ベータRR2T125試乗|乾燥重量94kgの軽さ、コンパクトな車体、シンプルな構造が最高でした。

ベータエンデューロマシンの中で最も軽量であり、コンパクトな車体に125ccエンジンを搭載するマシンがこれ。そしてキック始動のみ、混合燃料、キャブレターとシンプルな構成でまとめられ安心感も絶大だ。
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ベータRR2T125
ベータレッドがカッコイイ。サイレンサーは125なので小さめです。

ベータRR2T125……1,210,000円(消費税10%を含む)

 マシンを見た時にすぐ感じるのは、オールレッドになったカラーリングだ。ベータ社のイメージカラーであるレッドを全身にまとい、そのレッドも鮮やかなもので実にカッコイイじゃないか。
 
 2023年モデルの125は、エンジンにも大幅な改良が施されている。2022年モデルより軽いフライホイールと、小径クランクシャフトを採用しエンジン内部の慣性重量を低減。レスポンスの向上と、素早いアクセルワークに反応するようになった。それに伴ってクランクケース内のボリュームを最適化させるために、新型のケースへ変更されている。また排気デバイスであるパワーバルブも、エンジン改良に伴って最適化されている。2サイクルマシンの中で、この125だけがキック始動オンリーと混合燃料となる。つまり、セルモーターやバッテリー、分離給油のオイルタンクなどが無い訳であり、シンプルな構成となっているのだ。

 当然ながら他機種よりその分軽い。ドライで94kgという軽さは操縦性や取り回しの良さとなり、どんなレベルのライダーにも安心感を与えてくれるのだ。実際跨って揺すってみればこの軽さはすぐに分かる。また250以上の機種と外観では同じに見えるかもしれないが、実は125と200はフレームが違っていて小型化となっている。この辺りは初めからエンデューロモデルとして開発しているベータならではかもしれない。つまりモトクロッサーをベースにセッティングや味付けを変更しているのではなく、エンデューロに特化した設計となっているというわけ。
  フロントフォークはZF製で、2023年モデルより内部の変更も行われた。これはオイル通路の形状変更がなされ、オイルフローが常に適切に保たれるようになった。これによって常にプログレッシブなストロークを実現している。

 試乗したコースはスキー場のゲレンデに設けられていた。黒土の少々マディで岩も混じっているグリップの余りよくない路面であった。傾斜もかなりある。
 跨って最初に感じたのは、思ったよりも足つきが良いかなということ。これは125と200の専用フレームによって、車体が他機種よりコンパクトであることが効いているようだ。ただ2022年モデルの諸元でのシート高は930mmと他機種と同じ。2023年モデルで変更されているのかは不明ながら、明らかに足つきは楽である。ちょっとここで話は横道に逸れるのだが、この125はナンバー登録が可能。日本では新車の125クラスはABSか前後連動ブレーキが義務化されているが、このマシンにABSは無い。なぜ登録可能なのか言うとエンデューロマシンに関してはABS義務は除外されているからだ。ではエンデューロマシンの定義はと言うと、シート高が900mm以上という項目がある。なのでABSが無くてもこのマシンは登録が出来るという訳。足付きは良いと行っても930mmのシート高は決して低くは無い。日本人ライダー向けに低いシート高のモデルが欲しいとは思うものの、900mm以下となるとナンバー登録は難しくなるというジレンマがある。

 さて話が逸れてしまったが、走り出してみると体重85kgと重量級である私なので、125では回転を上げないと良い加速でスタート出来ないかもと考えていた。ところがスルスルとスムーズに発進。あれ? 想像以上に低めの回転からトルクは出ているようだ。そしてそのままアクセルを大きく開けて行くと、トルクの谷は感じずに素晴らしいシャープさで速度が乗って行く。
 パワーバルブが効いているのは勿論、キャブレター吸気ながらもそのセッティングは非常に決まっている。そう、ベータの2サイクルモデルは全てキャブレターなのだ。昨今2サイクルでも燃料噴射が多くなっているが、キャブレターでも何ら問題ない特性を発揮している。
 そして燃料噴射はいざ電気的にトラブルとどうしようもないけど、キャブならば機械的な物なので何とかなるという安心感もある。本当の低回転はまず使う事は無いであろう125であるが、とにかくアクセル開度で1/4あたりから全開までフラットな特性で伸びて行く。フライホイールマスが軽くなっていても十分なトルクが出ており、クラッチは使うとはいうもののエンストする感じはほぼ感じなかった。

 高回転でのシャープさと気持ち良さは最高で、路面へのグリップも良くどんどん速度が上がって来るのは本当に気持ち良かった。
 倒し込みは軽いし、多少振られようとも衝撃吸収に優れたサスペンションや軽い車体で押さえ込みは簡単。切れと繋がりの分かりやすいクラッチもあって、フロントを上げるのも容易い。物凄いガレ場とかでは125なりの苦労(どうしても回転を上げ気味にしてのクラッチ操作など)はあるかもしれないが、それ以外の路面では超楽しく走れる。ブレーキだけど、指1本でも十分な制動力を発揮してくれたしハイスピードからの急制動でも2本で十分ロックまでいける。そしてロックするまでの感触が分かりやすくて非常にコントローラブルだった。ディスク径は大きいけどパッドとの接触面積が小さいウェーブディスク。一見するとこれで効くの?って思うけど、全然気にする必要無しだった。

 クラッチも指1本で操作可能な軽さだし、切れも繋がりもスパッとしていて操作性抜群。確かダイヤフラムスプリングになっているけど、全く違和感無しだった。マジなハードエンデューロに勝ちに行くとかなら、排気量の大きいマシンの方が良いかもしれないけど、ファンライドや遊びで乗る、回転上昇のシャープさを楽しみたいならこの125が超お薦めだ。ナンバー取ってお山に行くにしても、混合を作る手間はかかるがきっと楽しいオフロード時間を過ごせる。

 軽さは最高の走破性、扱いやすさを発揮してくれる。そんなベータRR2T125なのであった。

 ベータRR2T125
回転上げて走るのが超楽しい。シャープだけど扱いやすい特性なので緊張感は少ない。
 ベータRR2T125
グリップの悪い路面でも、引っ掻きながらもグリップしてしっかり前に進む。決してライダーが重いからではありません。

足つき性チェック

 ベータRR2T125
1Gでの沈み込みはそれほど大きくないですが、それでもコンパクトな車体はいかにも扱いやすく感じます。
 ベータRR2T125
新型のタンクシェラウドは足にピッタリで、ライポジに違和感は無く跨った瞬間に馴染むものです。
 ベータRR2T125
足つきはこんな感じ。250以上のとそれほど差が無いように見えますが、その差は数センチなのでしょうが明らかにつきやすくなっています。
 ベータRR2T125
 ベータRR2T125

ディテール解説

 ベータRR2T125
コンパクトなエンジンは、この125のみキック始動オンリーの混合燃料を使用。
 ベータRR2T125
キャブレターはPWK36。125にしては大口径を採用している。
 ベータRR2T125
フロントブレーキはウェーブディスクに、ニッシンの2ポッドスライド式キャリパーを採用。
 ベータRR2T125
シート下には何も無し。他機種ではバッテリーやオイルタンクがある。
 ベータRR2T125
シンプルな構成の125だが、点火系にはドライ(晴れ)とウェット(雨)の切り替えがある。これが切り替えスイッチで押すたびに切り替わる。
 ベータRR2T125
チャンバーはメッキ仕上げで汚れは付きにくく落としやすい。ガレ場などでは当てないようにしたいが、この位置なのでガードはあった方が良いかもしれない。
 ベータRR2T125
キック始動のみなのでキックペダルを装備。125なので踏み応えも軽く、始動性も非常に良かった。通常使用ではキックだけで十分かも。
 ベータRR2T125
インシュレーター横にボルトがあるが、分離給油の200ではここからオイルが入る。この125は混合なので蓋がされているというわけ。
 ベータRR2T125
125と200のエンジンはクラッチカバーにレリーズシリンダーが組み込まれているので、こちら側にホースが接続。
 ベータRR2T125
ZF製のフロントフォーク。セッティングはフルアジャスタブルで、動きは非常にスムーズであった。
 ベータRR2T125
リヤショックユニットもZF製。こちらもセッティングはフルアジャスタブル。ボトムリンクを採用している。
 ベータRR2T125
ハンドルマウントは左右一体の高剛性。位置は前後に調整可能だ。
 ベータRR2T125
ベータRR2T125

キーワードで検索する

著者プロフィール

村岡 力 近影

村岡 力

1956年生。

70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。2輪…