フェラーリの“アプルーブドカー”が新車同然の品質を保つ理由

フェラーリの“アプルーブドカー”購入はファミリーとしての通過儀礼「新車同然の品質はどのように保たれる?」

フェラーリはたとえ年月を経ても素晴らしいが、電動モデルはモーターやバッテリーなど新しい要素が多い……。
フェラーリはたとえ年月を経ても素晴らしいが、電動モデルはモーターやバッテリーなど新しい要素が多い……。
フェラーリはたとえ年月を経ても素晴らしい──。それは数多くのオーナーが認めるところであろう。だが電動モデルはモーターやバッテリーなど新しい要素が多い。そういった不安要素を取り除く新しい試みを取材した。

Pre-Owned Ferrari

続々と誕生する電動モデル

車両状態は診断機と接続することで画面上でもチェックできる。例えばカーボンブレーキの摩耗率などを数値で見られるのだ。
車両状態は診断機と接続することで画面上でもチェックできる。例えばカーボンブレーキの摩耗率などを数値で見られるのだ。

203X年、定年退職した私は、退職金を元手に憧れのフェラーリを手に入れた。しかも思い出深い296GTBである。これから、免許返納まで、フェラーリとの甘い生活を楽しもう──そう思った矢先にプラグインハイブリッド(PHV)の要たる高電圧バッテリーがダウン! 修理費の見積もりを見て、失意のうちに手放すことに……。という作り話は、しがない零細出版社社員には見果てぬ夢だが、実際に跳ね馬を購入できる人にとっては、気が気じゃない話ではなかろうか。

フェラーリが矢継ぎ早にPHVモデルを誕生させている。気がつけば2019年デビューの「SF90 ストラダーレ」を皮切りに、2021年デビューの「296 GTB」など続々と電動モデルが誕生している。今年、フェラーリはそれらのPHV車を対象とした新延長保証サービス「ワランティ・エクステンション・ハイブリッド」と「パワー16」を2025年に向けて充実させることを発表した。2~4年間更新可能な、この2つのプログラムの目的はフェラーリの電動スポーツカーの性能を新車同様に維持することだ。

実はフェラーリ製PHVには、すでにハイブリッド・コンポーネントの5年保証が存在している。しかしワランティ・エクステンション・ハイブリッド・プログラムで保証を8年目まで延長した場合、包括的な保証の延長だけでなく、追加費用なしでバッテリーを交換できるという。これは恐ろしく大きい保証だろう。

バッテリーに最新の技術を適用することも

さらにハイブリッド・システム関連を含むパワートレインの主要コンポーネントのメーカー保証を8年から16年まで延長するパワー16も用意される。これは現在の15年目までのエンジン車向け延長保証「パワー15」を1年延長し、PHVも保証範囲に含めるというものである。

これらをフルに使えば8年目と16年目にバッテリーを交換することができるという。しかも両プログラムとも、将来バッテリー性能が向上した場合、バッテリーには最新の技術が適用されるという。つまり2020年型SF90の性能が2028年、望めば2036年まで延長でき、あわよくば高性能化されるのだ。

ちなみにこれらのプログラムはフェラーリの他の延長保証と同様、オーナーが変更されても適用される。こういったオーナーが変更されたフェラーリはプレオウンド車両と呼ばれ、フェラーリが細部にわたりその真正性をチェックして認定が得られた車両がアプルーブドカー、つまり認定中古車として販売されるという。

新たにファミリーに入る人間のいわば通過儀礼

だが、そこはフェラーリ。一般的な中古車のような扱いはされないという。もともとフェラーリは1台1台にそれぞれのオーナーのこだわりが詰め込まれた特別な車両である。ボディカラーはもちろんインテリアはシートのステッチの色まで、あるいはADASやエンジンルームまで望めばいくらでも自らの仕様に変更できる。その特別な1台を購入するということは、前オーナーの意思を受け継ぐようなものだ。そのアプルーブドカーを購入することは、新たにファミリーに入る人間のいわば通過儀礼と言ってもいい。

それに、実のところ、新車をオーダーするには、それなりの時間がかかる。せっかく手に入れるなら、シートやステアリングなどの内装のほか鍛造ホイールまで吟味を重ねたいものだ。だから新車が届くまでの間、運良く自分の好みに合致するアプルーブドカーがあれば、待ち時間を埋めてくれるかもしれない。

今回、アプルーブドカーを認定するプログラムとはいかなるものか、どのように車両チェックが行われたかを取材した。チェックリストは201もの項目があり、外観はもちろん細部に至るまで確認され、もし損傷があれば後で補修する。次に内装や電気系統の状態をチェック。当然エンジンを始動し、タイヤの空気圧やホイールの状態を確認する。必要に応じて車両の試走を行い、計器類が正常に機能するか、風切音やエアコン、ラジオの動作確認が行われる。準備が完了したら、チェックリスト、写真を整理し、顧客への納車準備を整える。これらのチェック作業には車両の状態によって異なるが、1台約6〜7時間かかるという。塗装作業や不具合がある場合は当然さらに時間がかかる。

新車の輝きを失わないアプルーブド

今回、取材の終わりに実際に8000kmを走行した296GTBに一般道とサーキットで試乗できた。スペシャリストによる201ものチェックを経たものだ。そして、その乗り味は言うまでもなく新車の輝きを失っていなかった。フェラーリは生産された個体の90%が現存しているという。アプルーブドカー購入は、ファミリーとして火を絶やすことなく、自らも歴史の1ページになることを意味するのかもしれない。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/Ferrari S.p.A.、GENROQ

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…