日本の道路事情にジャスト! 「GSX-S750」 試乗レポ/スズキ

スズキが誇る主力スーパースポーツのGSX-“R” に対して“S”の名を冠したスーパーネイキッド。もちろんイメージリーダーたる頂点の1000に次ぐのがミドルサイズの750 だ。R直系のDNA を受け継ぐSの乗り味は如何なものだろうか。
REPORT●近田茂(CHIKATA Shigeru) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

※2018年05月15日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
スズキ・GSX-S750 ABS

スズキGSX-S750 ABS……969,840円(消費税込み)

スズキ・GSX-S750 ABS
スズキ・GSX-S750 ABS
スズキ・GSX-S750 ABS
スズキ・GSX-S750 ABS
スズキ・GSX-S750 ABS
スズキ・GSX-S750 ABS

 さっそくGSX-S750に跨がると実にフレンドリーなサイズ感。古い感覚を持つ筆者にとってナナハンと言えば、ついつい重量級の立派な車格をイメージしてしまうのだが、いわゆるミドルサイズ(600前後の中間排気量) を直感させられた程親しみやすい。
 決して大きすぎない。そして重すぎない。ごく自然とフィットするちょうど良いコンパクトな感触がとても新鮮かつ好印象だった。ひとことで言えば軽快そのもの。しかもそれはエンジンのキャラクターにも巧みに表現されている。軽々とスムーズにそして俊敏に噴き上がる気持ちの良い出力特性は、頭(感覚)の古い筆者にとっては、驚きに値した。

 誰にも負けないレベルの高性能を期待しつつも日本の交通環境下で使う事を考慮すると、まさにベストフィットする程良くも十二分なパフォーマンスがそこにある。兄貴分の1000が誇るポテンシャルの優秀性と凄味は十分に承知した上で、日本で使うならナナハンの方が良い!と思えたのが正直な第一印象だ。

 そしてもうひとつ。走り始めた瞬間、とてもフレッシュな記憶が蘇った。速度にすれば40~50km/h。それでもライダーの全身で浴びる沢山の風がとても心地よい。寒くは無くなった季節がそう思わせたこともあるが、胸に当たる風がまさにネイキッドならでは。イコールそれはバイクに乗り始めた時に体験した懐かしい快感でもあったのだ。
 元来バイクで走ればライダーは風を浴びる。それがまた心地よく、バイクという乗り物の新鮮なインパクトとして記憶に残っているわけだが、“風と友になれる”感覚が、蘇ってきたと言うわけ。ウインドプロテクションを持たないネイキッドならではの乗り味がそこにあった。
 もちろん相反する要素として、高速走行では風圧の負担が増す。長時間クルーズでは疲労度も嵩むわけだ。しかし肌に心地の良い季節の移ろいや高原や海辺の香りを身体一杯に浴びる気持ちよさを楽しみたいのなら、GSX-S750のネイキッドスタイルがお勧めというわけだ。

 エンジンフィールは前述の通りだが、小気味のよいスロットルレスポンスが発揮され、どんな場面でもスイスイーッと俊敏に走れ、その扱い易い乗り味は誰にでも良い印象を与えることは間違いない。操縦性についても同様で、とても素直にかつ軽快に走れるので、市街地でも峠でも思いのままに楽しく走れてしまうのだ。昔流の表現をすれば、ナナハンの高性能を400 並の気軽さで扱えてしまう、といった感じ。強力な前後ブレーキも操作性が良いしサスペンションの動きも良い。

 今や珍しくはないが、セルボタンをワンプッシュするだけで、自動的にセルモーターを回し始動状況を判断してモーターを止めるイージースタートシステムを装備。アイドルはメーター読みで1000rpmだったが、デジタル表示の回転計にある1250rpmを示すワンブロックが瞬くことがあったので、1100rpm当たりだろうか。ギヤを入れてクラッチをミートしようとすると、回転計は明確に1250rpmへと上昇しエンストの失敗を防ぐように自動アシストしてくれ、難なく発進でき、微速Uターン等でも扱いやすい。

 総合的な扱いやすさと扱う楽しさからは、足代わりとしてはもちろんツーリングやスポーツライディングまで、まさに万能の魅力が感じられた。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…