すカムプロフィールを切り換える事で、バルブの開閉タイミングとリフト量を可変する仕組みである。

 サスペンションはフロントにテレレバー、リアは片支持のパラレバー方式を採用。左側スイングアームの中を後輪駆動用のシャフトが通るBMW独自の方式が印象深い。
 フロントもフレーム側から前方に伸ばされたAアームでフロントフォークの中程が支持され、衝撃吸収と減衰は、左右ラジエターに挟まれた中央の奥に位置するモノショックユニットが受け持つ仕組みである。試乗車にはストロークを長くしたスポーツサスペンションが装備され、オフロード色の強い仕様に仕上げられているのも見逃せない。本格的なオフロードフリークには、もっとも興味深い仕様と言えるだろう。
 前19/後17インチサイズのクロススポークホイールには、メッツラー製KAROO 3チューブレスタイヤを履く。
 そして前後ブレーキにはIntegral ABS Proを装備。右手のレバー操作で前後ブレーキが連動し、右足のペダル操作はリアブレーキのみの制動が働く仕組み。またABS はコーナリング時でも適切に作動。さらにエンデューロプロ・モード設定時には任意のABS解除も可能としている。

走る程に理解が深まる万能快適ツアラー

 試乗車を拝借し、自宅ガレージに入れると何とも嬉しい気分。のっけから白状すると筆者自身、R 1250 GSには憧れがある。“いつかはクラウン”じゃないけれど、同様な感覚で所有したいバイクの筆頭として、募る想いを持っていたからだ。
 その根拠は、行く先や走る場所を選ばない旅道具として備えられた機能性と、その背景に、大きな夢を見させてくれる“冒険心”が駆り立てられる様な気がするから。
 一方で冷静な判断を下すと先ずはお値段が高く、自分の経済事情を照らし合わせるとおいそれと買える代物ではない。そして車両のサイズが大きく重量の重い点に近寄りがたい雰囲気があり、いまだにオーナーになる夢は果たせていないのである。

 ボリューム感たっぷりなフォルムと、ハンドルバーライザーで一際高い位置にクランプされた約1m幅のハンドルが醸すイメージは、見るからに堂々と立派である。圧倒されるサイズ感は、ビッグタンクを搭載する同Adventure程の巨漢ではないものの、バイクに乗り慣れた筆者でもやや気後れしてしまう。
 シートに股がる時、リヤシートとキャリアの高さに注意しないと、後方を回す右足をぶつけてしまいそう。写真からもわかる通り、両足は爪先立ち。ローシート側にセットしたシート高は870mm。車重はガソリン満タンで266kgもある。
 平坦な舗装路なら慎重な扱いで何とか許容できるレベルだが、横風を受けたり、足元の状況が荒れていると、果たしてキチンとバイクを支えきれるかどうか不安になる。ズッシリとした手応えを覚えながら車庫から出し入れする時、またオフロードや傾斜地で押し引きすると、やはり自分の体格には大き(重)過ぎると思えたのが正直な第一印象である。
 
 しかしいざスタートするとバイクに対するそんな印象はガラリと一変する。ともかくそんな重さをすっかり忘れさせてくれる程に扱いが軽いのだ。住宅街を最徐行する時も素直に扱え、バイクの挙動は落ち着きはらっている。クラッチやスロットル操作も適度な軽さがあり、ワイドハンドルの操舵フィーリングも実に軽快。極低速走行でも垂直バランスを保ちやすく停車時にバイクを支えるのも片足付きで大丈夫。巨体の扱いにも自然と馴染んでくるから不思議。肩の力が抜けてスーッとリラックスできてしまう自分がそこに居るのである。 
 エンジンの出力特性も終始一貫して「穏やか」な印象。大人しいという表現は適切ではないが、図太いトルクや侮れないスロットルレスポンスを持ちながらも、そんな高性能の発揮には、常に優しさが伴う。豪快ではあるが、決して乱暴者ではない。どの領域からでも、スロットルを開けた時の駆動力は頼り甲斐がある。しかもトラクションの掛かり具合が素晴らしい。後輪の回転がしっかりとバイクを“前”に押し出してくれる感覚には、安心感を覚えるのである。
 舗装路を外れたオフロードでも同様で、グリップを失わない様に駆動力が電子制御される仕組みはとてもありがたい。実際砂地やフラットダートでテールスライドする様なシーンも自然な感触。程良い滑りとその復帰具合も説妙にコントロールされる。
 凹凸の激しい場所を通過するシーンでも、前後サスペンションは衝撃の吸収具合にユトリがある。前後のフットワークもバランスが良く、快適な走破性は抜群。

 シートは低い方で試乗したが、股下とバイクとの一体感もある。膝は腰よりも低く股は前下がりの傾斜となり、いつでも下肢の筋力を活かして瞬時にステップに立ち上がれる。体重も上手く分散される感覚で、シートの座り心地も良く、2時間程度のクルージングで疲れる事もない。ハンドルグリップと同様に5段階切り換え式のシートヒーターも装備されており、冬のツーリングでもとても快適なのである。
 渋滞に遭遇しても気持ちは不思議な程落ち着いていられるし、峠や高速を疾走しても感覚的には常に穏やか。速度感覚が緩くなるので出している速度がどの程度かはメーターでキッチリと確認する必要があるだろう。
 ブレーキング時の姿勢安定、旋回時の挙動変化も全てがゆったりとした感じ。そんな優しい乗り味に包まれるところに、R 1250 GSならではの快適性を覚え、遠くまで走り続けられる疲労感の少ないクルージング性能がとても魅力的に感じられたのである。
                     
 今回はツーリングも含めて508kmを走行。高速と一般道との半々で約300km走行時の平均燃費率は20.9km/L。高速の速い流れに乗った後に渋滞に巻き込まれた約120km走行では17.7km/Lを記録した。
 いつもの様にローギヤ固定でエンジンを5,000rpm回した時のスピードは51km/h。6速トップギヤ100km/h クルージング時のエンジン回転数は3,600rpm。120km/h でも4,250rpmだった。

足つき性チェック(身長168cm / 体重52kg)

大柄で重い車体を爪先立ちで支えるには少々不安を覚える。片足で支えると少しは指の付け根で踏ん張る事ができるのでむしろ安心。ただしそれは平坦な舗装路での話。足元の悪い場所ではかなり慎重になる。シート高は870mm。乗り降りを考えなければ、890mmのハイ側で乗りたい気持ちにもなる。

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…