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smart Concept #1
「スマート・オートモビル」としてスマートの第二章が本格的にスタート
シティコミューターに割り切ったコンパクトボディで独自の立ち位置を築き上げたスマートは、2019年に内燃機関と決別して電気自動車(BEV)のブランドへ。同年にはメルセデス・ベンツAGと吉利汽車(ジーリー)グループとの合弁会社によるスマート・オートモビルが設立され、BEVのみで展開するプレミアムブランドとして歩み始めることになった。
新生スマートの第一弾として姿を現したのがスマート コンセプト#1だった。過去のスマートは用途を割り切ったマイクロコンパクトボディがウリだったが、コンセプト#1は全長4290×全幅1910×全高1698mmというスリーサイズを持つ。一般的にはコンパクトSUVの範疇に入るが、歴代に比べると画期的な“小ささ”はない。
SUVスタイルと広く大きくなった車格を採用
まだコンセプトカーの段階であり、正式な仕様はまだ公開されていない。それでもエクステリアで表現される、大きなパノラミックガラスルーフや、観音開きドア、その中にある4座独立シートが目を惹く。先述したボディサイズの中で21インチもの大径ホイールをボディの四隅に置き、2750mmものホイールベースを実現したことで、車室空間は相当に広そうだ。コンセプト#1はメルセデスEQブランドにあるEQAのサイズ感に近いが、EQAは内燃機関のGLAをベースにしているのに対して、こちらはBEV専用設計である。
こうした高効率パッケージの中に、灯火類を含む照明類をサウンドに合わせて光の演出に使うようなギミックが盛り込まれる。インテリアには12.8インチのタッチ式ディスプレイが備わり、AIアバターのサポートを受けられるほか、最新の運転支援システムも網羅される。これらはOTAでのソフトウェアアップデート機能により、全ECUの75%以上が継続的にリモートアップデートされるという。
プロダクトには吉利汽車が参画
同時にスマートフォン用のアプリも新開発される。デジタルキーとして機能するだけでなく、クルマと接続することであらゆる機能やサービスをシームレスにつなげるもの。メルセデス・ベンツがCASEと掲げた中長期戦略が、スマートでも着々と実行に移されていることを実感する。
そして興味深いのが吉利汽車(ジーリー)の存在だ。グループでは独自に新興EVメーカー「ジーカー」を立ち上げ、世界のプレミアムEV市場でトップ3に入るという目標を掲げている。それを受けて2021年8月27日には総額5億ドルに及ぶ資金調達契約を結み、しかもリード投資家はインテル・キャピタルである。2021年10月から納車を開始する第1号モデルにインテル子会社であるモービルアイ製の自動運転向けSoC「EyeQ5」及び視覚情報処理ソリューションを搭載すると明かした。
スマートとメルセデスEQ、ふたつのEVブランドが生むシナジーに期待
インテルをバックボーンとして技術的革新を続けるジーカー及び吉利汽車(ジーリー)グループと、1世紀以上の歴史を持ち今もなお世界最先端を突っ走るメルセデス・ベンツがタッグを組んだスマート・オートモビルは、決してニッチな位置付けに止まらず、大化けする可能性を秘めている。
なお、コンセプト#1はジーリー側が開発の技術管理を担当し、メルセデス・ベンツは設計とデザインを担当するという。だからこそステアリングやタッチ式ディスプレイ、そしてリヤスタイルなどはどことなくメルセデスの雰囲気を感じさせる。メルセデスには「メルセデスEQ」という確固たるEVブランドがあり、矢継ぎ早に車種拡大を図っている最中だ。今後、新生スマートとEQとが、いかに共存共栄を図るのかにも注目したい。
TEXT/中三川大地(Daichi NAKAMIGAWA)