THE WORLD OF BENTLEY Vol.06

100年先へ。ベントレーの持続するラグジュアリー 【ベントレー特集:06】

創業してから100年以上に渡り、「良いクルマ、速いクルマ、クラス最高のクルマ」という創始者の哲学のもと、世界最高、最良のクルマ造りを続けてきたベントレー。彼らは今、次なる100年に向けて、新しい時代に相応しいラグジュアリー・モビリティの世界を創造しようと、挑戦を続けている。

Beyond100 & SDGs

持続するラグジュアリー

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エンド・トゥ・エンドのカーボンニュートラル達成を目指す、次なる100年に向けた事業戦略“Beyond100”。2025年にはベントレー初のフルEVモデルがリリースされ、真の意味での“サイレントスポーツカー”が実現する予定だ。

さる6月27日に行われた、世界で最も過酷で由緒あるヒルクライム・レース、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムで、1台のベントレー コンチネンタルGT3が、総合4位、タイムアタック1クラス2位でゴールし、大注目を浴びた。

というのも、このマシンに搭載されていた4.0リッターV8ツインターボエンジンには、ガソリンに比べ85%の温室効果ガスを削減したバイオ燃料由来のガソリンが使われていたからだ。しかもゴールまで残り僅かというところまで2位に12秒の差をつけて快走。最終的にトラブルを起こしてペースダウンしたにも関わらず、フルEVをはじめとする、すべてのエコカー・エントラントよりも速かったのである!

ベントレーの事業戦略“Beyond100”とは

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クルー工場とウィンスフォードの保管倉庫との間で毎日部品を移動させている10台の重量物運搬車両、警備車両や配送バンに、廃植物油を水素化処理したグリーンD+と呼ばれる代替燃料を使用。ロジスティクスの面の環境改善も行っている。

実はこれも2020年11月にエイドリアン・ホールマークCEOが掲げた次なる100年に向けた事業戦略“Beyond100”の一環である。

Beyond100では、エンド・トゥ・エンドのカーボンニュートラル達成を目指し、2026年までにすべてのラインナップをハイブリッドとバッテリー電気自動車(BEV)に切り替え、2030年までに全ラインナップをBEVに統一することを目標に掲げているが、それと並行して既存のガソリンエンジン車を無駄にすることなく、将来的に乗り続けられるよう再生可能燃料の開発も進められているのだ。

2015年の国連サミットで採択されてから、SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を聞く機会が多くなったが、ベントレーは1990年代からクルー本社工場のエネルギー効率向上と、CO2排出削減への取り組みを開始。1999年にはイギリスの自動車メーカーとして初めて環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO14001、さらに2011年にはISO50001を取得してきた実績と歴史を持っている。

100%グリーンエネルギーで稼働

その後2013年から始まった工場屋根のソーラーパネル化は、敷地内の駐車場などへ拡大。2020年時点でイギリス国内では最大級の3万815枚が設置され、一般家庭1750軒分に当たる7.7MWを発電し、認証済み電力の購入と併せて100%をグリーンエネルギーで賄うことが可能となった。

これにより2020年のクルー工場のCO2排出量は1台あたり29kgと、2010年に比べて99.5%も削減。さらにペイントショップで使用する水のリサイクルシステムや雨水貯留システムの活用で、自動車の製造過程における水使用量も、1台当たり9.31立方メートル(約12立方メートルの削減は、バスタブ約150杯分に相当する!)と、10年間で55.9%の削減に成功した。そのほか循環型経済的アプローチを反映したリサイクルプロセスの改善により、リサイクルできず埋め立てられる廃棄物の量を10年間で99.1%減少させている。

そうした長年の地道な努力と成果が評価され、2019年には、イギリスの高級自動車メーカーとして初めて、カーボントラスト社からPAS2060カーボンニュートラル認証が送られている。

多方面にわたる環境保全活動を展開

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クルー工場の壁に作られたリビングウォール。これは1年間で約40kgの酸素を生産するだけでなく、熱を吸収し、VOC(揮発性有機化合物)からの有害物質やほこりをろ過するなどの効果が期待できるという。

また社内の構造改革、財務面の強さの維持、チェシャー州の大学などとの協力による人材の育成、管理職のダイバーシティを2025年までに引き上げるなど、プロダクトや工場設備以外の部分においても、数多くの改革、改善を断行している点も見逃せない。

そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、1940年代からベントレーの拠点となっているクルー本社周辺地域の環境保全活動だ。

ベントレーでは創立100周年の際に本社敷地とチェシャー州に100本の苗木を植樹したほか、本社工場の50m四方の壁に生物多様性を高めるために地元の2600種類以上の植物を植えた“リビンググリーンウォール”を設置。さらに工場敷地内で30万匹ものミツバチを飼育する、“フライング・ビー”と呼ばれる養蜂活動も行っている。

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減少傾向にある英国のミツバチを支援する“フライング・ビー”。ファクトリー敷地内で約30万匹のミツバチを飼育し、環境変化に敏感なミツバチからデータを採るとともに蜂蜜も収穫している。

今から100年前、創業者ウォルター・オーウェン・ベントレーは「良いクルマ、速いクルマ、クラス最高のクルマ」を求めて、多くのイノベーションをもたらしてきた。

その意思を受け継いだ現代のベントレーは、次なる100年を目指して、持続可能なラグジュアリー・モビリティのグローバルリーダーになるべく、こうしたSDGsへの活動にも積極的に挑戦を続けているのである。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 10月号(特別付録 小冊子「THE WORLD OF BENTLEY」より)

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藤原よしお

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