目次
Aston Martin DBX707
生まれ変わったDBX
「ヴァンテージ」「DB12」そして「ヴァンキッシュ」と、最近のアストンマーティンは次々と新モデルを送り出してくる。アストンマーティンほどの規模のブランドがこれほどのペースでモデルをブラッシュアップしてくるのには驚きだが、それほどにこのラグジュアリークラス市場は競争が激化しているということだろう。もちろん現在のアストンマーティンにはそれを迎え撃つだけの体力があるということの証でもある。
そのアストンマーティンを支える存在といえば、やはり「DBX」だ。ラグジュアリーブランドのSUVとしては比較的後発であったが、その美しいフォルムと走りの素晴らしさで今やラインナップ中でも一番の人気車となっている。そのDBXが登場から5年経とうかというタイミングで新型へと生まれ変わった。と言ってもご覧の通り、新型と呼ぶのは憚られるほど以前と変わらない。それだけDBXのデザインの評価が高いということでもあるが、これは従来型オーナーにとってはありがたいことかもしれない。
外観上の最大の違いはドアミラーで、角度調整はミラー面ではなくカバーを含む全体が動いて行うようになった。他のアストンマーティンでも新型から導入されているシステムだが、可動しないぶんミラーの面積が大きくなっているので、実用上のメリットも大きいと言える。
最新デザインへ完全刷新
外観を見て、違いがほとんどないことに安心した旧型オーナーは、ドアを開けてため息を漏らすだろう。インテリアはアストンマーティン最新のデザインへと完全に刷新されているのだ。シフトボタンはオーソドックスなレバー式に、エンジンスタートボタンとドライブモード選択スイッチを一体化し、その周囲にオーディオのボリュームやエアコン温度調整のロータリースイッチを置くなど、ブラインドタッチも楽々なスイッチ類はとても扱いやすい。
天地の高さに余裕があるDBXはインパネ下に充電もできるスマートフォン置き場があったり、センターコンソールをブリッジ状にしてその下に収納スペースを設けるなど、実用性も非常によく考えられている。ドライビングポジションも完璧だし視界も良好、そしてこの試乗車は赤のレザーという華やかなカラーということもあり、気分は自然と華やいでくる。グラスルーフのシェードを開ければ、レッドカーペットの主人公にでもなった気分だ。
車名通りの707PS
エンジンやトランスミッションは従来通り。DBXは標準モデルと高性能バージョンの707がラインナップされていたが、現在は標準モデルの受注は停止している。今回の車両も707で、パワーは車名通りの707PSと900Nmを発揮する。ユーザーの選択肢という意味では標準仕様もあった方がいいと思うが、今後復活するのだろうか。
707PSのV8ツインターボというスペックから想像するよりも、はるかにジェントルな挙動を見せるのは従来通りだが、新型はやや足さばきがスムーズになったようだ。アナウンスはされていなくとも、その辺りのリファインが行われているのかもしれない。そして強く踏み込むと怒涛の勢いで2.2tのボディを押し出すが、他のハイパフォーマンスSUVと違ってそのパワーの出方もジェントルなのは、さすがアストンマーティン。大きすぎないサウンドも含め、イギリス流の大人の振る舞いは実に心地いい。
REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2025年 1月号
SPECIFICATIONS
アストンマーティンDBX707
ボディサイズ:全長5039 全幅1998 全高1680mm
ホイールベース:3060mm
車両重量:2245kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:520kW(707PS)/6000rpm
最大トルク:900Nm(102kgm)/275-4500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前285/40YR22(10J) 後325/35YR22(11.5J)
0-100km/h加速:3.3秒
最高速度:310km/h
車両本体価格:3490万円