まるでカスタム車のようなスタイルに惚れる人が続出!? ハーレーダビッドソンの新型クルーザー、Breakout 117試乗

1月26日に代官山のT-SITEで日本仕様のBREAKOUTが初公開された話題は既報の通り。それから4週間のインターバルを経た2月22日、お台場周辺の一般公道で報道関係者を対象に試乗会が開催された。注目のブレイクアウト 117の乗り味は如何に。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO● 山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●HARLEY-DAVIDSON JAPAN

ハーレーダビッドソン・Breakout 117…….3,264,800円〜

ビビッドブラック

ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト 117(カラーバリエーション)

ブラックデニム…….3,319,800円
バハオレンジ…….3,319,800円
アトラスシルバーメタリック…….3,319,800円

「ブレイクアウト」はハーレーダビッドソンがリリースする5バリエーション中、“クルーザー”に属す1台で、ひときは高い人気を集めている。5年ぶりの刷新となる2023年型として投入された最新モデルは、同ブランドが誇る最大のビッグエンジンを搭載。いかにもハーレーらいしティアドロップタイプのガソリンタンクも変更され、従来の13.2Lから18.9Lへ一気に5.6Lも容量アップ。このふたつは、特にアメリカン・オーナーの声に呼応して変更されたそう。
従来モデルにはMilwaukee-Eight 114が搭載されていたが、オーナーからは「モアパワーとモアディスタンス(より遠くまで)」を期待する声が上がっていたと言う。それに対する回答が今回のニューモデルに帰結したのである。
同ブランドのパワユニットとしていかにも象徴的な伝統を継承するOHV横置きの45度Vツイン・エンジンは、Milwaukee-Eight 117を新搭載。デュアルバランサー装備で気筒当たり4バルブを持つ空油冷の1923ccエンジンが、改良を加えたSoftail フレームにリジッドマウントされている。
従来の搭載エンジンと比較するとシリンダーボアが102から103.5mmにサイズアップされ、114.3mmのストロークは共通。排気量は1868ccから55cc拡大。同社最大のボリュームを誇っている。
前述の通り、燃料タンク容量も大幅に拡大されて、実用航続距離は100kmほど伸ばされているのも見逃せないチャームポイント。ちなみに燃料消費率の諸元値にタンク容量を積算すると満タンで約337km走れそう。
最大トルクが155Nm/3,000rpmから168Nm/3,500rpmに向上。5,020rpmで発揮される最高出力は70kW(94HP)から76kW(102HP )へと、よりパワフルになっている。
Vバンク中央の右側には、従来のエアクリーナーボックスに換えてヘビーブリーザーインテークを採用。エアクリーナーエレメントが露出した新デザインの採用は、出力特性の向上にも貢献しているという。
その他前後ホイールは細い26本スポークの新デザインを採用。全体的に光り輝くクロームメッキパーツをふんだんに使った仕上がりを誇り、後方へストレートに伸ばされた2into2オフセットショットガンエキゾーストもクロームメッキ仕上げになっている。

大陸的な道へ誘われる

オレンジのラインがさらりと目立つビビッドブラックの試乗車を受けとると、先ずはその堂々たるフォルムに圧倒される。そして改めてロ-&ロングフォルムが印象深い。
見るからに立派なボリューム感と人目を引くゴージャスな存在感からは、やはり只者ではない雰囲気が醸しだされている。
国内4メーカーの製品に同様なカテゴリーのモデルは見当たらない。ふと頭に浮かんだのは、トライアンフ・ロケットⅢとBMW・R-18。いずれも個性的なパワーユニットを搭載するビッグなクルーザーモデルとして贅沢な逸材である。
ブレイクアウトのホイールベースは約1.7mで、同社のラインアップ中最長のレベルにある。ロケットⅢよりも長くR-18よりは短い。 前21、後18インチと言う大径ホイールが採用されており、低く長く、そして太いマッシブなフォルムの割には、全体的にスマートでバランスの良いスタイリッシュな仕上がりが好印象である。
思い切り寝かされたフロントフォーク。細かく刻まれた冷却フィンなどで綺麗な造形を成す横置きの45度Vツインエンジン。リアには超極太の40偏平ラジアルタイヤを履く。
各部のシンプルな仕上げも含め、全体が醸す雰囲気は、まさに大陸的なクルーザーそのもの。“アメリカン”好きにはたまらない、その如何にもなデザインが魅力的である。

シートに跨がり車体を引き起こすと、車重310kgの手応えはズッシリと重い。シート高は665mmと低い。足付き性チェックの写真を参照頂きたいが、両足は膝に余裕を持ってベッタリと地面を捉えることができるので、扱いに不安感は覚えない。
イグニッションはスマートキー方式。それを身につけ右手のメインスイッチをONしてセルスタータースイッチを押すと大きなVツインエンジンは簡単に目覚める。
メリハリのある排気音と鼓動からは、穏やかな雰囲気の中、如何にも図太い力強さが伝わる。不快な振動はなく、850rpmで回るアイドリングからも落ち着きが感じられる。
ロングストロークと45度Vツインから発揮される出力特性は、象徴的なハーレーらしさを遺憾なく表現。ビッグクルーザーと呼べるバイクと、このエンジンとの相性の良さが再認識させられる思いだ。
唯一気になるのは、ライディングポジションについた時のサイズ感。前方のステップに足を投げ出し、同様に両手でハンドルを握ると、両肘はほぼ伸びきってしまう。
腰をシート後方へ押し当てる事もままならず、いかにもアメリカンなサイズに、自分の体格が小さいことに気付く。
実際に購入となれば、豊富なアクセサリーパーツを駆使して、ハンドルバーの位置を手前にするなどの改造を施すことになるのは必至。それもまたオリジナルの1台へカスタムできる要素のひとつと考えればまた楽しいのかもしれない。
それにしても両手で握るハンドルグリップは太く、指にふれるレバーもたっぷりと厚みがある。視野の中に入る燃料タンクも大きくなり、貫祿十分なバイクを操っている乗り味には“特別感”が漂う。
都市部を行く時、周囲のショーウインドウに映る自分の姿をチラ見してみたい気分になるから不思議な物である。

ローギアはやや高めに感じられるが、トルクあふれる出力特性と滑らかな回転フィーリングとが相まって発進は簡単かつスムーズ。 エンジン回転にはそれなりの慣性マスが伴い、上昇も下降も俊敏にレスポンスするタイプではないが、その悠長な感覚がまたとても気持ちよい。
常用域でのトルクが太いので、シフトアップした時でも、低いギア並の加速力を覚えることにビックリさせられる。またシフトダウンを不精してもギクシャクする事なくかなりの粘り強さを発揮する柔軟性も十分。
ミッションは6速あるが、実際には気持ちもユッタリと飛び飛びにシフトを省略して扱うことになるかもしれない。それでもおおらかに対応してくれる雄大なパフォーマンスに魅力を覚える。
40偏平で太い後輪のグリップ力には絶大な信頼感を覚え、ラフなスロットル操作も許容してくれる感じ。それでいて操縦性は癖のない仕上がり。
安定感を誇るフロント21インチホイールとの相性も巧みにチューニングされ、大きく重いバイクを扱う手強さは感じられない。
そもそも大陸的なクルーザーモデル。前方に広がる景色を満喫しながら淡々と快適に走ることを主眼においたバイク。6速トップギアで100km/hクルージングを2,250rpmでこなし遠くまで旅できる。その心地よさがチャームポイント。
スポーティに峠道を攻めるバイクではないが、日本の狭い峠道でもストレスなくかつ強かに各コーナーをグイグイと脱出して行けるポテンシャルも侮れないものだった。
もっともバンク角は28.6度と浅いので、無理する気分にならないという点でもアメリカンクルーザーとしての筋が通っている。
それにしてもただ理由もなく走らせているだけで、とても優雅な気分に浸ることができる。いや、ガレージで佇む姿を眺めるだけでもオーナーの満足感は大きいだろう。ヘビーブリーザーインテークひとつをとっても、ゴージャスかつ斬新な装備として輝いて見えるに違いない。
性能や機能性云々以前に、所有する悦びを存分に満たしてくれる。その立派な存在感を醸す全ての要素に価値があると感じられた。

足つき性チェック(身長168cm / 体重52kg)

ご覧の通り、両足の踵は膝に余裕を持ってベッタリと地面を捉えることができる。シート高は665mmと低く310kgの車重を支えるにも不安感は少ない。

両手両足は前方に投げ出す乗車姿勢となる。筆者の体格では肘が伸び、腰も前寄りの着座となる。アメリカン(大柄)なスケール感が印象深い。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…