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Mercedes-Benz 500 GE V8
高級オフローダーの先駆けとなった500 GE
1979年、メルセデス・ベンツは、オーストリアの「シュタイア・プフ(Steyr Puch GmbH)」社と共同開発した軍用車両をベースに、民間用オフローダーを市場投入する。これが、現在のGクラスへと続く、堅牢なオフローダーが誕生した瞬間だった。
1993年に登場した500 GE V8は、自家用高級オフロードモデルの先駆けとして、トレンド切り開くことになった。現在のGクラスは、ベースモデルからAMG仕様に至るまで、パワフルなエンジンを搭載することが定着しており、500 GE V8によってGクラスは高級オフローダーとしての地位を確立したと言えるだろう。
500 GE V8は、2023年からドイツにおいて歴史的文化財に指定。車両コンディションなど様々な条件をクリアし、ヒストリックカー認証に合格すると、特別な「H(Historisch)」ナンバーを取得できるようになった。
最高出力243PSを発揮する5.0リッターV8を搭載
500 GE V8のボディタイプはロングホイールベース仕様のみ。心臓部には、AMGの協力を得て開発された、最高出力243PS(177kW)、最大トルク375Nmを発揮する5.0リッターV型8気筒「M117」SOHCガソリンエンジンが搭載されている。最高速度は180km/h、0-100km/h加速は11.4秒という、当時のオフローダーとしては驚異的な性能を実現した。
このレベルの走行性能に対応するため、ブレーキシステムはABSと、フロントにベンチレーション・ディスクを採用された。フルタイム4WDシステムは、フロントのディファレンシャルロック機構が取り外されているものの、ベースのW 463型からキャリーオーバー。開発陣は、未舗装路での走破性能を損なうことなく、舗装路での快適性を向上させたサスペンションセッティングを施している。
446台という限られた生産となった理由のひとつは、搭載された「M117」エンジンにある。この時点で、メルセデス・ベンツのラインアップは4バルブ仕様の「M119」エンジンに置き換えられていた。しかし、M119はそのサイズから、Gクラスのエンジンルームに収まらなかったうえ、M117の大量生産にも対応できなかったのである。
シックに仕上げられた贅沢なインテリア
インテリアは、多くの専用装備を贅沢に採用。シート、バックレスト・クッション、シートサラウンド、ドアパネルはミディアムグレーのトリミングをチョイスし、コントラストを効かせたブラックレザー・インテリアが組み合わせられた。センターコンソール、ハンドブレーキレバー、2基のトランスミッションセレクターレバー、ドア・トリムエレメントには、贅沢なウォルナット・ベニアが奢られている。
オートマチック・トランスミッション、エアコン、クルーズコントロール、スライディングサンルーフ、レザーステアリング、シートヒーターを標準装備として搭載。当時の価格は17万8250マルクで、直列6気筒エンジンを搭載したG 320が8万8500マルクだったことを考えると、非常に高価な1台だったことが分かるだろう。