これはありがたい!大型スクリーンとボックス標準装備のキムコ・Tersely S 125。街乗りもビジネスも即戦力に!

キムコ・Tersely S 125…….286,000円
欧州ではしっかりと市民権を得ているスクーター。ステップスルータイプに大径ホイールを履くスタイルが最大の特徴。既報の150と基本的に共通の原二モデルである。

REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力⚫️キムコジャパン株式会社

キムコ・Tersely S 125…….286,000円

マットシルバークリスタル

ディープブルーメタリック

 ご覧の通り、どこかビジネスライクなスクーターである。
 戦後復興期、軽4輪自動車が普及する迄の第一次スクーターブームで、主に銀行マンが営業の足としてラビットやシルバーピジョンを活用していた時代を知る筆者にとっては、フロントスクリーンとトップケースを備えたそのスタイルからは、ついビジネス用途をイメージしてしまう。
 このカテゴリーをビジネス用途に括る必要はないが、アクセスが容易なステップスルータイプのフラットなフロアを持つ事と、ウインドプロテクションに優れるスクリーンの存在は、ビジネススーツで乗る事も許容してくれる事は間違いないのである。
 フロントに16インチ、リヤに14インチと言う大径ホイールを履きながら、豊かなクッション容量があるダブルシートの下には十分にゆとりあるラゲッジスペースを備え、さらにリアキャリア上には純正33L容量のトップケースも標準装備。
 これで価格は28万6,000円である。直ぐに思い浮かんだのは、スーパーカブC125の存在。カテゴリーを始め、歴史やその信頼性を含めたブランド力にも違いがあるとは言え、その価格は44万円也。なんと15万4,000円もの価格差がある。
 同様なカテゴリーにあるDio110は24万2,000円とこれもまたリーズナブルだが、125ccエンジンを搭載し、スクリーンやトップケースが標準装備されている事を考慮すると、Tersely S 125 のお得感はハンパない。

 車格的にはスーパーカブC125よりもひとまわり大きく、車重も20kg重い130kgある。カラーバリエーションは2タイプあり、それぞれに異なるシートカラーをマッチ。どこか大人びたセンスと上質な雰囲気が漂っているのも印象深い。
 
 エンジンは空冷のSOHC4バルブ単気筒。ボア・ストロークが54×54.5mmと、ごくわずかにロングストロークな124.8ccでRacing S 125のユニットがベースになっている。チューニングの度合いは高くそれよりも高回転高出力を発揮。最大トルクは同じながら、それより500rpm低い7,000rpmで発揮している。
 サスペンションはスクーターとしては常識的なリア・ユニットスイング方式。フロントのテレスコピックフォークはφ33mmサイズの正立式を採用。リヤは2 本ショックタイプで3段階のプリロード調節できる。
 ブレーキは前後共にシングルディスクブレーキで、BOSCH製の2チャンネルABSを標準搭載。その他灯火類はLED式を採用。アクセサリー電源を取り出せるUSBソケットはシート下収納部とステアリングヘッド右側の2箇所に装備。スマホ2台の同時充電ができる上にソケットの使用状況がメーターにディスプレイされる。

バイク的乗り味とスクーター的機能の融合具合が魅力。

 ハンドルを手にし、車体を起こしてサイドスタンドを跳ねる。あるいはメインスタンドを立てた車体を前へ押し出すと、125ccクラスのスクーターとしては、ズシッと扱いに重さを感じる。
 車重は130kg。ホイールだけでなく車体サイズもなかなか大柄で立派である。ステップスルーのフラットなフロアは、車体脇からスッと乗り込め、高さ790mmのシートにも簡単に腰掛けることができる。
 車体は大柄でもバイクに近いスマートなデザイン。足つき性は良く、車幅も700mmと意外に狭い。乗車姿勢を取るとニースペースやステップスペースも前後方向にユトリは少ない。さらに眼前にあるスクリーンが近く、少しタイトな乗り味が印象深い。
 ちょっと上体を前傾させたり、跨がったまま車体を押し出すような動作をした時に、不意に顔(ヘルメット)をスクリーンにぶつけてしまう事があった。しかしその一方でタンデムライディング時の快適性にも配慮されているように感じられた。
 自然と背筋を伸ばし、姿勢を正したライディングポジションがとれ、目線の高い乗り味も好印象。通勤等、朝一番の走りが颯爽とした気分になれそうである。
                     

 走りは決してパワフルではない。乗車フィーリングとしてはマイルドでやや大人しめ。それでも原二スクーターとしてのポテンシャルに不足はない。市街地で通常の流れに乗って普通に走る時は、大体5,500rpm前後を使用して難なく走る。
 より速い加速を求めて右手をワイドオープンすると6,500rpm前後、そして全開にした時は7,500rpmで元気の良い加速性能を発揮し、エンジン回転もさらに伸びていく。高速を走らないクラスとしては、十分なパフォーマンスが感じられた。
 高い位置までスクーリーンがあるせいか、操縦性は扱いとそれに対する挙動がゆったりとしている。軽快ではなく、クイックでもない。が逆に落ち着きのある乗り味が楽しめるのである。
 大径ホイール採用のメリットも遺憾無く発揮され、直進安定性が素晴らしい。旋回時や悪路走行でもフットワークに優れ、安心感があり乗り心地は快適。
 大型スクリーンによる抜群のウインドプロテクションも魅力的。比較的カジュアルな服装で乗れてしまえるメリットも大きいと思えた。もちろんビジネススーツ姿でも大丈夫。
 収納設備の十分な備えと共に、移動道具としての利便性に独自の魅力が感じられた。そしてやはり、試乗後一番の感想はコスパに優れる魅力が見逃せないと思えたのである。

足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)

シート高は790mm。アイポイントの高さはバイクに乗る感覚と同レベル。車体がスマートなので、ご覧の通り両足は楽に地面を捉えることができる。

キーワードで検索する

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…