奥行きのあるハンドリングが絶妙

ホンダ・ホーク11試乗|DCTの設定ナシはなぜ? は乗って納得! 大人向けのスポーツバイクです。

ホンダから久しぶりにロケットカウル付きのロードスポーツモデルが誕生した。ベースとなっているのはスポーツツアラーのNT1100で、エンジンやシャシーなど主要パーツの多くを共用としつつ、ミッションは自動変速機構のDCTではなく6速MTを選択している。販売開始は3か月先の2022年9月29日からだが、一足早く試乗することができたのでインプレッションをお届けしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ ホーク11……1,397,000円(消費税込み)2022年9月29日発売

車体色は写真のパールホークアイスブルーのほかにグラファイトブラックがあり、予約状況では前者の方の人気がやや高い。年間販売計画台数は1,200台で、国内専用機種となる。
NT1100やCRF1100Lシリーズと共通のスチール製セミダブルクレードルフレームを採用。1,082cc水冷並列2気筒エンジンも共通であり、ホーク11は6速マニュアルミッションのみ。
直接のベースとなったのはスポーツツアラーのNT1100で、2022年3月17日に発売されている。クルーズコントロールや多機能メーターなどを採用し、車両価格は168万3000円だ。

6速MTは大正解! 270度位相クランク本来の楽しさを堪能できる

ホーク(HAWK、鷹の意)の名が久しぶりに復活した。初登場は1977年(昭和52年)で、5月にホーク-Ⅱ(CB400T)、7月にホーク(CB250T)がリリースされている。1980年登場のスーパーホークⅢ(400cc)とスーパーホーク(250cc)以降、長らく使われていなかった伝統のネーミングが、平成をまたいで令和に復活したことが非常に興味深い。

さて、このホーク11。先に発売されたスポーツツアラーNT1100と多くの主要パーツを共有している。270度位相クランクを採用した1,082cc水冷並列2気筒エンジンは、102ps/7,500rpmの最高出力、104Nm/6,250rpmの最大トルクともNT1100と共通で、FIセッティングを変更することでロードスポーツモデルにふさわしいダイレクトなレスポンスを作り込んでいる。なお、ミッションは自動変速機構のDCTではなく、一般的な6速マニュアルのみとしている。

CRF1000Lアフリカツインに端を発するこのエンジン。DCTが組み合わさると、機械的に効率の良い回転数で自動変速するので、どうにも印象が薄いというのが私の率直な感想だ。例えば標準的なDモードで発進すると、2,500rpm付近で矢継ぎ早にシフトアップし、60km/hに達したときにはすでにトップ6速に入っている。NT1100の場合、市街地はもちろん、峠道でもよほど上り勾配のきつい場面でなければ3,000rpmを超えることはほとんどなく、どうしても味わいは薄いと言わざるを得ない。

ホーク11は、CRF1100Lやレブル1100がそうであるようにこのDCTを使うこともできたはずだが、あえて一般的なハンドクラッチ付きの6速マニュアルのみとした。この選択は大正解で、無味乾燥に思えたこのエンジンがこんなにも楽しかったのかと気付かされた。具体的には、4,000~5,000rpm付近にフワッと伸び上がる領域があり、270度位相クランク採用のパラツインに共通する味わいを確認。その先では、やや唐突に8,000rpm付近のレブリミットに当たってしまうが、あえて最高出力を欲張らなかったことで回しきれる、扱いきれる特性になっており、これがライダーの充足感を生んでいる。

なお、ライディングモードはNT1100らと同様にスポーツ/スタンダード/レインのほか、各項目の制御レベルを任意に設定できるユーザーの計4種類から選べる。それぞれの特性の違いは明確であり、切り替え操作が容易なのもうれしいポイントだ。なお、前輪の浮き上がりと後輪のスリップを緩和するHSTCを搭載しており、これによる安心感は大きい。


自由自在感は希薄だが、操縦次第で秘めた旋回力を引き出せる

ホーク11のベースとなったNT1100のスチール製セミダブルクレードルフレームは、もともとCRF1100Lアフリカツインシリーズのものであり、このニューモデルではスイングアームピボットを中心にNT1100比で1.5度、CRF1100L比で2.5度前傾させて使用。また、倒立式フロントフォークのショーワ(日立アステモ)製SFF-BPやアルミ鋳造製スイングアーム、17インチの前後ホイールなどはNT1100のものを流用している。

フロントフォークのホイールトラベル量は150mmで、これはNT1100と同値であり、一般的なロードスポーツモデルの120~130mmと比べると長めだ。NT1100は腰を中央にどっしりと据えたまま、ハンドルの押し引きだけで旋回に移行できるイージーさがあり、コーナリング中にステップを接地させてなお路面に吸い付くように安定している。これに対してホーク11は、イージーさはやや薄れるものの、操縦次第で旋回力をコントロールできるという楽しさがある。

シートが前後方向に長く、着座位置の自由度が高いのもポイントだ。後ろの方に座り、リーンウィズのままスロットルのオンオフだけで曲がれるようなペースで峠道を流すのも楽しいし、反対に前寄りに座って、ブレーキングからのターンインに集中するという走り方も許容してくれる。ホイールベースが1,510mmと長いので、旋回力自体は決して高くはないのだが、高い安定性分をベースとしているからこそ、どんな操縦をも受け入れてくれるのだろう。

こうした走りを支えているのがブレーキだ。フロントは初期から非常にリニアで、ABSが介入するギリギリまで自信を持ってコントロールできる。また、前後サスも優秀で、しなやかなフレームと相まって路面が荒れている峠道でもしっかりと路面を捉え続けてくれるのだ。

さて、細かい部分について触れてみよう。まずは外観上の特徴にもなっているミラーについて。これはハンドル越しに鏡面を見ることになるが、バーエンドタイプよりも視線の移動量が少ないというメリットがあり、走り始めてすぐに慣れてしまった。なお、ロケットカウルによる防風効果はそれなりのレベルである。

続いてセパレートハンドルについて。これは見た目ほど前傾姿勢はつらくなく、一般的なスーパースポーツよりも快適と言える。ただ、ハンドル切れ角は少なく、最小回転半径はCBR600RRの3.2mよりも大きい3.4mを公称する。片側1車線の道路でのUターンがギリギリといったところだ。

経験豊富なベテランライダーを対象として誕生したホーク11。今春のモーターサイクルショーでのお披露目以降、スタイリングについて久しぶりに賛否両論あったと開発陣が告白してくれたが、自然光の中でたたずんでいる姿や、ライダーがまたがっているシルエットは、写真から受ける印象以上に見映えがいいというのが正直な感想だ。9月下旬の発売までまだ3か月以上あるが、納期や予約状況など詳しく知りたい方はホンダドリームネットワークへ問い合わせてほしい。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

ハンドル、シート、ステップで構成される三角形は、2008年型CBR1000RRをベースにハンドル位置を103mmアップさせたもの。最小回転半径はNT1100の2.8mに対し3.4mと大きめだ。
シート高はNT1100と同じ820mmで、身長175cm/体重68kgの筆者の場合、両かかとが楽に接地して膝も緩やかに曲がる。シートは前後方向に着座位置の自由度が高いのがポイント。

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大屋雄一 近影

大屋雄一