手強さ無用のフレンドリーな空水冷フラットツインエンジン。【BMW・R nineT Pure試乗】

王道路線のR1250系とは狙いが異なるフラットツインとして、世界中のライダーから支持を集めているR nineT(アールナインティ)シリーズ。今回試乗したピュアは、価格的にも乗り味的にも、シリーズの中で最も親しみやすいモデルだ。
※試乗車は2020年モデル

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●佐藤恭央(YASUO Sato)

※2021年3月24日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。

ディテール解説

外周にシルバーのリング、中央にBMWのプロペラエンブレムを配置した丸型ヘッドライトは、Rナインティシリーズ全モデルに共通。2021年型ではバルブがハロゲン→LEDに変更された。
アルミ製テーパーハンドルは、ワイドで絞り角が少な目。日本人の感覚だと、もう少し幅が狭いほうが馴染みやすそうである。ブレーキ/クラッチレバーには5段階のアジャスト機構を設置。

原点モデルとレーサーがタコメーターを装備するのに対して、ピュアとスクランブラー、アーバンG/Sはスピードメーターのみ。液晶画面には、オド、トリップ×2、時計、油温に加えて、グリップヒーターの設定を表示。

シートに跨って視線を下方向に移動した際に、左右に突き出たシリンダー&ヘッドが存在感を主張する光景は、フラットツインならでは。容量17Lのガソリンタンクは意外に複雑な形状。
薄くて細身のシートはデザイン重視という印象。残念ながらロングランでの快適性では、王道モデルのR1250系、かつてのR75/5やR100シリーズなどには、まったく及ばない。
シートを取り外す際は、車両に付属するトルクスの工具を使用。なお2017年以降のRナインティはETC2.0が標準装備で、車載器はシート下に収まっている。
ステップはスポーティにしてカスタムパーツ的な雰囲気で、クラシックなテイストは希薄。バーはアルミ地だが、ペダルは左右ともラバーを装備。
DOHC4バルブ空油冷フラットツインは、2010~2013年型R1200シリーズ用がベース。2020年型までの最高出力は110ps/7750rpmだったものの、2021年型は109ps/7250rpmとなった(116Nm/6000rpmの最大トルクは不変)。

空水冷フラットツインの吸排気の方向が上→下になったのに対して、空油冷フラットツインは昔ながらの後方吸気・前方排気。

マフラーはシンプルな左側1本出し。ちなみに、原点モデルのRナインティはダウンタイプの2本出し、スクランブラーはアップタイプの2本出しを採用している。
アルミキャストホイールのサイズは、現代的な3.50×17/5.50×17。ブレーキは、F:φ320mmディスク+対向式4ピストン、R:φ265mmディスク+片押し式2ピストン。
リアまわりにはシャフトドライブのクセを打ち消す、BMW独自のEVOパラレバーを採用。タイヤサイズはフロント120/70ZR17・リヤ180/55ZR17で、試乗車はメッツラーZ8を装着。

フロントフォークはφ43mm正立式、リアショックは直押し式モノショックで、ストロークは前後とも120mm。なお2021年型のリアショックは、工具を使わずにプリロードが調整できるようになった。

主要諸元

エンジン:空油冷4ストロークDOHCボクサーエンジン2気筒、8バルブ
ボア x ストローク:101 mm x 73 mm
排気量:1,169 cc
最高出力:80 kW(109PS)/ 7,250 rpm
最大トルク:116 Nm / 6,000 rpm
圧縮比:12.0 : 1
点火 / 噴射制御:電子制御エンジンマネージメントシステム(DME)、燃料カットオフ機能付
エミッション制御:三元触媒コンバータ、排ガス基準EU5をクリア
燃料種類 :鉛プレミアムガソリン
WMTCに基づく100km当たり燃料消費:5.1 L
オルタネーター:720 W
バッテリー:12V / 12Ah、メンテナンスフリー
クラッチ :油圧式クラッチ
ミッション:常時嚙合式 6段リターン
駆動方式 :ドライブシャフト式
フレーム :スチールパイプ製4ピースフレーム
フロントサスペンション:テレスコピック式43㎜フロントフォーク
リアサスペンション:BMW Motorrad パラレバー、センタースプリングストラット、片持ち式スイングアーム、可変リバウンドダンピング調整、プリロード油圧調整式
サスペンションストローク:前後120㎜
軸距(空車時):1,500mm
キャスター:105 mm
ステアリングヘッド角度:63.4°
ホイール :スポークホイール
リム、フロント:3.50 – 17"
リム、リア:5.50 – 17"
タイヤサイズ:フロント120 / 70 ZR17・リヤ180 / 55 ZR17
フロントブレーキ:デュアルディスクブレーキ、直径320 mm、4ピストンキャリパー
リアブレーキ:シングルディスクブレーキ、直径265 mm、2ピストンフローティングキャリパー
ABS:BMW Motorrad ABS Pro
シート高、空荷時:805 mm(プレミアム・ライン)/775 mm(プレミアム・スタンダード)
インナーレッグ曲線、空車時:1,785 mm(プレミアム・ライン)/1,730 mm(プレミアム・スタンダード)
燃料タンク容量:17 L
リザーブ容量:約3.5 L
全長:2,110 mm
全高(ミラーを除く):1,100 mm
全幅(ミラーを除く):870 mm
車両重量 :222 kg
許容車両総重量:430 kg
最大積載荷重(標準装備時):211 kg

キーワードで検索する

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…