【ランボルギーニ ヒストリー】スーパーカーの王者「カウンタック」誕生

ランボルギーニの象徴「カウンタック LP400」の誕生秘話(1973-1978)【ランボルギーニ ヒストリー】

【ランボルギーニ ヒストリー】スーパーカーの王者「カウンタック」デビュー
ランボルギーニのみならずスーパーカーを代表するカウンタック。プロトタイプであるLP500に改良を施し、ついにLP400として結実する。
プロトタイプとしてジュネーブ・ショーでお披露目され、世界中に衝撃を与えたLP500。排気量を4.0リッターに変更するなど様々な改良を施し、ついに「カウンタック LP400」としてリリースされる。

Lamborghini Countach LP400

ピンチの中で誕生した傑作「カウンタック」

プロトタイプのLP500から一部デザインを改めた市販型のLP400。NACAダクトの追加やリヤのエアインテークなど、主に熱対策を目的に変更が加えられた。

1971年という年は、ランボルギーニのヒストリーを語るうえで非常に重要な意味をもつ年だ。カウンタックのプロトタイプであるLP500が同年のジュネーブ・ショーで初公開されたという華やかな一面がある一方、正確には自動車を生産するアウトモビリ・ランボルギーニ社の親会社ともいえるトラクター製造会社、ランボルギーニ・トラットリーチ社の経営が大型受注の一方的なキャンセルを受けて急速に悪化。フェルッチオ・ランボルギーニはトラットリーチを売却するとともに、アウトモビリの株式もその51%をスイスの実業家、ジョルジョ・アンリ・ロセッティに売却。それはすなわちアウトモビリにおける支配力を急速に弱めたことを意味していた。

だがそのような中でも、パオロ・スタンツァーニをチーフとするエンジニアリング・チームは、カウンタックのプロダクションモデルの開発に試行錯誤する日々が続いていた。なお、ほぼ同時期に8気筒モデルのウラッコがようやくデリバリーを開始しているから、フェルッチオがランボルギーニを去る直前の数年間、スタンツァーニがいかに多忙な日々を極めたのかは想像に難くないだろう。

改められたスペースフレーム

コクピットのデザインはプロトタイプから大きく変更された。それでも計器類を一直線に並べたデザインや高いセンタートンネルなど、独自性は強い。
V型12気筒エンジンの排気量を4.0リッターに改め、車名もLP400に変更。デザイン優先のプロトタイプからより現実的になったリヤ周りだが、それも最高速度300km/h超えを実現させるためだった。

プロトタイプのLP500をプロダクション化するための作業は、その基本構造体を見直すことから始まった。さらなる軽量化と高剛性を得るために、丸型そして角型断面をもつ鋼管を組み合わせたスペースフレームが新設計され、これはマセラティのバードケージにも匹敵する機能美を感じさせた。そこにルーフこそスチール製とされたものの、ほかはほとんどすべてのパートをアルミニウムとしたボディが組み合わされた。ボディはスペースフレームやロールケージの役割を果たす上部構造体に接合される。よって美しい機能美を誇るスペースフレームは、残念ながらそれを見る機会は限られている。

ガンディーニが描いたボディも、主に冷却効率と空力特性を向上させるために、さまざまな改良が施された。ドアからリヤフェンダーにかけてのNACAダクトや、リヤフェンダー上のエアインテークボックス、バンパーとしての機能を果たすようになったフロントノーズや新しいサイドウインドウのフレームワークなどはその代表的な例だ。

インテリアもLP500と比較すればきわめてオーソドックスなフィニッシュとなり、左右のバケットシート間には、その下にトランスミッションが存在していることを証明するかのように幅広のセンタートンネルが存在する。

4.0リッターV型12気筒エンジンは375PSを発揮

【ランボルギーニ ヒストリー】スーパーカーの王者「カウンタック」デビュー
ランボルギーニ カウンタック LP400のカタログ。複雑な構成の鋼管スペースフレームと縦置きされる4.0リッターV12エンジンがフィーチャーされている。

そしてミッドに縦置き搭載されるエンジンも、LP500の4971cc仕様から3929ccのV型12気筒となり、それに伴って車名もLP500からLP400に変更された。最高出力は375PS。LP500の走行テストで大きな問題となった熱対策は、この搭載エンジンの変更や左右ラジエーターの取り付け位置変更を見直すことなどで解消された。

前後のサスペンションは、ダブルウイッシュボーン+コイルスプリングのデザインこそ変わらなかったものの、セッティングはややラグジュアリーな方向にリニューアルされた。ブレーキはフロントにガーリング製の4ピストンを、また標準装着タイヤもミシュラン製のXWXに変更されている。

150台販売した4年後に改良型LP400Sが登場

1978年に登場した改良版のLP400S。オーバーフェンダーの採用やルーフを30mm高くするなど安定性と実用性の向上が図られた。

最初のカウンタック、LP400はランボルギーニの記録するところによれば、1974年から1978年までに150台がデリバリーされたという。その後、1978年には改良型となるLP400Sが誕生した。このLP400Sではペリスコープミラーが廃止されたほか、オーバーフェンダーを採用し、シリーズ途中でルーフ高を30mm高めるなど、実用性を重視した改良が施された。

さらに大きな変更点はタイヤがピレリ製のP7に変更されたこと。サイズもフロントに205/50VR15、リヤ345/35VR15へと改められ、さらにフットワークの安心感は高まった。また、このLP400Sではリヤウイングもオプションで選択可能だった。LP400Sはトータルで237台が生産されたという。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ カウンタック LP400

発表:1973年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
総排気量:3929cc
圧縮比:10.5
最高出力:276kW(375PS)/8000rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1065kg
最高速度:315km/h

ランボルギーニ カウンタック LP400S

発表:1978年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
総排気量:3929cc
圧縮比:10.5
最高出力:260kW(353PS)/7500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1200kg
最高速度:285km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…