最強の走破性を持つベータ2サイクルエンデューロモデル、その最高峰がRR2T300です!【試乗記】

強大なトルクとパワーを発揮し、その性能をフルに発揮するには高いスキルが必要。しかし、粘り強いエンジンは扱いやすさと乗りやすさも兼ね備えており、エキスパートだけでなく楽しみで乗るライダーにも意外とお薦めだ。

ベータRR2T300……(消費税10%を含む)

ベータRR4T300
タンクシュラウドのデザインが変わり、よりレーシーになった。オールレッドのカラーリングも戦闘的。
ベータRR4T300
ベータRR4T300

2サイクルエンジンを搭載するベータのエンデューロモデルの中で、最も大きな300ccの排気量を持つのがこのRR2T300だ。多くのエンデューロトップライダーが選んでいるこのモデルは、それだけ走破性が高く速さも一級品。
オールレッドとなったカラーリングの23年モデルは、見た目にも洗練されてカッコ良いデザインだ。エンジンは73mm×69.9mmのボアストロークで、この300のみショートストローク設定となっている。
そしてセル始動とエンジンオイルは分離給油となっているので、手間もかからずエンストしても体力を使う事も無い。車重は乾燥103.5kgと250と同じなので非常に軽量に仕上がっている。フレームなど車体周りも250と共通でありシート高は930mm。
ZF製のフロントフォークは、内部のオイル通路形状が変更され、よりスムーズに作動しプログレッシブ効果も高くなっている。ちなみにこの300はヘッドライトやスイッチなど装備されているがナンバー登録は不可で、レースや専用コースのみで走れる。さすがに車検を取るのが厳しいのは理解出来ると思う。

さて跨ってみると足つきはやはりよろしくない。まぁそりゃ930mmもあるシート高なので仕方ない。モトクロスコースやハイスピードのエンデューロコースではこれでいいのだが、エンデューロではややこしい狭い山の中やガレ場、川渡りなど速度を上げて走れない箇所も多い。そんな所ではどうしても足をつきながら進まなければならない事がある。
小柄でもテクニックのあるライダーや、長身長のライダーなら何とかなるかもしれないけど、そうでない一般的な日本人身長のライダーでは苦労する。それも楽しみのひとつと思うならいいけど、レースに勝ちに行くとなると余程の覚悟が必要かもしれない。
走り出してすぐ感じるのは、物凄いトルクが低回転から発生していること。路面によるがドカンと加速し浮かうかしていると体はすぐに遅れてしまうし、フロントがガバッと浮いて来る。心してスタートしないといけない。3速まではアクセルだけで簡単にフロントが浮くし、それ以上のギアではとんでもない速度域まであっという間に加速する。いやいやパワーも凄いしレスポンスも良いし、伸びも300ccあるとは思えないほど。
それでもある回転から急激に上昇することはなく、あくまでもフラットに伸びて行くので扱いやすいのは間違い無い。逆に低回転での粘りもあるから、そんなに回転を上げないでも落ち着いて走る事も可能だ。
そりゃトライアル車のエンジンほど粘る訳では無いけども、モトクロッサーのエンジンに比べれば遥かに粘るということ。なので、全ての性能を発揮させるにはかなりのスキルが必要なのだけど、実は落ち着いて楽しく乗りたいクロスカントリーライダーにも向いているのだ。
サスペンションやブレーキ、操縦性には全く不満は無かった。荒いアクセルワークでは簡単にグリップを失う事もあったが、少し丁寧に路面に合わせたアクセル操作をすればしっかりグリップしてくれる。

いいじゃないこれ!装備で110kgくらいと思われる車重は十分に軽く、転倒したとしても体力損失は少ないだろう。こうして試乗してみると、多くのエンデューロライダーが選んでいるのが理解出来る。最もシンプルで軽い125もいいけど、スキルがあって勝ちに行くと思うならこれだろう。ナンバーを取りたいなら250だが。
2サイクルエンジンのシャープさや音が好きで、レースに出るだけでなくファンライドも楽しみたいならベータの2サイクルシリーズはお薦めと思った。

ベータRR4T300
安直には乗れないけど扱いやすい。しかしフルに性能を発揮させるにはスキルが必要だ。
ベータRR4T300
最高の性能を持つ300は、実はファンライドにも適した特性を持っていた。

足つき性チェック(ライダー身長172cm、体重85kg)

ベータRR4T300
車体の大きさは250と共通なので、その違いはエンジンということになる。
ベータRR4T300
ポジションはどこにも負荷のかからない自然なもの。シートの座面は少々硬めではある。
ベータRR4T300
足付きはこんな感じ。私は身長173cm体重85kgと重い。軽いライダーではもっとツンツンになる。

ディテール解説

ベータRR4T300
非常にコンパクトなエンジン。メンテナンス性も良さそうである。
ベータRR4T300
分離給油の入口はインシュレーターの上部にある。キャブはケイヒンPWK36
ベータRR4T300
油圧クラッチのレリーズシリンダーはドライブスプロケットの前。チェーンガイドがあるのでもしもチェーンが外れても守られる。
ベータRR4T300
シート下にはセル始動用のバッテリーと分離給油のオイルタンク。シートはワンタッチで装着可能。
ベータRR4T300
セルなのでキックペダルは無し。ただし、後付けは可能。
ベータRR4T300
ヘッドライトはH4バルブを採用しているので、明るさは十分。しかしこの300はナンバー取得不可なので、不必要と言えるかも。
ベータRR4T300
フォークはZF製。オリフィスの変更でよりスムーズになった。
ベータRR4T300
リヤサスもZF製でボトムリンク。標準セッティングのままでも不満は無いが、フルアジャスタブルなので好みにセット可能。
ベータRR4T300
リヤブレーキはウエーブディスクにニッシンの1ポッドスライドキャリパーの組み合わせ。
ベータRR4T300
点火系の晴れ用、雨用切り替えスイッチ。長押しではなく1回押すだけで切り替わる。
ベータRR4T300
ステアリングステムにハンドルロックがある。盗難防止だが、レーサーモデルなるので使う頻度は低そう。
ベータRR4T300
新デザインのシェラウド。ラジエターからの空気の流れ、タンクの保護、ニーグリップのし易さなどを備えている。
ベータRR4T300
スイッチは装備されているが、日本では不必要なので取り外して軽量化。
ベータRR4T300
こちらはセルとキルスイッチ。ベータ文字のあるグリップは握りやすく滑りにくいすぐれ物だ。
ベータRR4T300
大径のウエーブディスクにニッシンの2ポッドスライドキャリパーの組み合わせ。効きもコントロール性も抜群だ。

ライダー紹介

ベータRR4T300
村岡力

村岡 力

1956年生まれ。
70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。
2輪メインですが4輪もし時々航空関係も。モータースポーツは長年トライアル1本で元国際B級。
現在は172cm85kgの重量級。業界ではジッタのアダ名で通っています。

キーワードで検索する

著者プロフィール

村岡 力 近影

村岡 力

1956年生。

70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。2輪…