キムコの125ccスクーターは意外と”攻めの走り”が楽しめる。|レーシングS125試乗

台湾のトップブランドとして知られているキムコは、現在日本市場向けに8機種のスクーターをリリース。その内の4機種は原二スクーターで、今回のRacing S 125は前後に12インチサイズのホイールを履くオーソドックスなスポーツスクーターである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●キムコジャパン株式会社

キムコ・RACING S 125…….324,500円

マットホワイト
ルビーレッド
マットブラック
マットシルバー

 2017年11月に新登場。フレームやエンジンが刷新され、先代モデルに対して4kgの軽量化を果たして話題をまいた。兄弟モデルに既報の150があり、両車はほとんど共通のデザインで仕上げられている。
 125のカラーバリエーションは当初2種類だったが、2018年から倍に増強されて全4タイプが揃えられている。ちなみに150は3タイプだ。
 両者は基本的に共通と記したが、装備内容やピリオンステップ周辺とリヤフェンダー等のデザインには違いがある。ひと目で区別できるのは、フロントウインカーまわりのハンドルカバー部が150はブラックで統一されているのに対して125は、それぞれのボディカラーと同色塗装が施されている。

 前後ホイールに12インチサイズが選択されたこのクラスのスクーターとしては、至って標準的なサイズと言える。ライバルはヤマハ・シグナスXだが、それよりもさらに少しコンパクトである。
 車体及び足まわり、エンジン、そして外観デザインも全て新開発されたニューモデルとして市場投入され、12インチサイズの前後タイヤには台湾産のKENDA製K702ハイグリップタイヤを採用。
 アンダーボーンフレームには、高強度T.H.F.(チューブ・ハイドロ・フォーミング)で成形されたメイン&サブパイプを使用し前モデル比で1.9kg軽い15.9kgに仕上げられた。
 ちなみにT.H.F.とは「パイプに液体を封入し、数千トンの超高圧をかけることでパイプを膨張させ成型する製法」(キムコジャパンの公式サイトから引用)だそう。
 車体の外側に一部を露出させたサブパイプ形状等と相まって、縦剛性を強化。振動や衝撃の分散化及びバランスの良い高剛性フレームを実現。タンデムステップ&ステーにアルミ製を使用。全体で3.1kg の軽量化を達成している。
 また車体は40度のバンク角を確保。片側2ピストンのフロント油圧ブレーキはφ27mmという大径ピストンのキャリパーを採用。ブレンボ製キャリパーへの換装も考慮され、サスペンションも含めて改造への対応にも抜かりは無い。
 搭載エンジンは新設計のクランクを始め軽量ピストンに低張力ピストンリングを採用。4バルブのSOHC駆動機構にはローラーロッカーアームを使用し低フリクション化が徹底されている。
 吸気系にはKEIHIN製Step-4-2と呼ばれるコンパクトな8孔式インジェクターを採用。φ24mmのスロットルボディや燃料噴射制御のECUと各種センサーも一新された。

THF(チューブ・ハイドロ・フォーミング)技術を採用して新開発されたアンダーボーンフレーム。

力強いフォルムと適度なサイズ感が好印象。

 
 試乗車に跨がると、至って普通のサイズ感がとても親しみやすい。昨今、サイズの大きなスクーターが主流となっているだけに、比較的コンパクトな標準的乗り味が改めて新鮮に感じられた。
 通勤通学等の需要には置き場所も含めてコンパクトな車体の方が好都合な事が多い。これより小さな廉価版もあるが、乗り味に安定感のあるサイズとして丁度良い選択になると思えたのである。
 ステップスルーのフラットなフロアを持つスタイルにも親しみやすさがあり、シートへのアクセスが容易。跨ぐのではなく腰掛けるように座れる乗り味はとても楽で、スピーディーな使いやすさが光る。シート下収納も含めて機能的な実用性に優れている。
 元々筆者の頭の中にある、“スクーター”の標準形は、まさにこんなタイプなのだ。補足しておくと特にバイク用ウエアに拘る事なく、椅子に腰掛ける様に膝を揃えて気楽にかつサクッとアクセスできる。リラックスして快適に走れる便利な移動道具というイメージである。

 もちろん試乗車もそんな機能性を遺憾なく発揮してくれる。ただ、走り始めるとRacing Sと言うネーミングに相応しい雰囲気がある事に気付くのだ。
 そのポイントはライディングポジションにある。両足の置き場が前後方向にかなりの自由度があり、前方に突っ張る事もできるし後方寄りのポジションでは左右への積極的な体重(荷重)移動を掛けやすい。
 急ブレーキ時の減速Gで身体が前に動くのを防げるし、コーナリングや切り返しの体重移動で、積極的にコントロールしやすい。つまり人車一体感を高めてスポーティに走らせる事も楽しめる。
 さらに言うと、車体は40度の深いバンク角が確保されているから、コーナーを攻め込むみたいなスポーティな走りを楽しむ事への許容度が高いのである。

 その走りは軽快でシャープ。実際操舵レスポンスはクィックで、スポーティーに走らせたい人にも適応するポテンシャルがある。
 8,000rpmからレッドゾーンのエンジンも、そこそこキビキビと吹け上がる元気の良さが印象的。通常は5,500~6,500rpmあたりでスムーズな加速性能を発揮。スロットル全開では7,500rpm前後で、走りはそれなりにパワフル。回転の伸びはやがてレッドゾーンまで到達する。
 高速道路を走れない原付二種なので、市街地でのパフォーマンスに的を絞ったセッティングが奏功し、何不自由のない走りを発揮してくれる。
 試乗当初は操縦性について、微妙にハンドルが切れ込む癖が感じられたが、直ぐに慣れてしまえるレベル。むしろクイックに切り返したり、タイトなU ターンも自由自在に扱えるようになり、スポーティに走る(操る)楽しさを覚えたのが印象的だった。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

それなりにしっかりとしたサイズ感のある乗り味。シート高は790mm。ご覧の通り両足はベッタリと地面を捉えることができる。ステップフロアは前後に長く、足を置く位置の自由度が高い。

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…