新型「ベントレー コンチネンタルGT」を極上サーキットで試乗

極上サーキットで新型「ベントレー コンチネンタルGT」を試してわかった大いなる進化

6月に新型コンチネンタルGTが、続く9月には新型フライングスパーが登場。今回、短時間ながらその両車に試乗する機会を得た。外観に大きな変更点はないものの、ベントレーはどちらもフルモデルチェンジと称する。その理由はどのあたりにあるのか。
最もわかりやすい変化は丸型4灯から2灯になったヘッドライトだろう。シングルヘッドライトが採用されるのは1959年の「S2」以来とか。
6月に新型コンチネンタルGTが、続く9月には新型フライングスパーが登場。今回、短時間ながらその両車に試乗する機会を得た。外観に大きな変更点はないものの、ベントレーはどちらもフルモデルチェンジと称する。その理由はどのあたりにあるのか。(GENROQ 2024年12月号より転載・再構成)

Bentley Continental GT Speed

2世代ごとに完全刷新

先代モデルの登場から7年、ベントレーの高級スポーツツアラー「コンチネンタルGT」が新型に生まれ変わった。一見したところ内外装のデザインはあまり変わっておらず、当初は「ビッグマイナーチェンジでは?」と思ったもの。だが、このクラスを購入する富裕層は大胆なイメージチェンジを好まないのが通例。だからいかに“変えずに変えるか”が鍵になってくるわけで、事実、コンチネンタルGTも初代から2代目にスイッチしたときはビッグマイナーチェンジレベルだった。ベントレー的には2世代ごとに完全刷新するというのがモデルチェンジのセオリーなのだろう。

そして細部を見ていくと、確かに変更点が多いことに気づく。最大のトピックはついにプラグインハイブリッド(PHV)化されたことだろう。パワートレインは4.0リッターV型8気筒ツインターボ(600PS/800Nm)に強力なモーター(190PS/450Nm)を組み合わせ、システム総合で782PS/1000Nmと、ついにスーパースポーツレベルのハイパフォーマンスを手に入れた。先代「スピード」は6.0リッターW型12気筒ツインターボで659PS/900Nmだったから、排気量をダウンサイズしつつ実に123PS/100Nmを上乗せしてきたことになる。

バッテリーはトランクの床下に置かれ、容量は25.9kWh。なかなかのサイズといえるが、これにより最長81kmのEV走行を可能にしている。ここまで聞いてピンときた方は鋭い。そう、パワートレインの基本構成やスペックはポルシェ・パナメーラのトップグレード「ターボS Eハイブリッド」と共通なのだ。来日したエンジニア氏に聞けば、開発にあたってはグループ内の各ブランドがパワーやシステム重量、EV走行距離など必要な要件をそれぞれ出し合い、すべての項目で目標を上回るべく共同で開発を進めたという。

先代以上の重厚感

さて、そんな新型コンチネンタルGTの試乗会は、千葉県南房総市にある会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」内のサーキットで行われた。試乗車は欧州仕様で、ナンバーはまだ付いていない。今回はアジア・パシフィック地域の国際試乗会ということで、日本人以外のアジア人プレスの姿も数多くあった。

クルマに乗り込むと、インパネやステアリングの造形は見慣れたコンチGTのそれである。センターコンソールにATのセレクターレバーが屹立している様に少し安心する。走行モードは「B(ベントレーモード)」「コンフォート」「スポーツ」「カスタム」の4種類だが、まずはデフォルトの「B」でスタート。だがスターターボタンを押しても、いつもの目覚めのひと吠えは起こらない。バッテリーに残量さえあれば、滑り出しはモーターのみで行われるからだ。

少し拍子抜けしつつアクセルを踏み込む。普通のハイブリッドならある程度車速が乗ったところでエンジンが始動するものだが、コイツはスルスルとモーターだけでどこまでも行ってしまう。この日はスタートから130km/hまで、それなりの上り坂を駆け上がるシーンでもモーターのみで走り切ってしまった。

そんな静寂に包まれたキャビンで乗り味をよく観察すると、先代以上に重厚感があることに気づく。「車重のせいかな?」と思い調べると、新型の2459kgは先代より186kgも重くなっていた。ご存じのように重さは乗り心地に効く。つまりハイブリッド化で燃費を改善しつつ、さらなる高級感をプラスしてきたというわけだ。サスペンションもデュアルバルブの新ダンパーにこれまた新開発となるデュアルチャンバーエアスプリングと、大胆に刷新されている。今回はサーキットで路面が極上だったから断言はできないが、この新しいサスペンションもいい仕事をしているのだろうと推察できる。

極めて自然なハンドリング

6月に新型コンチネンタルGTが、続く9月には新型フライングスパーが登場。今回、短時間ながらその両車に試乗する機会を得た。外観に大きな変更点はないものの、ベントレーはどちらもフルモデルチェンジと称する。その理由はどのあたりにあるのか。
6月に新型コンチネンタルGTが、続く9月には新型フライングスパーが登場。今回、短時間ながらその両車に試乗する機会を得た。外観に大きな変更点はないものの、ベントレーはどちらもフルモデルチェンジと称する。その理由はどのあたりにあるのか。

そしてMAGARIGAWA名物のアップヒルを前にアクセルを強く踏み込むと、ここではじめて4.0リッターV8が始動。併せて走行モードを「スポーツ」にする。登りコーナーのため常にリヤに荷重が掛かっていることを差し引いても、新型は明らかに鼻が軽い。エンジンが12気筒から8気筒になるとともに重いバッテリーをリヤに積んだので前後重量バランスが改善。そのことを明確に感じ取れるのだ。さらに後輪操舵システム、48Vで高速制御されるアクティブアンチロールバーまでを備えるのだから鬼に金棒。

先代スピードはパワフルだがフロントヘビー、かつそれなりにロールするからクルマをどうコントロールしてやるか、頭をフルに使いつつヒリヒリしながら走らせたものだった。それがコンチGTのキャラクターとも思っていたのだが、新型ではそんなクセが雲散霧消。極めて自然なハンドリングを手に入れている。その上で上質な乗り味に磨きまでかけてきたのだから、これを正常進化と言わずに何と言おうか。今回はたったサーキット4周、170km/h程度までのチョイ乗りだったので試せないことも多かったが、それでも新型の実力の片鱗は十分に感じられた。後日、また改めてじっくりと試してみたい。

2030年までに全モデルのEV化を目指すベントレー。この新コンチネンタルGTは、その過程において電気駆動のウェイトを確実に高めてきた。ベントレーの今後を占う上でも重要な1台といえるだろう。

REPORT/市原直英(Naohide ICHIHARA)
PHOTO/Bentley Motors
MAGAZINE/GENROQ 2024年12月号

SPECIFICATIONS

ベントレー・コンチネンタルGTスピード

ボディサイズ:全長4895 全幅1966 全高1397mm
ホイールベース:2851mm
車両重量:2459kg
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:3996cc
最高出力:441kW(600PS)/6000rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2000-4500rpm
モーター最高出力:140kW(190PS)
モーター最大トルク:450Nm(45.9kgm)
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35ZR22 後315/30ZR22
最高速度:335km/h
0-100km/h加速:3.2秒
車両本体価格:3930万3000円

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797
https://www.bentleymotors.jp/

ラインナップの電動化を進めるベントレーは、2026年にブランド初となるフル電動ラグジュアリーアーバンSUVの投入を予定している。

ベントレーが「新経営戦略ビヨンド100+」発表「2035年までPHEV開発・販売延長を宣言」

ベントレー モーターズは、2035年をターゲットにした新たな経営戦略「ビヨンド100+(Beyond100+)」を発表した。2026年には同社初となるフル電動モデルを投入するが、ラインナップの完全電動化の達成目標を2030年から2025年に変更。PHEVモデルのライフサイクルを延長する。

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