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Valkyrie Racing Porsche 356A Antarctic Mission
ヴァルキリー・ギブスが目指す7大陸制覇
アメリカ・デンバー在住のレネー・ブリンカーホフが進めるチャリティープログラム「ヴァルキリー・ギブス(Valkyrie Gives)」は児童人身売買と闘うためのチャリティ活動で、彼女はポルシェ 356 Aによる6つの大陸横断イベントを通じて啓蒙活動を行っている。
これまで、2017年にメキシコの「カレラ・パナメリカーナ(La Carrera Panamericana)」、2018年はオーストラリアの「タルガ・タスマニア(Targa Tasmania)」と、標高1万5000フィートのアンデス山脈を臨む「カミノス・デル・インカ(Caminos Del Inca)」に参戦した。
2019年はアジアからヨーロッパへと9300マイル、36日をかけてユーラシア大陸を横断する「北京~パリラリー」に挑戦。この年は「イーストアフリカン・サファリ・クラシックラリー(East African Safari Classic Rally)」も走破した。そして、設立以来20万ドル近くの寄付を集めてきたヴァルキリーズ・ギブスの活動のフィナーレとして、「プロジェクト 356 ワールドラリー・ツアー」は7番目の大陸である南極へと向かう。
雪上走行のスペシャリストによる356の改造
これまで多くの冒険をくぐり抜けてきたブリンカーホフだが、南極で待つ極寒の環境を克服するためには特別な準備と心構えが必要となる。マシンのプレパレーションを担当してきた英国のタットヒル・ポルシェ(Tuthill Porsche)に加えて、極地探検家であり3度の極地走行世界記録を打ち立てた経験を持つキエロン・ブラッドリーがチームに加入。この特別なプロジェクトのために、エンジニアリング面で完璧なサポートを行った。
ブラッドリーは、クラシカルな「ポルシェ 356 A」をベースに、スキースキッドとキャタピラを含むトラックユニットを装着。このスキー&キャラピラシステムを使用した場合、平方インチあたりの質量(フットプリント)は、標準的なタイヤの4%以下に抑えることができる。また、雪上や氷上、クレバスなどで能力を発揮する専用のサスペンションシステムも開発。雪上走行における最適なトラクションを確保すべく、重量バランスも変更された。
「レニーとポルシェ 356 Aの成功は、追加された適切な技術と重量バランスの変更によってもたらされるはずです。我々が開発したスキーは、後輪に装着したトラックユニットが確実にトラクションを確保するために、雪を圧縮する機能を持たせています」と、ブラッドリーは自信をのぞかせる。
南極の真夏2021年12月にスタート予定
車両だけでなく、チームスタッフの拡充も進められており、ナビゲーターには極地探検の世界記録保持者であり、北極点・南極点を含む50回以上の極地探査経験を持つジェイソン・デ・カータレット(Jason de Carteret)の起用が決まった。デ・カータレットとブラッドリーは、トムソン・ロイター製ポーラビークルを使用して、南極への最速陸路移動におけるふたつの世界記録を達成した経験を持っている。
ブリンカーホフ最後の冒険は、南極では夏にあたる2021年12月からのスタートを予定。現在、356 Aとサポート車両を含めた機材は、船舶で南極へと向かっている。