前16インチホイールはビジネス用途にも好都合かも。キムコ・ターセリーS 150試乗。

キムコ・Tersely S 150 は、ステップスルータイプのスクーターである。フロントに16、リヤに14インチホイールを採用。ウインドシールドやリアボックスも標準装備。どこかビジネスライクな、上質感漂うデザインに仕上げられている。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO ●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●キムコジャパン株式会社

2021年6月25日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。

キムコ・Tersely S 150…….308,000円

ディープブルーメタリック
マットシルバークリスタル

冒頭に記した通り、スクーターのカテゴリーとしては最大級と言える大径ホイールを履いているのが特徴。アンダーボーンフレームで構築されるスタイルは乗降性に優れ、扱いやすい。イタリアの市場では、年間4,000台以上の販売実績を誇る人気モデルである。
 オールクリアのウインドスクリーン(風防)とナックルカバー、リアキャリアにはトップケースも標準装備されており、それなりにボリューム感があり、立派なフォルムに仕上げられている。
 カラーバリエーションは、シルバーとブルーの2タイプから選択でき、それぞれに異なるシートカラーがマッチされている。ブルーにはブラウン、シルバーにはワインレッドのシートが組み合わされ、どこか大人びたセンスと上質な雰囲気を漂わせている。
 それでいて価格設定は、125ccクラスのホンダスーパーカブC125より約10万円も安いのだから驚きである。しかも高速道路が走れる排気量の149cc エンジンが搭載されているのだから、その “お買い得感” は侮れない。
 
 搭載エンジンは空冷のSOHC4バルブ単気筒だが、Racing S 150に搭載のSR30Bとは異なり、バルブタイミングやリフト量の可変機構であるVVCSは採用されていない。
 シリンダーボアは同じ59mmだが、ストロークはほんの僅かに(0.3mmだけ)長く、その排気量は149.8cc 。10.9:1と言う高圧縮比を得て10.3kw(14ps)/8,500rpm の最高出力を発揮する。
 サスペンションはスクーターとしては常識的なリア・ユニットスイング方式。フロントのテレスコピックフォークはφ33mmサイズの正立式。リヤは2 本ショックタイプで3段階のプリロード調節ができる。
 ブレーキは前後共にシングルディスク式で、BOSCH製の2チャンネルABSを標準搭載。灯火類はLED式を採用。また、アクセサリー電源を取り出せるUSBソケットがシート下収納後部とステアリングヘッド右側の2箇所に装備されている。

走りにはそれなりに重さを伴う落ち着きが感じられる。

 やはり最大の特徴はフロント16インチ、リヤ14インチサイズのホイールを履いていること。ちなみにスーパーカブは前後共に17インチだが、スーパーカブプロやDio110は前後共14インチである。
 試乗車を目の前にすると、その車体ボリュームはなかなか立派。車量重量は130kgとそれなりの重さがある。ちなみにスーパーカブC125の車両重量は110kg。体感的にも20kg差は歴然としたものがあるわけだ。
 さらにスクリーンやリアボックスの装備等、重心高が高めな感覚があり、シートに股がり車体を引き起こす時の手応えはすっしりと重みが伴う。
 しかし欠点と感じられる程の重さではなく、むしろ車体挙動の全てはゆったりとした雰囲気の落ち着いた動きに終始する。車幅は700mmとスマート。シート高は790mm、やや腰高な上、背筋の伸びた姿勢になるので前方の見晴らしが良い点も印象的である。
 決して軽快ではないが重みの伴う落ち着いた乗り味が楽しめるのである。
 フロントスクリーンの設置位置がライダーに近いこともあって、乗車位置は前後方向に少し窮屈な感じを覚えるが、ウインドプロテクション効果は抜群。
 フォーマルシューズはもちろん、胸元に風をはらむビジネススーツや、スクリーンの無いヘルメット着用でも問題無く走れてしまう。シート下とテールにセキュリティが確保できる大容量収納があるので、仕事道具等を携えての移動もほとんどの要件はカバーできてしまえるだろう。


 走りは決してパワフルではないが、トルクに不足はなく高速走行も無難にこなせる。80km/hクルージング時のエンジン回転数は、500rpm刻みのメーター読みで7,500rpm。
 やや速めの加速では6,000〜6,500rpmあたりを常用する。機敏ではないが、全体の雰囲気に相応しい穏やかで不足の無いパフォーマンスを発揮してくれた。
 試乗当初、タイトターンやUターンする時、操舵に対してゆっくりとリーン(車体が傾く)し始める感覚が、やや扱いにくい癖の様に感じられたが、直ぐに慣れてしまうのも事実。
 キャラクターとして、走りそのもの(操縦性)を楽しむタイプではないが、大径ホイールの基本性能の高さを遺憾なく活用した快適な移動道具としての乗り心地がそこに発揮されているわけだ。
 
 直進安定を始め、コーナリングでの旋回挙動、悪路でのフットワーク等いずれにも良い意味での落ち着きが伴い、結果としてゆったりとした乗り味に安心感が伴う点も魅力的である。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

シート高は790mm。スクーターとしては腰高な乗り味が印象的。両足の踵は浮いてしまうが、バイクを支える事に不安は感じられない。


ディテール解説

ウインドスクリーンは取り外し可能。LED式ヘッドランプとライン状に光る導光式ポジションライトデザインが斬新である。
フロントは16インチ、台湾ブランドのKENDA製タイヤを履く。φ33mmテレスコピックフォークのボトムケースにマウンされた油圧キャリパーは2ピストンのピンスライド式。ディスクローターはφ260mmだ。
少しハネ上げられてフィニッシュする右出しマフラー。ディスクブレーキのローターサイズはφ240mm。BOSCH製の前後ABSが装備されている。
リヤサスペンションはユニットスイング式でアクスルより後部に2本ショックがセットされている。コイルスプリングはダブルピッチタイプ。タイヤサイズは14インチだ。
全幅は700mm。ハンドル幅はなかなかスマートである。そのせいか、操舵感はややしっとりとした乗り味を披露する。
自然なレイアウトでとても扱いやすい左側ハンドルスイッチ。上から順にディマー&パッシング、ウインカー、そしてベストポジションにあるホーンスイッチ。
ハンドル右側のスイッチはご覧の通りシンプルにひとつのみ。エンジン始動用のスタータースイッチだ。
上下にセパレートされた2画面表示の液晶デジタルメーター。上には5つの警告灯がレイアウトされている。
下側ヒンジでで開くグローブボックスは、レッグシールド内側の左手に装備されている。中央部(写真右手)にはコンビニフックが配置されている。
フロアからの立ち上がり左手に燃料給油口がある。キャップは、キーの時計回り操作で簡単に開けられる。
車体色と同色のSHAD製リアボックスを標準装備。ワンキー方式、つまりイグニッションキーで施錠及び解錠できる。
収納容量は33L。ヘルメットも余裕で入れられる。
赤いテール&ストップランプ。オレンジに光るウインカーランプががコンビネーションされたフルLED式ランプを装備。

主要諸元

Tersely S 150
エンジン形式:空冷4ストローク SOHC 4バルブ単気筒
燃料供給形式:フューエルインジェクション
総排気量(cc):149.8
内径 x 行程(mm):59×54.8
圧縮比:10.9
最高出力(kw)/ rpm:10.3(14ps)/ 8,500
最大トルク(Nm)/ rpm:12 / 7,000
変速機型式:CVT
始動方式:セルフ式
装備重量(kg):130

全長×全幅×全高(mm):2085 x 700 x 1570
シート高(mm):790
軸距(mm):1390
燃料タンク容量(L):6.2
タイヤ(前/後):100/80-16 /120/80-14
サスペンション(前/後):φ33mm テレスコピック式 / ユニットスイング式
ブレーキ(前/後):φ260mm シングルディスク/ φ240mm シングルディスク

生産地:中国
日常的に活用する快適な移動道具として、その機能性にはお得感を覚えた。

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の創刊メンバーに。1981年退社後はフリーランスとして専門誌や一般紙誌等、2輪に4輪にと幅広い執筆活動を続けている。
ライディングやドライビングのインストラクター経験も豊富。東京都交通安全協会・安全運転管理者講習の講師も務めた。

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…